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2024年9月14日

「ヴィレッジヴァンガード」という店の失敗とは?

東洋経済 ONLINE で "大量閉店「ヴィレヴァン」経営が犯した最大の失敗" というタイトルを見て、まず最初に浮かんだのは「ヴィレヴァンって何だ?」という疑問である。これ、モロに初耳だったもので。

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記事の冒頭を読んで「ヴィレッジヴァンガード」の略だとわかったものの、それでもまず思い浮かんだのは、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにある "Village Vangurard" の方である。直接訪問したことはないが、このジャズ・クラブでのライブ録音はずいぶん聞いている。

記事の写真をまじまじと見てようやく、「そういえば、イオン・モールつくばのユニクロの向かいに、こんなような見かけのショップがあったな」と思い当たった。記事には「遊べる本屋」とあって、どうやらサブカルっぽさが売り物らしい。

店に入ったことは一度もないが、外から見た印象ではわけのわからない小物が雑多に積み重なっているばかりで、「本屋」っぽい雰囲気はまったくない。率直に言って、自分の欲しいものが手に入りそうな気はまったくしないし、客が入っているのを見たこともない。

記事によれば、この「ヴィレヴァン」とやらの 2024年 5月期の決算は、売上高が約 247.9億円で前期比約 2%の減少。営業利益は 9.15億円の赤字(最終赤字は 11.4億円)となっている。店舗数で見ても一時は全国で 400店舗を展開していたが、現在は 300店舗を割り込みそうな状況だという。

記事には、「ヴィレッジヴァンガード全店巡る人(ヴィレ全)さん」という方(その筋では有名人なのかなあ)が、この不調の原因を次のように語っていたとある。

  1. ショッピングモールなどへの出店を進めたことによって、「ヴィレヴァンらしさ」が普通のものになってしまった
  2. 人材教育が十分にされなかったことで、ヴィレヴァンを支える店員にサブカルの知識が薄く、普通の売り場しか作れなくなってしまった

というわけで、ヴィレ全さんみたいな濃い顧客には、現在の店舗が薄味になってしまっていることが不調の原因と映るのだろう。しかし、あの店作りを一目見て、「普通の売り場」とは到底感じられない私のような者には、原因は別のところにあるとしか思えない。

それは単純な話で、要するに「オーバーストア」だったんだろうということだ。アヤシい和製英語だが、要するに「店舗数過剰」ということである。

サブカルチャーのマーケットは元来それほど大きなものじゃない。限定的な市場に向け、調子に乗って大量出店し過ぎれば、限界にぶち当たるのも当然である。

そんな状況でヴィレ全さんの言うようにマニア向けの「濃い味」を徹底しちゃったりなんかしたら、ますます「過剰」になってしまうというのはマーケティングの常識だ。というわけで「ヴィレヴァン」も店舗数を適正規模に絞り込めば、まともな経営を継続できるだろう。それなら余計な人材教育も要らないし。

要するにそれだけの話なんだと思う。とくにフツーのショッピングモールでのヴィレヴァンって完全に場違いだから、さっさと撤退した方がいい。

 

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マーケティング・仕事」カテゴリの記事

コメント

愛知県発祥の店舗だそうです。
学生時代には、現在閉店しちゃったお店にそこそこお邪魔してました。
平地に、スノードーム型の店舗なのに、外から階段上がって2階の入口?そこから階段降りて店内って状態の、来るものを選ぶ店舗でした。
店内360度の壁に書籍が並び、平地の島式展示には「(学生には手の出ない)ジッポーライター」とか「(アタシャいらないデザインの)オサレな時計」とか「鳥の目マッチ」とか「手で握った形の水筒」など、正直いるかいらないか?ではなくて、「こんな物もあるんだぁ!」って、博物館の様相でした。

おそらくご覧になった記事にもあったと思いますが、そりゃもう「この分野はオレに(アタシに)まかせろ!」店員さんしかいませんでしたが、現在にショッピングモールのお店など顕著で、もう「バイト然の店員さん」しか見かけません。

売りの「商品紹介ポップ」も、(アタクシがオッサンになったからなのか)斜め上どころか新しい視点を教えてくださる「刺さる!」文言も見なくなりました。

長々と申し訳ありません。

投稿: 乙痴庵 | 2024年9月14日 18:39

乙痴庵 さん:

ほほう、発祥の意気盛んだった頃はなかなか面白い店だったんですね。

やっぱり少数精鋭的な展開をすべきお店のようですね。

投稿: tak | 2024年9月14日 20:24

東京だと下北沢かな。

20年くらい前だったか、高円寺に出店したときは「おお、ヴィレヴァンが…」と思いつつ、何か違うなという印象でした(まだ健在だと思いますが)。まともな人(?)から見れば下北沢も高円寺も似たような街かもしれませんが(笑)、サブカルと一口に言っても、街ごとに相性があるような気がします。ご指摘の通り全体的な市場規模もさほど大きくないのだから、要はチェーン展開には向かないってことですよね。

投稿: 山辺響 | 2024年9月15日 08:06

山辺響 さん:

>サブカルと一口に言っても、街ごとに相性があるような気がします。

まったく同感です。

>ご指摘の通り全体的な市場規模もさほど大きくないのだから、要はチェーン展開には向かないってことですよね。

店舗数を 50〜60ぐらいに絞り込めば、思いっきりイメージ通りの展開ができるのかもしれませんね。

投稿: tak | 2024年9月15日 12:34

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