ベイルアウトした Grant さんという方の「弊社で開催された救急救命講習においてAEDの代わりに要求されたもの一覧」という tweet(参照) には笑わせてもらった。AED の代わりに ATM とか FBI が出てくるなんてファンタスティックですらあるが、「全員大真面目」だったという。
問題の "AED" に関しては公共施設などでたまに見かけるが、病気関係にまったく疎い私は正直言って、「消火器じゃなさそうだし、一体何だろう?」ぐらいにしか思っていなかった。こうした 3文字略語がまともに定着しないのは、元の言葉(英語のことが多い)がまったく意識されないからじゃなかろうか。
例えば "AED" でググって一番上に表示される「日本光電の AED 情報サイト AED ライフ」の「AED って?」というページには、次のようにある。
AED(自動体外式除細動器)とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器です。
翻訳語の「自動体外式除細動器」という言葉は出てくるが、元の英語は文末まで辿っても全然出てこない。「自動」とあるので最初の "A" は "automatic" か "automated" だろうと容易に推量され、"E" は "external" かもと思うが、"D" はちょっと難度が高い。
2番目に表示されたオムロンのページでは、さすがに "Automated External Defibrillator" の略語であることが冒頭に表示されている(参照)。 私なんかこれだけで日本光電よりオムロンの方を信用したくなってしまったよ。
"Defibrillator" というのは結構難しい専門用語で、英語で表示してもどうせ通じないと言われそうだが、そんなこと言ったら「除細動器」だって同じぐらいわからない。日本語表示さえすればいいってわけじゃないのは、これを見ただけでわかる。
言葉としての「AED = 自動体外式除細動器」と "Automated External Defibrillator" とのリンクが軽視、あるいは無視されているのは、かなり問題だ。きちんと表示すれば、少なくとも "AED" と "FBI" の区別が付かなくなってしまうなんてみっともないケースは減るだろうと思うのだが。
かなり前のことだが、"SDGs" (3文字+小文字だが)をテーマにした勉強会に出席したところ、登場した講師が冒頭一番「"SDGs" の "S" は『サステナブル』の頭文字で、つまり"SDGs" は『持続可能』ということです」と説明するのだった。
せっかく "S" の意味を説明したのだから、続く "DGs" ("Development Goals" で、続けて「持続可能な開発目標」ね。念のため)も説明してくれればよかったのだが、そこは素通りされてしまった。多分、自分でもピンときてなかったんじゃなかろうか。
こんなわけで、この国ではアルファベット 3文字のわけのわからない略語があふれかえっている割には、漢字の訳語を丸覚えすることを強いられるだけということが圧倒的に多い。元の言葉を表示してくれさえすれば、それとのリンクで少しは覚えやすくなるのにね。
ちなみに、冒頭の tweet に出てきた 3文字略語の元の形は以下の通り。
ATM: Automatic Teller Machine
ADO: Ado (略語ですらないみたい)
AGF: Ajinomoto General Foods
DEF:Drug Enforcement Administration
FBI: Federal Bureau of Investigation
IED: Improvised Explosive Device
OCN: Open Computer Network
OEM: Original Equipment Manufacturer
日本で一番普及した 3文字略語は文句なしに "NHK" だろうが、これは「日本放送協会(Nihon Hoso Kyokai)」の略だというのだから、ある意味スゴい。さらに「松竹歌劇団」を "Shochiku Kageki Dan" ("Dan" って何だ?)の 3つに分けて "SKD" にしたというのは「過激」とも言える手法だ。
こうした日本語ローマ字の略称となると、外国人には案外馴染みにくいだろうね。
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