”The fall of the patriarchy” (家父長制の秋)
国連広報センターの「秋です。家父長制を解体しよう。/今日は #女性に対する暴力撤廃の国際デー/女性に対する #暴力に言い訳なし #NoExcuse」(11月 25日付)という tweet が、イチャモン・コメントで妙にあふれかえっている(参照)。
今日はこの件に触れようと決めた時、私としては「ああ、偶然ながら 3日前に『日本人の英語力低下は、英語の歌をやらないからさ』という記事を書いといてよかった」と思ってしまった。というのは、"THE FALL OF THE PATRIARCHY" というコピーがなかなかイケてるからである。
”Fall” を掛詞みたいに使って、「家父長制の秋/崩落」という意味合いをもたせているので、ごくフツーに日本語に翻訳してしまっては興醒めだ。優秀な翻訳アプリも要らない。ここは英語のまま、ちょっと詩的な雰囲気の部分も含めて受け取るのがいいだろう。
ところがこのポストには、最初に書いた通りイチャモン・コメントがどっさり付いている。最もずっこけてしまうのは「秋と所謂『家父長制』の是非がどう関係しているのですか?国連とは???」なんていうもので、「だぁからぁ、そのくらいわかりなよ」って話だよね。
それから、「戦後日本では家父長制は廃止されているから、関係ない」みたいなコメントも目立つ。しかしここで言う "patriarchy" というのは成文化された法的制度としての「家父長制」も当然含むものの、それだけの狭い意味ではないと理解すべきである。
フェミニズム的な感覚での "patriarchy" という言葉は、「男性が女性や子どもを支配している広範な社会構造を表現する」ことが多い(参照)。これは UN Women(国連女性機関)が主導する運動なのだから、こうした意味合いが強いのは当然だ。
無意識的な部分まで含めた男性優位の社会通念を崩していこうということなのだと理解すれば、「ほかで言いなよ」みたいなコメントはできないはずなんだよね。
さらに「暴力は性別関係なくダメです」といった当たり前すぎるコメントにしても、これがポストされたのが「女性に対する暴力撤廃の国際デー 」という特別な日ということを考慮すれば、ちょっと無粋なものになってしまう。
「もっと言うべき国あるでしょう」とか 「それ、日本語でポストする意味ってあんの?」、「イスラム教の解体の事ですね!」、「グローバリズムの手先」といったコメントもかなり多い。日本は手が汚れてないというような安直な思い込みから発するのだろう。
これらのコメントは、実態を知らないからこそ言えることだ。実際にはまさしく「女性に対する暴力撤廃の国際デー」の日付で報道された ”駆け込み寺「人もお金も足りない」=性暴力相談右肩上がり、現場悲鳴” という時事通信の記事に飛んで見るだけで、日本でも問題山積なのだとわかる。
ちなみに ”The fall of the patriarchy” というフレーズだが、決して目新しいものじゃなく、UN Women は 2年以上前の 2021年 9月にも使っている(参照)。
最近ではいろいろなデザインで Tシャツにも使われているし、既に結構な広がりを獲得しているようなのだね(参照)。
Tシャツの胸の文字は、いずれも
"My Favorate Season is The Fall of Patriarchy"
やっぱりここは英語のまんま、世界的に重要な意味を持つフレーズとして理解しておこう。
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- メキシコのバンドがビザ差し止めで米公演キャンセル(2025.06.06)
- トランプは ”TACO”(タコじじい?)という一幕(2025.05.30)
- 「コメ買ったことない」なんてネタはヤバいよ、江藤さん(2025.05.20)
- 米国の「サマーキャンプ」というもの(2025.05.15)
- NHK から国民を守る党・立花孝志の「選挙ハック」(2025.05.11)
コメント