言葉のつながり、主体と客体をきちんと整理すること
Impress Watch に「マイナ免許証を発行してきた 更新自体はスムーズだけど注意点も」という記事がある。ここで問題にしたいのは例によって記事の内容ではなく、タイトルの言葉の使いようについてである。マイナ免許証そのものについては、一応 23日の記事でケリを付けたつもりでもあるし。
「マイナ免許証を発行してきた」とあるが、フツーは「発行してもらってきた」とか「交付を受けてきた」などとすべきだろう。記事の中身をよく読めばマイナ免許証を「発行した」のは当然ながら筆者ではなく府中運転免許試験場であるとわかるだけに、やはり「おいおい」と言いたくなる。
もしかしたらマイナ免許証の場合は特殊ケースとしての言い方をするのかとも思い、念のためいろいろググってみたが、「発行」なんて言ってるのは、さすがに今回のこのページしかなかった。本来ならば「一体化の手続きをしてきた」というのが最も妥当な表現なのだろうね。
これに類した言葉の言い違いは結構よくあるので、フツーだったら「またか、しょうがねえなあ」で済ませてしまうところだが、今回の場合はこの記事の筆者が、文章を書いてメシを食うフリーライターのようなので見逃せない。プロならプロで、主体と客体との違いがきちんとつながる文章にしてもらいたい。
そういえば先日ラジオで、どこだかの市役所の人間が「この行事に参加希望の市民の方が、参加申込み書の〇〇の欄をきちんと書いていただけるとありがたい」と言っているのを聞いた。これ、さらりと聞き流してしまいそうだが、やはりちょっとおかしい。
ここは主語が「申込みの市民の方が」なのだから、「書いていただけるとありがたい」ではなく「書いてくださるとありがたい」と言うべきだろう。「いただけると・・・」と言ってしまうと、申込みを受ける役所側が唐突に前面に出てしまう。
最初に取り上げたマイナ免許証の話も、市役所の人間の話も、話の主体と客体が途中で入れ替わってしまっているのが問題なのだが、多くの場合、これがおかしいと思われずに済んでしまいがちである。とくに「いただく」という単語の場合はこうした「入れ替わり」がメチャクチャ多い。
日本語というのは元々、主体と客体とがごっちゃになりやすいところがある。とはいえ客観的なニュースや役所からの広報などでは、その辺りをきちんと整理してもらいたいと思ってしまうのだよね。
ちなみに主体と客体とが入れ替わった例ではないが、こんなのも見つかった(参照)のでオマケとして紹介しておく。おそらく「全面に出す」じゃなく「前面に出す」というココロなんだろう。要するに変換ミスなのだが、書いた当人もミスとは気付いていない可能性がある。
私はスタバではホットコーヒー以外飲んだことがないので紙ストローは未経験だが、それにしてもずいぶん悪評だったのだね。
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コメント
曲がりなりにも言葉で飯を食っている人間なのですが、「頂く」と「下さる」はいかにも失敗しそうです…。
「課金する」などの乱れについては、もう諦めました…。
投稿: 山辺響 | 2025年3月26日 15:07
山辺響 さん:
翻訳を仕事にされていると、そのあたりは敏感にならざるを得ませんよね。
日本語だと、受動態で語られていたはずなのに、いきなり能動態になったりするサンプルが多いですから (^o^)
投稿: tak | 2025年3月26日 19:05
何年かぶりにコメントします。
バイク乗りの間では「欲しかった新車を納車しました」という、昭和時代からの愛好者には馴染みのある言い回しがあります。
が、近年は”納車はするものでなく、業者からされるものなので正しくは「納車されました」と言うべき”との、まぁ正論で揶揄されがちでして、言われてみればそうなんですが個人的にはモヤッとします。。
投稿: koji739 | 2025年4月 3日 19:49
koji739 さん:
>バイク乗りの間では「欲しかった新車を納車しました」という、昭和時代からの愛好者には馴染みのある言い回しがあります。
はほう、初めて知りました。言わば業界用語みたいなものですかね ^^;)
投稿: tak | 2025年4月 4日 07:44