鯉のぼりは一匹から群れに変化しているらしい
紹介のタイミングがちょっと遅くなってしまったが、nippon.com のサイトに 5月 5日付で「こいのぼり:時代とともに 1匹から群れで泳ぐスタイルに」という記事がある。鯉のぼりというのは江戸時代からどんどん変化しているようなのだ。
江戸時代初めの鯉のぼりは、サイズも小さいものでほとんど存在感がなかったようだが、幕末から明治期にかけて大きな鯉のぼりが盛んになったようだ。ただ、安藤広重の「江戸名所百景」に描かれたものを見ると、当初は大きな真鯉が単独で揚げられていたようなのである。
それが明治後期から大正の頃には、真鯉(黒い鯉)と緋鯉(赤い鯉)の2匹セットが主流になった。しかしこれは「鯉の夫婦」というわけではなく、武家の発想による「父と子(男児)」を表していたらしい。そんなわけで唱歌の「こいのぼり」にも、お母さんは登場しない。
屋根より 高い こいのぼり
大きい まごいは お父さん
小さい ひごいは 子どもたち
おもしろそうに 泳いでる
家族観の変化に伴って 3匹構成(赤い緋鯉が「おかあさん」となり、小さな青いこどもが加わった)が基本になったのは、1970年以降だという。鯉のぼりの家族におかあさんが加わるまでには、戦後から 25年という年月を要したわけだ。
それが現代では、観光名所や川などに多数の鯉のぼりが揚げられるというような形に変わりつつある。個別の家庭で大きな鯉のぼりを揚げるという余裕がなくなってきたことが背景にあるわけだが、これってもしかしたら「家族」のあり方の変化を先取りした現象かもしれない。
鯉のぼりを揚げるというのは、それほど歴史の古い風習ではなく、江戸時代後期から案外短期間のうちに様式が変化しているのだね。これは鯉のぼりが時代ごとの「家族のコンセプト」を反映しているからで、古来の「宮廷」を模した「雛祭り」とは基本的に異なっているからなのだろう。
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