戦前のカレンダーからわかってくること
能栄さんという方が「旅館にあった昭和18年のカレンダー」という画像入りの tweet をしておいでだ(参照)。古色蒼然としたいかにも戦前のものというイメージだが、よく見るとなかなか面白い要素に満ちている。
これは昭和 18年 1月のカレンダーなのだが、まず嫌でも気付くのが、カレンダーの左端が金曜日になっていることだ。「金、土、日、月、火、水、木」の順に並んでいる。
いくら何でも、戦前の日本では 1週間の始まりが金曜日だったなんてことはないだろうから、これは 1月 1日が金曜日ということに合わせた結果なんだろう。とすれば、2月と 3月は左端が月曜日となり、4月は木曜日ということになるのだろうか。
何だか面倒な気もするが、当時は 1週間が生活のベースとなるサラリーマンより農民の方がずっと多かったから、別に奇異でも不便でもなかったのかもしれない。
それから、1月 5日が祝日となっていることにも注目だ。この日は戦前「新年宴会(しんねんえんかい)」として、宮中において新年の到来を祝う宴会を行う祝祭日とされていたという。これ、現代にも残されていたら、年末年始の休みがちょっと延びることになるかもしれない。
ちなみにこのカレンダー、横書きの部分は数字部分を除けば、すべて右からの表記となっている。これは戦前の話だから当然のことだが、根本的なことを言えば、これは「横書き」というよりは「各行が 1文字の縦書き」というココロなのである。
さらに、右側の枠外には「明治 年号換算 七十六年」「大正 年号換算 三十二年」と表記されている。昭和 18年と言えば明治生まれや大正生まれの人も現役世代として生きていたのだろうから、あってもいいような気もするが、別になくても構わない。
ただ私は最近、「令和〇年」なんて言われてもピンとこないので、もっぱら西暦の方を多用するようになっている。もしかしたら、このカレンダーの「明治七十六年」なんてのは、明治生まれの人にとっての「西暦代わり」みたいな役割を果たしていたのかもしれない。
何しろ「昭和十八年」という表記の横にあるのが「西暦」ではなく「皇紀二千六百三年」という文字なのだから、明治や大正の年号換算の方がピンときやすかったのだろう。いや、もしかしたらこの当時は皇紀にかなり馴染みがあって、余計な心配は無用だったのかもしれないが。
いずれにしてもカレンダーの上に描かれている海軍旗は、軍国主義の台頭した時代ということを如実にうかがわせる。最近のカレンダーにはこんなデザインがないだけ幸せだ。
このカレンダーの製造元である「七十七銀行」というのは、今でも健在である。「日本銀行代理店」なんて表示に驚いてしまったが、よく調べると、この制度は今も存続しているみたいで、七十七銀行はその業務をずっと続けているみたいである(参照)。
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コメント
3日も旗日になっていますね。調べたら、1948年まで「元始祭」という祝日だったと。
投稿: 山辺響 | 2025年3月 4日 14:19
山辺響 さん:
>3日も旗日になっていますね。調べたら、1948年まで「元始祭」という祝日だったと。
ありゃ、本当だ。
日曜日と重なって見逃してました。失礼しました。
ただ、こればかりは復活しても休日は増えませんね ^^;)
投稿: tak | 2025年3月 4日 14:48
ちょっと漁ったらこんなんありました。
https://pulex.pleascy.fun/item-ijejawyq9y.html
昭和4年、なんと、日の並びが縦書きですねえ。しかし先頭は日曜日に揃えているようです。
いろんなタイプがあって試行錯誤していまの形に落ち着いたのでしょうね。
投稿: らむね | 2025年3月 4日 17:31
らむね さん:
へえ、昭和 4年のカレンダーなんて、生まれて初めて見ました。
昭和 18年のものよりずっとお洒落ですね。戦前の日本って、かなり面白くない国になってたんだと実感させられます。
投稿: tak | 2025年3月 4日 18:09
昭和18年1月!
当方親父の誕生月でした。
伊勢湾台風に於いては、名古屋市内の地域を小舟で(ご遺体を)引き上げる中学生だったことなど、フワッと思い出させてくれること、記事に感謝とともにプチ供養になりました。
ありがとうございました。😊
投稿: 乙痴庵 | 2025年3月13日 02:19
乙痴庵 さん:
おぉ、そうでしたか。
思わぬところでお役に立てて幸いです。
投稿: tak | 2025年3月13日 12:42