人間とクマとの「暮らしの境界線」というもの
東北などの地域を中心に、人里どころか市街地にまでクマが現れて人身被害につながっていることが大きな問題となっている。秋田県は自衛隊の出動要請まで検討しており(参照)、自衛隊もそれを受けることになりそうだという(参照)。私の生まれた山形県庄内(酒田市)も他人事じゃない(参照)。
こうした中で、信濃毎日新聞の "山に囲まれた町で熊の目撃情報が半減 捕獲も激減 人間との暮らしの境界線を管理する「ゾーニング」の効果か" という記事が注目される。無闇に「駆除」するだけでなく、クマと人間との間に緩衝地帯を設けてそれを両者の生きていく上での「境界線」にするというのだ。
よく考えてみれば、クマ問題での自衛隊出動が実現したとしてもそれは根本的解決にはならない。これまで自治体が主体となってやっていた「クマの駆除」(捕獲して山奥に放す作業)を肩代わりするのみで、「クマが出てこないようにする」ための根本策にはならないだろうという気がするからだ。
その点、記事で紹介された長野県箕輪町の取り組みは画期的だ。今年 6月からクマの目撃が多かった地区にやぶの刈り払いの補助金を出すなど対策を進めた結果、刈り払われた地帯が「ここから先は、キミたちクマとは別の世界だから入らないでね」と示す「ゾーニング効果」を発揮しているようなのである。
その結果、本年度のツキノワグマの目撃が 24日時点で 9件にとどまり、昨年度の 19件から半減しているという。日本の多くの地域で目撃が急増していることを考慮すれば、実質的には単純数字で「半減」という以上の大きな効果と言っていいだろう。
もちろん、この「ゾーニング」だけではクマが人間の生活地域に侵入することを防ぐための完全な対策にはならないだろうが、やらないよりはずっといいというのは結果が示す通りだ。というわけで、自衛隊の力を借りるというならこうした作業もお願いすればいいと思ったりするのだよね。
人使いが荒いと言われてしまいそうだが。
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コメント
そんな対策(って手間もコストもかかるだろうけど)で大きな効果が出るんだ、と驚きました。
確かにクマの方だって、何かあったときに逃げ込んで身を隠せるようなヤブがないところは徘徊したくないでしょうからねぇ。
投稿: 山辺響 | 2025年10月29日 18:25
山辺響 さん:
クマにとっての「違和感」というのが重要なんでしょうね。
人里には慣れてしまっても、藪のないところは「ちょっとね・・・」と思ってしまうんでしょう。
投稿: tak | 2025年10月29日 19:31
「人里」(街も含め)というのは、クマも含めて野生動物から見れば、とっさに身を隠す場所もそれなりに見つかる場所なのかもしれません。岩壁で繁殖するハヤブサが高層ビルでも営巣するという話があるように、野生動物の視点では、快適か安全かという評価があるだけで、「人工物」と自然環境をそこまで区別していないのかな。ちなみに、この記事↓で紹介されている唐沢氏の本はとても面白かったです。
https://gendai.media/articles/-/113702
投稿: 山辺響 | 2025年10月31日 09:30
山辺響 さん:
>野生動物の視点では、快適か安全かという評価があるだけで、「人工物」と自然環境をそこまで区別していないのかな。
なるほど。
ご紹介の記事、なかなかおもしろいです。ありがとうございます。
投稿: tak | 2025年10月31日 13:47