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2025年5月13日

どうしてそれほどまでに夫婦同姓にこだわるのか

先月 22日に報じられた記事だから取り上げるタイミングがちょっと遅くなってしまったが、「維新 結婚後も旧姓の通称使用可能にする法案要綱まとめる」という NHK NEWS の内容が気になってしまった。

250513

日本維新の会の案は、記事によれば「結婚で姓を変えることが、女性の仕事や社会活動に不利益をもたらしており、早急な対応が必要だとして、結婚後も旧姓を通称として使用できることを規定した法案の要綱が示され」とある。どうやら「姓の変わるのは女性」というのが前提とされているようなのだね。

そして要項内容の重要ポイントは次のようなことだ。

要綱では戸籍法を改正し、希望する人が結婚前の旧姓を通称として戸籍に記載できるようにするとともに、住民票や運転免許証、それにパスポートなどにも旧姓を記載できるようにするとしています。

つまり戸籍上では「本名はあくまでも本名」で、「通称としての旧姓が補足的に記載できる」ということのようなのだ。ただ「住民票や運転免許証、それにパスポートなどにも旧姓を記載できるようにする」というのは画期的ではあるものの、表現がかなり紛らわしい。

「本名」を原則としながら「旧姓」も補足的に表記できるというのか、「旧姓」のみの表記でいけるのかが曖昧で、明確に読み取れない。いずれにしても一人の人間に「本名」と「通称」の二通りの名前を法的にもたせるということ自体、かなり鬱陶しい制度ということができる。

これ、次のように考えてみればその不毛さが実感されるだろう。

結婚に際して男の方が妻の姓に変わることだって当然あるわけで、他ならぬ私の父がそうだった。母が一人娘だったために、いわゆる「婿入り」の形で結婚したのである。ところが通称としての旧姓使用に関する最近の情報は、ほとんど女性の場合のみを想定して語られている気がする。

これがこの問題をややこしくする第一歩みたいなものだ。根底にあるのが「男権社会」のコンセプトのままだからである。

私は 7年近く前に "「夫婦別姓」 は、保守派にもメリットがあるだろうに" という記事の中でこんなことを書いている。少々長くなるが引用しておく。

思えば、「夫婦別姓」ならぬ「親子別姓」というケースがある。今の世の中では、親が離婚して、母親が旧姓に戻ったために、子どもと姓が違うという場合が多いだろう。しかし昔は、そうではない理由での「親子別姓」というのがあった。

それは一人娘が結婚して姓が変わってしまったために、「家督相続」する者がいなくなり、どうしても「家」というものを継続させたいがために、生まれてきた子の 1人を母親の両親の養子として縁組してしまい、それによって母方の「家」を継がせるというものだ。大方は子どもの知らないうちに養子縁組を成立させてしまうので、子どもが幼いうちは、当事者ながらよくわからない事情であっただろう。

保守派は「夫婦別姓では、親と子の姓が違ってしまい、家族の一体感が阻害される」などといって反対するが、その昔の「子どもが知らないうちに、祖父母の家に養子縁組されてしまっている」というケースに関しては、「親と子の姓が違ってしまい…云々」 みたいなことは言わない。これは甚だ不公正な態度と言えるだろう。

そもそも夫婦別姓を取り入れると言っても「選択的夫婦別姓」なのだから、全ての夫婦が別姓を名乗れというわけじゃない。妻が夫の姓を名乗りたければそうすればよく、旧姓のままでいたければそれも合法とするというだけのことだ。

そのせいで世の中がひっくり返ったりするわけじゃないというのは、日本以外の国がごくフツーに証明してくれている。どうしてそれほどまでに「戸籍上の夫婦同姓」にこだわるのか、本当にわからない。

最後に付け加えておくが、この記事に添えられてる写真、妙に寂しい光景だなあ。

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比較文化・フォークロア」カテゴリの記事

コメント

旅券や運転免許証など諸々の公的文書に旧姓記載(あるいは併記)を可能にするという場合、そうした公的文書を管轄する規則もひとつひとつ修正する必要が生じると思うんですよね…。

選択的夫婦別姓なら、同姓を選ぶ人でも別姓を選ぶ人でも記載するのは今と同じく本名(戸籍名)「だけ」なのだから、そのへんを弄る必要がなくなる。はるかにシンプルで合理的なソリューションのように思えます。

投稿: 山辺響 | 2025年5月13日 12:47

山辺響 さん:

まさにおっしゃる通りですね。

維新案というのは、あまり頭のいい人が考えたこととは思えません ^^;)

投稿: tak | 2025年5月13日 13:26

聞きかじりですが誰ぞが言ってました。

「選択的夫婦別姓は是か非か」と議論するからこじれるのだ。「強制的夫婦同姓は是か非か」と考えればよい。

人間の心理をうまく突いてますよねえ。

投稿: らむね | 2025年5月13日 17:10

らむね さん:

うまいことを言いますね! まさにその通りだと思います。

投稿: tak | 2025年5月13日 19:31

もぅ、夫婦別姓じゃなくて、夫婦性合体にすれば良いのに。
東南アジア等ではそうらしいですよ。

「田中佐藤なんたら」

みたいな。
まぁ、子孫が増えるたびにどんどん長くなるのが欠点と言えば欠点…。

投稿: Senna | 2025年5月14日 05:01

Senna さん:

わはは (^o^)

ウチの田舎では佐藤と斎藤がやたら多いので、「佐藤×4 斎藤×2 なんたら」 なんてことになりそう。

投稿: tak | 2025年5月14日 05:16

政治家さんたちの活動なので、「なんとかして 夫婦別姓を阻止すること。」が 票につながる と思っているのかどうかが気になります。
「票にはつながらないけど 信念だから」というならば ほんの少しだけ見直してあげても、、、とは やはり なりませんね やっぱり。

投稿: Sam.Y | 2025年5月14日 21:49

実際に不便を実感している身としてはいい加減にしてくれとしか言いようがないですね。
改姓後、仕事で中国に行ったときに領収書の名前が旧姓になっており、慌てて指摘し事なきを得たことがありました。パスポートのサイン(漢字)を見て領収書を書いたようです。名前変更は英語しか記載がないため、漢字の日本語読みが分からない中国ならではの出来事でした。漢字で書くなってことなんでしょうが。
特許発明者の名前(本名での出願が必須)が変わって検索に引っかからないとか、姓が変わる側が一貫した名前が必要な仕事をすることが想定されていないんですよね・・・

投稿: ウサマロ | 2025年5月16日 03:44

ウサマロ さん:

>姓が変わる側が一貫した名前が必要な仕事をすることが想定されていないんですよね・・

なるほど、不便でしょうがないですね。

投稿: tak | 2025年5月16日 07:47

ウサマロ さん:

>姓が変わる側が一貫した名前が必要な仕事をすることが想定されていないんですよね・・

なるほど、不便でしょうがないですね。

投稿: tak | 2025年5月16日 07:47

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