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2024年3月 6日

遠き幻の芸能、「散楽」を巡る冒険

ATOK で「さんがく」と入力して変換しても「山岳」だの「産学」だの「産額」だの「算学」だのとしか変換されないのでかなりムカついてしまい、「散楽」をしっかり単語登録した。「数学」ならぬ「算学」なんて言葉の方がずっとマイナーだと思うけどなあ。

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JAPAAAN のサイトに "雑技団?演舞?大河『光る君へ』で頻繁に登場する「散楽(さんがく)」いったい何なのか知っていますか?" という記事がある。へえ、今どきは大河ドラマに「散楽」が登場するのだね。たださすがに NHK だけあって、散楽師が上半身裸で登場するわけにはいかないようだ。

ちょっとググってみたところ、芸能考証担当の友吉鶴心氏による解説コラムが見つかった(参照)。この解説記事、かなりわかりやすいのでオススメしておく。

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ちなみに「散楽」は高校の日本史の教科書に載っていたように思って検索してみたところ、最近は音楽の教科書の方に移っているらしい。教育芸術社の「平成29年度 高等学校用教科書 音楽」の P76 に「伝統音楽の流れ」として「散楽」という言葉が登場している。

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(クリックすると、別画面で拡大表示される)

この図は全体的な流れを表すものとしては、「浄瑠璃」とか「長唄」の系譜が無視されている点を除けばかなりよくできているが、「散楽」そのものに関しては言葉がちょこっと登場するだけだから、授業を受ける生徒たちはチンプンカンプンだろう。

私は「演劇学」なんていう変わった学問を専攻して「文学修士」なんて役にも立たない学位を得ているので、「散楽」というのは言葉だけは馴染んでいる。「言葉だけ」というのは、「実際の散楽」なんて見たこともないからだ。つまり、今となっては幻の芸能なのである。

内容的には物真似、軽業、曲芸、奇術、幻術、人形まわし、踊りなど、広範囲の芸を含んでいて、それらの総称として「散楽」と言われていたもののようだ。それだけにそれぞれの芸が特化発展した結果として、総称としての「散楽」というのは消滅したと考えていいのだろう。

ちなみに「散楽」から続く「猿楽」というのは「能楽」に発展する元になった芸能で、この「猿楽」の時代に観阿弥・世阿弥という天才が出現して、今の「能・狂言」のうちの「能楽」につながった。今の能では宙返りみたいな軽業的要素はすっかりなくなっているが、どのあたりで消えてしまったんだろう。

ただ、世の中というのはなかなか大したものである。「散楽」という芸能を現代風に復活させている人たちがいるというのだからおもしろい。ずいぶんスマートな感覚になってはいるが、「散楽」の精神はしっかりと受け継いでいるように思われて、なかなか素敵じゃないか。

 

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