今回の兵庫県知事選挙の、世論誘導に関する大きな教訓
兵庫県知事選挙に関しては、関東の片田舎から「兵庫県って、他に人がいないのかなあ」なんて思いつつ眺めていたが、昨夜 9時前、早々に「斎藤氏当選確実」のニュースが入ってきた時にはさすがに驚いた。
一夜明ければ毎日放送が「前知事の斎藤元彦氏(47)、110万票あまりを獲得し再選 兵庫県知事選挙 投票率は 11年ぶりに 50%超」と伝えている。兵庫県の有権者は、他ならぬ自分たちが選挙で選んだ県会議員に「全会一致の不信任」を突きつけられた知事を、自分たちであっさり再選させたわけだ。
これを冷静に解釈すれば、以前にお恥ずかしいほどの低い投票率で構成された県議会の意向が、ちょっと高い投票率でひっくり返されたという図式となる。この投票率のアップに関しては、SNS を中心とした「ネット世論の高まり」というのがあったと一様に報じられている。
斎藤氏の「パワハラ」や「おねだり」は告発者が自殺してしまうほどヒドかったようだが、一方で従来の兵庫県政の方も「問題大あり」だったと伝えられる。斎藤氏は選挙で専ら自分は因習的な県政を一新させたのだという実績のみを訴え、それに SNS が呼応して成功を収めたということのようだ。
県議会側が「鬱陶しい存在の知事」を事実上「クビ」にして安心し、のほほんとしているうちに、斎藤氏側は圧倒的かつ加速度的な情報戦略で「行け行けドンドン選挙」にしてしまったというわけだ。
一方的な情報を発信したかったら、選挙期間というのは「格好の舞台」なのだね。それに対して下手にカウンター・キャンペーンなんか張ったら「選挙妨害」になりかねないから、相手はおとなしくしているほかない。
今回のケースは、ケチョンケチョン状態から一転して当選に至るまでどのような「世論誘導」が行われたかという視点で捉えるとかなり興味深い。日本中の選挙に「ネットde真実」などとは異なる「まともなネット世論」を反映させるには、ここでしっかりとケース・スタディすべきだろう。
いずれにしてもあとは斎藤氏に、「前みたいに調子に乗りすぎないでね」と言うしかないよね。折良く来月早々に丹波篠山に出張する予定だから、兵庫県のちょっと田舎(神戸のような都会じゃないという意味)でのナマの声ってやつを聞いて来ようと思っている。
【11月 22日 追記】
ここで述べた「世論誘導」という視点からとても興味深い記事が Business Journal に本日付で掲載された。「斎藤元彦知事の SNS 戦略を担った PR 会社が戦略を公開… 公職選挙法との関係」というものである。その公開された記事というのは、note のこちらの書き込みのようだ。
斎藤知事の「SNS 戦略を担った兵庫県の PR・広報会社が選挙活動の具体的な内容をサイト「note」上で公開」したというものだが、これに関して斎藤知事側から報酬が支払われていたとすると、「買収行為」にあたり、公職選挙法に抵触するというのである。調査の結果がどう出るか、注目に値する。
なお、この件に関しては日を改めて独立した記事を書くつもりなのでよろしく。
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コメント
実は自殺した人は遺書に“公用パソコンに記録してある内容は秘密にして欲しい”と書き残しています。
公用パソコンですからその内容は当然完全に秘密にされることもありません。
秘密にして欲しいと願った内容は過去十年くらいに渡っての十人近い職員との不倫日記のようです。部下の職員に対し、人事権を使って不倫を強要したというのが大方の定説になっていました。それが自死の要因のようです。
パワハラについては決定的な証拠が全くない。
今の時代は皆がスマホをもっているのでひどいパワハラがあれば音声記録があるはずだ、それが全くないのだから実はパワハラなんてなかったのだ、というのが支持者側の見方になってます。
実際、過去にはパワハラ音声を突き付けられて辞職に追い込まれた明石市市長や、豊田真由子衆議院議員もいます。今回は証拠が全く出てこない。
対抗する稲村和美氏も演説では斎藤氏のパワハラについては一切言及してない。あったかもしれないレベルの話をあったと決めつけることができず、ひたすら対話を深めて県政を進めていくという抽象論に終始しました。
選挙戦中盤でもう勝負はついてました。
斎藤氏の演説会場の様子:
https://www.youtube.com/watch?v=FDqLnM57RT0&t=332s
数百人の聴衆による熱気。三年間でした仕事を静かに語ってる。
稲村和美氏の演説会場の様子;
https://www.youtube.com/watch?v=e9xFeKQudcM
やや熱気に欠けるどころか “サイトウ、サイトウ”の声が演説の最後で沸き上がってる。かなり異常な光景です。
組織票全くなし、維新からも見捨てられた斎藤氏が勝った、こういうのを判官贔屓と言うのでしょうか。
投稿: ハマッコー | 2024年11月18日 23:05
ハマッコー さん:
へぇ、初めて聞きました。いやはや。わけわかりませんね。
ただ、個人的な印象としては、たとえ不倫が事実だったとしても公用パソコンにそんなこと書き残すなんて、不自然すぎると思いますがね。
投稿: tak | 2024年11月18日 23:47
斎藤知事に対するパワハラやおねだりといった過去の大手メディアの報道が、情報操作を目的としたものであり、報道内容が恣意的に捻じ曲げられすべて捏造であったことが明確になったからこそ、兵庫県民は驚愕し、このような結果になったのです。
そして県議会は県民局長が自らの悪事が露呈するもとを恐れ自死したことを利用し、斎藤知事を陥れました。
過去20年間にわたって井戸県政が築きあげた強固な既得権益システムにNoを突きつけ、自らの報酬を減額し、県民に対する多くの良き県政を行ったことが発端です。
本件は、マスメディアが日常的に権力と結託して民衆をコントロールしようとしていることが明るみになった、大変な事件なのです。
兵庫県民のみならず、全国民に真相を知って頂くことが県民の切なる願いです
少なくとの兵庫県民は今回の選挙で多くを知り、今後は大本営発表を信じることはなくなりました。
個人自らで真相を求め知る努力をし、普通に情報処理ができる社会人ならば、今回のように様々な実態を伝えた情報をもとに正しい判断をすることができる証左となったのです。
私は兵庫県民ですが、百姓一揆にも似た本件についての一連の出来事を、誇りに思います。
ぜひ県民の生の声を聞いて頂きたいと思います。
投稿: HY-1 | 2024年11月21日 09:41
HY-1 さん:
ごめんなさい。こうした 100%みたいな書き方をされると、つい「一方的」という印象をもってしまうのですよ。
ものごとというのは、いろいろな要素が絡み合って展開するものなので、「大本営発表」はもとより信じません。それは、どちらの側からの情報に対しても同じです。
>ぜひ県民の生の声を聞いて頂きたいと思います。
「来月早々兵庫県に行きますから、そうさせていただきます」としか言えません。
投稿: tak | 2024年11月21日 12:58
ものごとや事実は多面的な側面があり、見る側にとっていろいろと異なりますが、真実はひとつしかないのですよね。
お忙しいところご返信ありがとうございました。
投稿: HY-1 | 2024年11月21日 13:49
HY-1 さん:
その「真実」を知るのは、容易なことではありません。
投稿: tak | 2024年11月21日 15:42
まあそうおっしゃらずにフラットな心でこの事件をご覧になって見て下さいね。takさんのような鋭い知性をお持ちなら、すぐに全貌を解明なさるでしょう。
投稿: HY-1 | 2024年11月21日 21:25
HY-1 さん:
ごめんなさい。「フラットな心」というのがどんな心なのかわかりません。「起伏のない平らな心」ってことでしょうか。そうした心で見れば、この事件がわかるのでしょうか。ますますわかりません。
>鋭い知性をお持ちなら、すぐに全貌を解明なさるでしょう。
どんなに鋭い知性があったとしても、「全貌の解明」なんて無理ですよ。しかも「すぐに」なんて、到底あり得ません。
投稿: tak | 2024年11月21日 22:11
フラットと申し上げたのは、特定の思想に偏ったり特定の候補に肩入れすることなく、という意味でした。
今回の事件は、日本の国の在り方における大転換点になると思いますので、今のうちから追いかけておられたほうがよろしいのでは、と思い、加えてあなたのファンとしてこれからも時事についてtakさんの鋭い分析やご意見を聞ける、と思ったので申し上げたまでです。
なんだかお気に障ったようでごめんなさい。
投稿: HY-1 | 2024年11月22日 10:55
HY-1 さん:
いえいえ、お気になさらないで下さい。
「フラットな心」というのががそういう意味なら、そうした姿勢で捉えるように努力することはできると思います。
ただそれでも、全知全能ならぬ個人の「認識のありよう」というのは、必然的に微妙なバイヤスが入りますので、「全貌の解明」には至りようがありません。
そういう意味で申し上げました。
投稿: tak | 2024年11月22日 12:24