高校野球のサイレンと「警蹕」(けいひつ)というもの
神社の祭礼や儀式で本殿の扉を開く「開扉」の時など、神主さんがおごそかに「オオオオ〜」と唱えるのを聞いたことがないだろうか。下のビデオでも聞けるが、私なんかは昔フォークロアに極めて近い研究なんかした経歴があるのでかなりお馴染みで、自分でも結構上手にやれたりする。
ただ、この「オオオオ〜」を何というかはこの年まで知らず、「神主さんのオオオオ〜」で通していた。これに「警蹕」(けいひつ)というちゃんとした名称があると知ったのは、TBS ラジオ「安住紳一郎の日曜天国」を聞いたおかげである。
そもそもの始まりは、甲子園の高校野球の始めに鳴るサイレンだった。
10月 27日の放送分で、ある聴取者からの「高校野球のサイレンはウグイス嬢が自分の声でやっているのだと思っていた」というメールが紹介された(参照)。若い頃に放送で流れてきたサイレンを聞いて「この声、本当にすごいよね」と言ってしまい、周囲の友人達に呆れられたというのである。
それまでは自分もウグイス嬢になりたいと思い、人の声だと思い込んでいたサイレンの練習を人知れずしていたというのだから、ある意味とても健気な話ではある。
ところがその翌週、11月 3日の放送では「私も人の声だと思っていた」というメールが相次いでいると報告された(参照)。それどころか、あの声を出すプロの人がいると信じていたという話まで紹介されたのだった。これでプロになっても、あまりお金にはならないだろうなあ。
さらに 本日 10日の放送では、「これを自分の子どもに話したところ、『え、あれって人の声じゃないの !?』と驚かれた」とか、「一人では息が続かないので、何人もが交代で声を出していると信じていた」という話にまで広がっていたのだった。世の中というのは思いがけずスゴいものである。
で、安住さんはさらに「このサイレンって、神主さんの『オオオオ〜』というのに似てるよね」と言い出したのである。そう言えば、確かに似ている。そしてあれは「警蹕」というのだと言う。安住さんって、かなりの物知りのようなのだ。
私は今日の放送を聞いて、そのうち地鎮祭なんかに参列することがあって、神主さんの「オオオオ〜」を聞いたら、甲子園のサイレンの話を思い出して笑ってしまいかねないと思い、くれぐれも気を付けようと心に留めたのだった。
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