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2025年4月11日

夏目漱石の直筆原稿発見の話から、いろいろ考えてみた

NHK が昨日付で "夏目漱石「坊ちゃん」などの自筆原稿を発見 奈良天理大学" というニュースを報じている。見つかったのは、『坊っちゃん』の 150枚にわたる自筆原稿のすべてと、『吾輩は猫である』の第十章の 62枚だそうだが、ちょっと嬉しくなる話である。

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同じ明治の文豪、島崎藤村の場合は自筆原稿の拡大コピーしてパネルにしたものが結構出回っていて、私のところにも親戚から押しつけられたのがある(参照)。それに比べると漱石の場合は自筆原稿の保存に無頓着だったらしくて、全集本などでも原稿の写真なんて見たことがない。

で、今回見つかった自筆原稿というのを見ると、島崎藤村の場合と同じ傾向があることに気付いた。それはかな文字が現代の標準と違うということである。

有名な書き出し、「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」の太字部分が上の画像にあるが、「か」という文字が現代の「加」という字を崩した平仮名ではなく、「可」という字からきた文字になっている。昔からの「変体仮名」に由来し、今は「異体字」とも称するらしい。

「小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜ぬかした事がある」も、「抜かした」の「た」が「多」を崩した字だし、「事がある」の「が」は「可」を崩した文字に濁点がついたりしている。

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先に触れた島崎藤村の『夜明け前』の生原稿でも、冒頭の「木曽路はすべて山の中である」の「は」の字が「者」という漢字を崩した文字になっている。それでちょっと前は「木曽路をすべて・・・」なんて読むヤツがいた(参照)。

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こうしてみると、明治の文豪は何だかんだ言っても江戸末期から明治初期の生まれだったのだと実感される。かな文字の 1音 1文字原則が一般化される前に読み書きを修得した世代なのだ。

それでもおもしろいのは、原稿用紙の 1マスに 1文字の原則に忠実ということである。スラスラっと流れるような続け文字で書くなんてことはしていない。本になるときは活字なので、編集者が文字数を把握しやすいようにという配慮もあったのだろう。

ところが、そんなことはどうでもいいと思ってる小説家もいた。しかもそれは昭和になってから現れた石原慎太郎という人で、原稿はこんな感じである。

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1マスに 1文字という原則すら無視していて、編集者は本当に困っていたらしい(参照)。「悪筆」と言われていたようだが、当人としては達筆を気取っていたような気がするあたりも「ナンだかなあ」と思ってしまう。

その石原慎太郎も、デビュー作の『太陽の季節』はきちんと読みやすい字で書いている。こんな感じだ(参照)。

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この人、大御所になると傲慢になってしまって、編集者への思いやりがなくなったんだろうね。

 

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