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2024年11月17日

「特茶」の広告、コピーとグラフが矛盾してるよね

先日仕事で湘南方面に行くために、久し振りで JR 電車に乗った。運良く座席に座ることができたのだが、近くの壁面に貼ってある広告のコピーとグラフがまったく噛み合わない。あまり気になるので、写真に撮って下車したほどで、それが下の画像である。

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改めて調べてみると、これはサントリー「特茶」の広告と確認できた。私が知ったのは数日前だが、実はずいぶん前からある広告なのだね。近頃は電車に乗ることが少なくなったので、まったく気付いていなかった。

この広告は、これを飲むことで「8週目から、体脂肪軽減が認められました」というコピーなのだが、これがまったく腑に落ちない。というのは、添えられたグラフを見ると、8週目に入るまでは確かに目に見えて減っているものの、それ以後(つまり「8週目から」)はむしろ横ばいに近いからだ。

念のために、ウェブ上にあったグラフ(参照)を転載しておく(クリックでより拡大された画像が表示される)。

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8週目から、体脂肪軽減が認められました」という文言だと、言外に「8週目に入るまでは、体脂肪軽減が認められません」と言っているとになる。しかるにグラフでは 8週目に入る時点まで明らかに体脂肪が減っているのだから、「7週目までに、体脂肪軽減が認められました」と言うべきだろう。

この方が効き目が早く表れると訴求できるのだから、むしろサントリーにとってメリットのある表現のはずだ。ところが「特茶」関連のサントリーと広告代理店の担当者はどういう酔狂か知らないが、効き目が表れるまで 8週間も待たなければならないという「不利な表現」にしてしまっている。

から」と「まで」では意味が反対なのである。そもそも 8週目から突然効き出すなんていうのはおかしな話だし。

ちなみに、このグラフに基づいてより正確に言うならば「7週目までは体脂肪がある程度減りますが、8週目からは減り方があまり目立たなくなります」となるだろう。さらに私は「7週目までは『特茶』を飲んで、8週目からは競合商品を飲む方がいいかも」なんてことまで思ってしまったよ。

別の情報では、ひろゆき氏の「特茶で脂肪減らない」という発言に対し、サントリーが「ひろゆきさん、こちらにはエビデンスがあるんです」と「論破」したと伝えられている(参照)。サントリーは、ひろゆき氏の言説の類いを「惑わしの呪文」と呼んでいるらしい。

サントリーの手にかかったら、私のこの記事も同様に「惑わしの呪文」扱いされかねない。しかし冷静に見れば、サントリーが自分で言ってる「8週目から・・・」の方が、「エビデンス」どころか「惑わしの呪文そのもの」だよね。

最後に念のため付け加えておくが、今回の「惑わし」の要因は「広告中のコピーとグラフが矛盾する」という 1点に尽きる。「Yahoo 知恵袋」の質問への回答で言われているような、下手なグラフの裏側にあるかもしれないと親切過剰に推測される曖昧な情報なんてのは、こっちの知ったことじゃない。

実際、私は電車で証拠写真を撮っちゃうほど惑いに惑ってしまったんだから。

【同日 追記】

山辺響さんがコメントで、このグラフは「増減」ではなく「変化量」を示すものだということを指摘してくれたお陰で、疑問はかなり晴れた。とはいえ、完全に晴れたわけでもない。詳しくはコメントの推移をご覧頂きたい。

 

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心と体」カテゴリの記事

コメント

記載されている情報だけを見れば、コピーとグラフのあいだに矛盾はないように見えます。

グラフが示しているのは、グラフの表題・縦軸のラベルにもあるように「腹部全脂肪面積変化量」です。

これが、「腹部全脂肪面積」のグラフであれば、確かに8週目以降は横這いに見えます。

しかしこれは「変化量」を示すグラフなので、「この週にどれだけ減ったか/増えたか」を示しています。したがって8週目からは5平方センチのペースで「減り続けている」。8週目までも変化量はゼロではないとはいえ、そこまでのペースではない。

つまりこれは、飲み続けるとじわじわ効果が高まっていって、8週目に入ると顕著かつ安定したペースで減るようになった、というグラフです。

効果が鈍り、止まるのであれば、グラフ(変化量)はゼロに近づき、そこで横這いになるはずです。

たとえば、アクセルを踏んだとき、あるいはブレーキを踏んだときの「速度」(量)のグラフと「加速度」(変化量、ブレーキの場合はマイナス)のグラフを考えれば分かりやすいと思います。

このグラフで私がむしろ気になるのは、摂取飲料以外は食事・運動量などを同じ条件に揃えて比較しているはずですが、それでも脂肪量が増え続ける(対照群)生活って、どんなだよ、という点ですが…。

投稿: 山辺響 | 2024年11月17日 11:43

> 「この週にどれだけ減ったか/増えたか」を示しています。

それだと 「腹部全脂肪面積変化率」で 単位は cm2/週 ではないですかね。
https://www.pieronline.jp/content/article/0386-3603/40060/495 を買って読んでみないとわかりませんが、0 - 8 Week間のプロットがないのがミソではないでしょうか。グラフの下の方に p値が云々と書いてありますが、統計の話ですから、例えば7週目には「増えた人 減った人 変化のない人がいて、計算上の平均値は -xx% であるが、これを以って 有意に体脂肪が減ったとは言えない」で 「8週目以降のデータは 増えた人 減った人 変化のない人がいるとはいえ 統計的に有意な体脂肪軽減が認められました」ということでしょう。 逆に言うと ケルセチンとやらを含まないお茶を8週飲み続けると 有意に太るってデータと言っている気がするんですけど こちらは どうなんでしょうね。
どなたか ¥1650 (¥200/頁?)ポチっとして解説してくださいませ。

投稿: Sam.Y | 2024年11月17日 16:44

山辺響 さん:

ははぁ、なるほど、「増減を表すグラフ」ではなく、「変化量を表すグラフ」なんですね。

文系の理解の浅さを思い知りました。ご指摘、ありがとうございます。

とはいえ、8週目までも変化していないわけではないようですから、「8週目から・・・」云々はやっぱりなああという気がします。というのは、「軽減」という言葉に「変化量」という意味まで持たせるのは、やり過ぎでしょう。

「8週目から安定的な体脂肪軽減が認められました」というなら、納得します。

投稿: tak | 2024年11月17日 18:47

Sam.Y

>> 「この週にどれだけ減ったか/増えたか」を示しています。

>それだと 「腹部全脂肪面積変化率」で 単位は cm2/週 ではないですかね。

ふむ、細かく言ったらそうあるべきという気がしますね。

> 0 - 8 Week間のプロットがないのがミソではないでしょうか。

私もそう思います。

> どなたか ¥1650 (¥200/頁?)ポチっとして解説してくださいませ。

私はその任にありませんのでよろしく ^^;)

投稿: tak | 2024年11月17日 18:57

臨床試験などでよくありますが、8週目の時点で初めてこのお茶を飲み始めてからの体脂肪率変化量を測っている(8週と12週にしかグラフの点がない)ので、8週目までもおそらく脂肪は減っているのだろうけど8週目の結果でしか評価できないということかで広告のようなコピーになっていると推測します。その辺のよくわからない健康食品の類と比べたらむしろ科学的に誠実なのかも。

投稿: 通りすがり | 2024年11月18日 12:52

通りすがり さん:

>8週目までもおそらく脂肪は減っているのだろうけど8週目の結果でしか評価できないということかで広告のようなコピーになっていると推測します。

だとしたら、「8週目から・・・」という文言は説得力をもちませんね。「毎週測れよ!」と言いたくなります。

投稿: tak | 2024年11月18日 14:52

論文を読んでいませんが、実際の実験結果は「毎週計測したところ、8~12週の間は、開始前と比べて統計的に有意に脂肪面積が減少していた」というものなんでしょうね。

これをどうにか売れる言葉にしようとして「ずっと飲んでると8週超えてから痩せ始める」というミスリードを狙うコピーになったんだろうなぁ、と。

「認められました」という言い回しが実に巧妙で、消費者には8週以上飲んだら痩せるという印象を与えつつ、消費者庁などに対しては「8週以降で統計優位性が確認された」という意味で書いているという主張ができます。

法の趣旨で考えればミスリードしちゃってるのでアウトなんですが、この言い回しの妙と下に書かれているそこそこちゃんとした実験を伺わせる内容を見るてなお、ここに景品表示法で調査をかけよう、という消費者庁の職員はいないでしょうね。

近傍の業界にいる身としては、景品表示法ギリギリを攻める態度に、さすがサントリーだなと感じます。(takさんはお好きではないと思いますが。。。)

投稿: 重箱の隅 | 2024年11月19日 05:19

重箱の隅 さん:

確かに、好きじゃありませんね ^^;)

私、若い頃に広告業界に非常に近い所に身を置いていたこともあって、この辺りのところは「広告のいやらしさ」と感じてしまうんですよ。

投稿: tak | 2024年11月19日 11:21

脂肪面積はおそらくCTで測定していて、放射線を使うので毎週とかは現実的でないと思います。200人規模だと費用もすごそうだし。
サントリーさんの過去の類似データを見ると4、8、12週目で測定していてこのへんは妥当な試験デザインかなと思います。
そしてどれも4週目は有意差なし、8週目で有意差あり(12週目はさらに下がったり今回みたいに横ばいだったり)という結果なので、今回のデータはともかく社内では「8週目から…」という表現が定着しているんでしょうね。

しかし今回4週目のデータがないのは、うーん…
買うか…論文…

投稿: タニー | 2024年11月19日 14:15

タニー さん:

「手っ取り早く言うから、説明不足にはなるけど、社内ではこういうことになってるんで、納得してくれや」ってなことなんでしょうかね。

やっぱり、「うーん」

投稿: tak | 2024年11月19日 14:50

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