「今川焼き」の呼称の、アナーキーなまでのバラエティ
しんやさん という方の「俺の名前を言ってみろ」という画像付きの tweet に驚くほどのバラエティ溢れるコメントが付いている。おやき、今川焼き、回転焼き ・・・ その他いろいろ。十分にフォークロアのテーマになってしまいそうだ。
私の生まれた山形県庄内では「おやき」が主流だったが、大学入学で上京していろいろなバリエーションに接し、「おやき」はむしろマイナーっぽいと知った。今後どの名称を使用すべきかちょっと悩んだ結果、とりあえず「今川焼き」でいくことに決めた覚えがある。
このスレッドが立って 10時間後ぐらいに、長澤大生さんという方のヘビーなコメントが登場した。22種類もの(24個あるが「きんつば」が 3回出てくるので)名称を一人で挙げている(参照)。それにしてもよくご存知で、ずいぶんあちこちに転校、転勤しまくったんじゃなかろうか。
ところが実態はこんなものでは済まないらしい。関西方面では「御座候」というのがかなりメジャーなのだそうで、日本全国を旅しまくって全都道府県での一泊以上滞在の経験を誇る私も、そんなの初めて知った。まさに「蛇の道は蛇」(言うまでもないが「じゃのみちはへび」と読んでね)である。
ちなみに大阪ガスのサイトに「御座候?大判焼? 地域で違う「回転焼」の呼び名のナゾ」というページがあるのを発見した。大阪のガス屋さんというのはなかなかやるもので、冒頭に次のような解説がある。
回転焼は、どうやら江戸時代に江戸の今川橋付近にあった店が売り出した「今川焼」というお菓子がルーツなんだそう。その後、全国各地にこのお菓子が広まっていった際にたくさんの呼び名が生まれていったようです。
なんと、今川焼きの発祥は江戸時代なのだね。もうちょっと新しめのものなのかと思っていたので、認識を新たにした。さらに名称の傾向を示した下のような地図まで掲載されている。
これ、岸江信介・奈良大学教授の調査資料をもとに作成されたというから、決してテキトーなものじゃないはずだが、我が山形県は全国で唯一の「あじまん」主流圏ということになっている。庄内でメジャーな「おやき」が無視されてしまってるのはかなり残念だ。
実際、「あじまん」なんて言い方はこの歳になるまで知らなかったよ。同じ県内での呼称を知らなかったんだから、大阪での「御座候」を知らなかったのは無理もない。
この記事によれば、「御座候」の元祖は兵庫県姫路市にある「株式会社御座候」なのだそうで、昭和 25年にそれまでの回転焼きからの差別化を意図して名乗ったものだという。戦後の混乱期から高度成長期を経て、関西で広まったのだと思われる。
こうしてみると、今川焼きのさまざまな呼称は各地域の店が独自のネーミングをすることでバリエーションが限りなく拡大したとみればいいようだ。ぶっちゃけ、「言ったもん勝ち」である。
インターネット上の一部では「ベイクドモチョモチョ」との呼称に統一しようなんていう冗談まで出ているらしいが、ここまで来てしまったらこのアナーキーなまでのバラエティこそが「固有の財産」と考えるのが妥当だろう。こうしたケースでは混沌は混沌のまま放っておくのが一番だ。
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コメント
ん? ぎし焼き?
"義士焼き"のことか?!
↓
赤穂義士の太鼓に模した焼き印がある。
投稿: McC | 2024年3月19日 10:06
McC さん:
それって、今川焼きの播州赤穂版なんでしょうか?
いやはや、いろいろあるものですね。
投稿: tak | 2024年3月19日 17:14
当地には、「志゛まん焼き(じまんやき)」がございます。
「富士アイス」さんと言う、系列店だそうです。
まぁ好きな食べ物なのでたまには喰らいたいこともありますが、BBAの無愛想がウリなのかもしれませんけど、正直店頭に行きたくない。
そうだ。今日はOHIGANで、義父の好きだった「志゛まん焼き」を買ってお参りです…。
〽好きなんんだけどぉ〜。
投稿: 乙痴庵 | 2024年3月20日 10:26
乙痴庵 さん:
>当地には、「志゛まん焼き(じまんやき)」がございます。
そりゃまた、ユニークな !
>今日はOHIGANで、義父の好きだった「志゛まん焼き」を買ってお参りです…。
きっとお義父様があの世でお喜びでしょう。
それにしても、相当無愛想なバアサンなんですね ^^;)
>〽好きなんんだけどぉ〜。
これで西郷輝彦の『星のフラメンコ』が思い出されるまで、10秒以上かかってしまいました。もう半世紀以上前の歌ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=cs7EPJ8N0B4
投稿: tak | 2024年3月20日 11:23
20個以上挙げているのに、蜂楽饅頭がないなんて…
Σ(゜ロ゜;
投稿: ひろゆき王子 | 2024年4月12日 01:31
ひろゆき王子 さん:
そりゃまた、チョー・マイナーな呼称ですね。読み方は「ほうらくまんじゅう」でいいんでしょうか?
日本中くまなく調べたら、1冊の本になりそう。
投稿: tak | 2024年4月12日 07:35