米国アパレル業界は、国内生産回帰なんて無理
Courrier が "「国内回帰」したくても… 米国のアパレル産業に立ちはだかる高いハードル" というニュースを伝えている。「トランプの関税が服飾部品の調達のネックに」というもっともらしい小見出し付きだが、関税云々を抜きにしてもそもそも無理な話だろうよ。
私は 1980年代からしばらく国際的な繊維・アパレル業界を専門分野としていろいろな記事を書いていたのだが、当時の米国でのアパレル国内生産比率なんて微々たるもので、ほとんどは香港や東南アジアでの生産だった。
「ブランド」としては米国のブランド("Levi" とか "Anne Klein" とかね)でも、実際の縫製という労働集約的な作業はほとんど海外の工場が下請けで行っているのである。半世紀以上にわたってそうしたシステムでやっているのだから、いきなり「国内生産」なんて言ってもできるわけがない。
一方、当時日本でのアパレル国内生産比率は 70%ぐらいだったと思う。ブランドを保有して製造責任を負うアパレル・メーカーは「アパレルさん」、その下請けで縫製を行うのは「工場さん」と呼ばれていたものだ。地方に行けばこの「工場さん(縫製工場)」という地場産業がまだまだ健在だった。
ところが 21世紀も 4分の 1を越えようとする今、日本のアパレル国内生産もほとんど消え失せてしまった。WWD ジャパンは 2022年の状況について "アパレルの国産比率「1.5%」 過去 20年で生産量 6分の1に" と報じている。日本中にあれだけあった「工場さん」は、今や影も形もない。
日本がこうした状態なのだから、アパレル生産の国外シフトでは 30年以上先行する米国で、トランプが思いつきみたいに「国内回帰」なんて言ってもできるはずがない。「縫製」みたいな労働集約的な仕事は、人件費だけを考えても米国内では非現実的なのだ。
トランプはいろいろな分野で「メイド・イン・USA」の掛け声をかけまくっているが、彼は経済に関してはほとんど素人丸出しだから、実際には「掛け声以下」の幻想に終わってしまうだろう。多くの米国民がそれに気付く頃には「時既に遅し」で、米経済がおかしくなってるかもしれない。
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コメント
トランプさんは地上げ屋の手法(速い話が恐喝)の成功体験で政治を進めようとしている。
アメ車が日本で売れないことにも不満を持っているようです。
その内恐喝的手法で日本に圧力をかけてくる。
日本に進出して成功しているアメリカ企業はいくらでもある。
唯一成功してないのが自動車メーカーで、彼らはマーケティングを日本で全くしていない。JAPAN MOBILITY SHOW にも出展していない。テレビでの宣伝も全くしていない。
トランプさんはこの辺りの事情を全く理解してない。
ビジネスマンなら日本でアメ車が売れない事情を理解してるはず。地上げ屋にはその事情が理解出来ない。
この先しばらく地上げ屋の手法に世界は振り回される。
投稿: ハマッコー | 2025年3月20日 17:33
ハマッコー さん:
なるほど、彼の手法は「ビジネスマン」ではなく「地上げ屋」の発想と言えば分かりやすいですね。
まともなマーケティング手法を理解していないのも道理です。
投稿: tak | 2025年3月20日 18:52
こぞって海外から、日本国内に工場を作るって話も出てきそうな情勢。
メガソーラー作るために、森林資源をドッカンドッカン潰しまくってる「国政」なら、外国人労働者(移民さん?)の受け入れ然として制度化していきそうな…。
そこにも「ナンチャラ協議会」とか「カンチャラ法人」作って、天下り先と(利益)還元団体の創設なんてねぇ。(現在技能実習生って言い方もなくなっておりますが…)
はぁあ、バイコクなさっているのはどなたかしら?
投稿: 乙痴庵 | 2025年3月24日 20:27
乙痴庵 さん:
ははぁ、外国人労働者を雇って縫製工場復活させるってわけですね。
そのためにはミシンなどの設備導入に初期コストもかかるでしょうが、あり得ない話ではないですね。
投稿: tak | 2025年3月25日 08:03