ローマ字表記は「ヘボン式」が基本になるだろう
NHK が「ローマ字表記 70年ぶり改定も視野に 文化庁の審議会に検討諮問」というニュースを伝えている。内閣告示では今でも「訓令式」(「ち」を "ti" と表記する方)が基本となっているというのだが、実情としては「ヘボン式」("chi" と表記する方)が主流だからね。
実際、「し」と「ち」を訓令式で "si"、"ti" なんて表記したら、「スィ」「ティ」と読んでしまう。私の「庄内」だって "Shonai" と表記すればこそ曲がりなりにも「しょーない」と読んでもらえるのであって、"Syonai" だったら「すょーない」なんて、日本語にない音になってしまう。
駅名表示にしても完全にヘボン式が主流で、例えば「新宿」は "Shinjuku"、「神保町」は "Jimbocho" だ。"Sinzyuku"とか ”Zinbotyo” とか表記されたら、私だって戸惑ってしまい、にわかにはまともに読めない。
おそらく今後はヘボン式が基本になるのだろうが、ニュースの最後の部分を読んで少々驚いた。こんな風に書かれているのである。
2023 の文化庁の世論調査では「訓令式」と「ヘボン式」のどちらが学びやすいか尋ねたところ音によって意見が分かれていて、文化庁は今年度、詳細な調査を行うことにしています。
おいおい、問題は「どちらが学びやすいか」ではなく、「どちらが自然に読みやすいか」だろうよ。「何を今さら妙な調査を」と言いたくなってしまう。
ちなみに「ヘボン式」というのは米国長老派教会の医療伝道宣教師、医師のジェームス・カーティス・ヘボンによって作られたものだ。前にも書いたことがある(参照)が、「ヘボン」のスペルは "Hepburn"であり、オードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn)と同じ苗字である。
オードリーの場合は、"Hepburn" をローマ字まがいの読み方されちゃったわけだね。「ヘップバーンとは 私のことかと オードリー言い」なんて字余り狂句ができてしまう。
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コメント
ワタクシは教育現場でのローマ字についてひとこと。
小学校での訓令式は意味があると思っています。ローマ字の学習は小学3~4年生、そもそもここで初めて「アルファベットというもの」に触れる子も多いです。訓令式は50音表にあてはめたときに規則性が単純で覚えやすいのです。ヘボン式は訓令式から「表記の例外」が15個ほどあり、習得に時間がかかります。
そして習熟していないと、ちょうど習った直後あたりから始まるPC教育に影響が出てしまいます。キーボードが打てないのです。
ちなみにヘボン式は5~6年生で習います。英語フォニックスの意味もありますね。
というわけで、教育現場でまず始めは訓令式、というのは残るかなと思っています。
投稿: らむね | 2024年5月16日 11:13
らむね さん:
なるほど。
そういえばキーボードの「し、ち、つ」だけは、私も訓令式で打ちますね。2パンチで済んで楽ですので。
投稿: tak | 2024年5月16日 16:09