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2023年11月15日

本の外側の箱は、その道では「函」というらしいが

「何とか全集」とか辞書などの類いの本には、外側の箱が付いていることが多い。しかし外国ではどんな豪華本でもこんな箱の付いているのは見たことがないので、どういうことなんだろうと急に気になってググってしまった。

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ブックカバー(表紙に付けるカバー)が日本独特のものとは知っていた(参照)が、もしかしたらこの箱もそうなのかもしれない。ちなみにこれを正式に何と称するかについては、Yahoo! 知恵袋にも以下のように諸説あって(参照)、決定版とも言うべき正式名称ってないみたいなのだ。

  • 「函(はこ)」または「ケース」といいます。
  • 業界用語で「貼函」、一般用語では「外箱」「ブックケース」というそうです。「貼函」という語は、箱の中(本体)を段ボール紙で作り、上から装丁用の紙を貼るので、そのように呼ばれるとのことです。
  • ”外装箱”といいます。略して”外箱”ってよんでます。

どうやら一般的には「外箱」で漢字表記も「箱」でいいようだが、その道に深入りすると「函」という表記になるようなのだ。そして上の 2番目に登場する「貼函」というのは、片側の狭い口から入れるいわゆるフツーの「外箱」じゃなくて、こんなような豪華本用の蓋付きの箱を指すようだ。

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さらに問題は「ケース」とか「ブックケース」とかいうカタカナ名前だが、これらはまともな英語とは到底思われず、"bookcase" で画像検索すると、以下のようにいわゆる「本棚」ばかりが出てくる。つまり英語で "bookcase" と言ったら、フツーはまず「本棚」が頭に浮かぶってことだね。

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じゃあ、この「外箱」のことをホントの英語ではなんというのか、辞書サイトの英辞郎で調べてみるとこんな結果になった(参照)。

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一番上の "forel" というのは「(本の)」というもっともらしい但し書きのせいで逆に不安になり、"forel" で画像検索をかけたら、魚の画像ばっかり出てきた(参照)。そして Wictionary では ”forel" が次のように説明されている(参照)が、いわゆる「外箱」とは別物としか思われない。

A kind of parchment for book covers; a forrill. (一種のブックカバー用羊皮紙; forrill とも言う)

一番下の "slipcase" も、文字通り滑らせるように入れるケースってことで、別に本のケースに限らないだろう。要するに「眉唾」だ。

いろいろ調べてみたところ、「日本における書籍函の盛衰について」というかなり信頼の置けそうな研究レポートが出てきて、その冒頭近くに次のようにある。

明治初期(19世紀半ば)わが国に導入された洋式製本の技術は,それまで日本に定着していた文化と技術の伝統を活かし様々な冒本型の製本様式を作り上げるが,以下に述べる書籍用函もその一つの例である。

なるほど、やはりこれもまたブックカバー同様に、日本独特の様式なのだね。道理で、英語でどういうのかなんて調べてもまともな訳語が示されないわけだ。

ちなみに私の手持ちの紙の辞書は、「外箱」をすべて処分してしまってる。あんな邪魔くさい「ハコ」があるから、気軽に辞書を引く習慣がつかなくなるんじゃなかろうか。

 

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