選択的夫婦別姓は、避けて通れない問題
日本の「夫婦同姓」制度が問題になっていて、nippon.com も "「選択的夫婦別姓導入を」―国連が 4回目の勧告 : 夫婦別姓をめぐる動き" と伝えている。
この記事で確認しなければならないポイントは、先進国で夫婦同姓が義務化されているのは日本だけということと、今回の選択的夫婦別姓導入の勧告が既に 4回目になるということだ。「右へ倣え」が好きな日本だが、この問題に関してはどういうわけかムチャクチャ意固地である。
自民党の中にも選択的夫婦別姓の導入に賛意を示す議員も出てきてはいるのだが、政府としての態度表明となると完全に「のらりくらり」が貫かれていて、先月 17日付の日本経済新聞は「日本政府、夫婦別姓の推進方針示さず 国連・差別撤廃委」と、次のように伝えている。
日本政府の担当者はこの日、「国民の意見や、国会の議論を注視しながら、司法の判断も踏まえ、さらなる検討を進める」と述べるにとどめ、推進方針を示さなかった。
これって実質的には何も言っていないのと同じで、自民党の支持基盤である保守層に遠慮していると見るほかないだろう。
保守層は「夫婦同姓は日本の伝統」みたいなことを主張しているが、それには根拠がないことぐらい、歴史を辿ればすぐにわかる(以下の記述は法務省の「我が国における氏の制度の変遷」に基づく)。
- 明治 3年(1870年)9月 19日:太政官布告によって初めて平民も苗字を名乗ることが許可された。
- 明治 8年(1875年)2月 13日:太政官布告によって苗字が義務化された。軍の兵籍取調べの必要上と言われるが、夫婦同姓は規定されていなかった。
- 明治 9年(1876年)3月 17日:太政官指令では「妻の氏は『所生ノ氏』(=実家の氏)を用いること」とされていて、むしろ「夫婦別姓」だった。ただ、実際には夫婦で同姓を名乗ることが徐々に増えていったらしく、混乱が見られる。
- 明治 31年(1898年):この年に制定された民法で「夫婦は、家を同じくすることにより、同じ氏を称すること」と規定された。
ちなみに明治以前に苗字の許されていた公家や武家の社会では、厳密に考証するとむしろ夫婦別姓だったようだ(参照)。「家」が社会の基盤だった時代、女性は夫の家系に入れてもらえなかったのだ。
我が国で「夫婦同姓」になってからは、公式には 130年足らずの歴史しかなく、しかも日本国憲法発布(1946年)以後の 78年間は「家」制度が消滅してからのものだから、実質的に機能していたのはわずか 52年間しかない。これでは「伝統」と称するに値しないだろう。
それどころか、このまま夫婦同姓を続けて行ったら苗字の多様性がどんどん失われていく。これは当然の理窟で、文化的損失と言わなければならない。理論的には 500年後の日本には「佐藤さん」しかいなくなり(参照)、苗字を名乗る意味がなくなってしまうというのである。
とにかく選択的夫婦別姓は避けて通れない問題なのだ。
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