『火垂るの墓』は二重の意味で「B面ヒット」
スタジオジブリの『火垂るの墓』が世界 190カ国以上で独占配信され、大きな話題になっているらしい(参照)。元々は 36年も前の 1988年に『となりのトトロ』と同時上映されたものというのだから、ちょっとした「狂い咲き」である。
この関連かどうかはわからないが、SAWASAKI Fuyuhi さんが Bluesky で次のような書き込みをしておいでだ(参照)。
「アメリカひじき」という言葉が SAWASAKI さんにとって初見で、Wikipedia で調べてやっとわかったというのは意外だったが、上の画像に挿入しておいたように野坂昭如の小説であり、『アメリカひじき』と『火垂るの墓』のセットで昭和 42年下半期の直木賞を受賞している。
この文庫本、私も持っていたのだが誰かに貸したまま「借りパク」されてしまい、手元にない。誰に貸したか覚えていないので、もう取り戻しようもないが、Amazon で調べると中古で 3,000円以上の値がついているようだ。本と楽器は借りパクが多くて、昔誰かに貸したバンジョーも戻ってきていない。
話を元に戻すが、文庫本の表紙を見る限り、『アメリカひじき』の方が先に来ていて、『火垂るの墓』は昔のレコード感覚で言えば B面扱いだったようなのだ。当時の記憶を辿っても、『アメリカひじき』の方が話題になっていたような気がする。
終戦直後に米軍捕虜の補給物資をくすねた中にあったブラックティー(紅茶の葉)を「アメリカのひじき」と思い込んで煮て食ってしまったというエピソードがムチャクチャ印象的で、高校生の話のタネにもなっていた。
ちなみに、音楽の方でも B面の方がヒットしてしまうという例がたまにあって、有名なところでは松田聖子の "Sweet Memories" が挙げられるが、『スーダラ節』もそうだったというのは、あまり知られていない。
今回のアニメ版『火垂るの墓』のヒットは、二重の意味で B面ヒットと言える。原作が文庫本で『アメリカひじき』の B面扱いだっただけでなく、アニメ上映でも、『となりのトトロ』の B面扱いだったのだから。
もとより本当に優れた作品には、 A面も B面もないのかもしれないね。
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コメント
最近ラジオで聞いたのですが、ガロの学生街の喫茶店という曲も、B面だったところを吉田拓郎が「こっちの方が良いだろう」と言ったことでA面に変わったとか。坂崎幸之助談。
投稿: ばんび | 2024年9月20日 12:20
ばんび さん:
どうやらそのようですね。
投稿: tak | 2024年9月20日 16:45
CCR の 光ある限りも国内ではA面 https://www.youtube.com/watch?v=_lhEqY9g_6g
ですが 元は Lookin' out my back door が A面だったとか、(洋盤の画像は見付けられませんでした)
投稿: Sam.Y | 2024年9月20日 21:52
Sam.Y さん:
ほほう、それは知りませんでした。
投稿: tak | 2024年9月20日 22:03