茨城の「いばらき/いばらぎ」より根源的な問題
茨城県というのは、正式には「いばらぎけん」ではなく「いばらきけん」(「き」が濁音ではない)なのだが、私自身 40年前に東京都から茨城県に越して来てからもしばらくは「いばらぎけん」だと思っていた。
これに関して、Al lAbout ニュースの "茨城の読み方は「いばらぎ」「いばらき」どっち? 正しい読み方を解説" という記事に次のようにある。
茨城県の公式Webサイトを開くと、トップ画面の左上に県章と「茨城県」の文字がありますが、その下には「Ibaraki Prefectural Government」と表記されています。「Ibaragi」ではありません。
というわけで「いばらき」が正解のようなのだが、多くの人が「いばらぎ」だと思っている理由を次のように述べている。
(茨城方言の特徴は)カ行やタ行の音が濁音になる(有声化する)ことである。たとえば、「赤」アガ 「柿」カギ (中略)
「茨城」という地名も、地元の人間は「いばらき」といっているつもりなのだが、(中略)よその土地の人には「いばらぎ」といっているように聞こえる。
というわけで、他ならぬ茨城県民自身が「いばらぎ」と発音してしまっているのだから、こればかりはどうしようもない。
とはいえ私の生まれた山形県では、県民の多くが「やまがだ」と発音しつつも本来は「やまがた」なのだとちゃんと認識している。それは「あぎだ」と発音しがちな隣の秋田県民も同様だ。
その点、茨城県民は発音の訛りに関する自覚があまり明確じゃないのだね。しかし茨城県民でなくても「いばらき」より「いばらぎ」の方がずっと自然に発音しやすいのだから、そのうち「秋葉原」が「あきばはら」から「あきはばら」に変化したようなことにならないとも限らない。
ちなみに私はこれまで、「いばらき/いばらぎ」問題よりずっと大きな疑問をもっていた。それは「い」と「え」の発音が逆転しやすく、「色鉛筆」をフツーに「エロインピツ」と言っちゃう茨城県民が、自らの県名に関してはどうして「えばらぎ」と言わないのかということだった。
ところがものは調べてみるものである。このほど「日本語どうでしょう?」というサイトの "「茨城」──イバラギではありません!" というページを読んで、この疑問は一気に解けた。「茨城」という地名は、古来「うばらき」と読まれてきたというのである。
実際に万葉の昔には、「茨」は「うばら」(あるいは「うまら」)と読まれていたという(参照)。なるほど、それなら「茨城」は本来「うばらき」だから、「えばらぎ」には変化しようがない。
そういえば 21世紀となった今の世でも、茨城の古老の発音を注意深く聞くと、確かに「うばらぎ」に近く、「い/え」とは別のメカニズムなのだとわかる。英語の曖昧母音([ə] )を想起させるビミョーな発音だ。
こういうことって、先祖代々しっかりとカラダに染みついて伝わるのだね。
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コメント
大阪出身のタレントさんが、「いばらきし(茨木市)」はちゃんと言えているのに、「いばらぎけん(いばらぎけん)」はフツーに言ってますし…。
アタクシの遠い記憶。
地理の時間に先生が「いばらぎけん」って言ってた気がします…。
学生になってから、大阪府には茨木市があることを知ったし、茨城県が「いばらきけん」であることを認識して、その後は不便なく使いますが、耳に入るときは…。
(いばら🥀危険⚠️?)
投稿: 乙痴庵 | 2024年9月14日 06:05
乙痴庵 さん:
「いばらぎけん」は根強いですよね (^o^)
そう言えば、住所をローマ字で書くときも、つい ”Ibaragi” と書いてしまいます。
投稿: tak | 2024年9月14日 06:30