ファシズムへの経済制裁は民主主義の後退につながる
早稲田大学政治経済学術院の福元真准教授を中心とする研究グループに関する Facebook 情報があり、戦前日本の帝国議会データの分析により、経済制裁が民主主義を後退させるメカニズムを解明したというのである。さっそくワセダのサイト(参照)にアクセスしてみた。
リンクされていたのは「経済制裁で進む民主主義の後退」というタイトルのページである。この研究は戦前日本の国会議員データを用い、経済制裁と軍需調達が彼らの政治行動に与えた影響を統計的に分析したもので、結果として意外な事実が浮かび上がったという。
それは、経済制裁によって打撃を受けた産業に関係する議員ほど、権威主義体制への賛成に大きく傾いて体制に取り込まれやすくなり、一方、軍需調達などで利益を得た経済的に余裕のある議員は、必ずしも体制に従う行動を取らなかったということだ。従来の印象とは逆というのが興味深い。
この構造を当時の日本全体に当てはめれば、多くの経済的に追い詰められた国民ほど政府のファシズム的政策に取り込まれ、国全体のムードとしても戦争に向かって暴走したということにつながる。「一般民衆は決して戦争など望んでいなかった」というのは、センチメンタルな幻想に過ぎないようなのだ。
実際に戦前に青春時代を過ごした私の母なども、「鬼畜米英」という政府のプロパガンダをまともに信じていたと語っていた。周囲も「軍国少女」だらけだったため、敗戦後に客観的に学び直した時のショックはとても大きかったらしい。
少年時代に易者に「お前は若死にする」と占われ、「どうせ死ぬなら空で死のう」と予科練に志願入隊したという私の父などはちょっと特殊なような気もするが、どうやら「多くの国民は、強制されて嫌々ながら戦争に協力していた」というわけではなかったようなのである。
確かに人間というのは、経済的に追い詰められると独裁的な政権に取り込まれやすくなってしまうようなのだ。
この知見は現代の国際政治にも重要な示唆を与える。経済制裁は国際的な民主主義を守る手段と考えられてきたが、実際には制裁対象国の弱い企業や政治家を追い詰めるだけで、実際にはその国の権威主義体制の強化、ひいては民主主義の後退につながる可能性の方が大きいようなのだ。
ということは、米国のトランプが進めているイランへの武力行使と経済制裁は「古典的な手法」と言わなければならず、この地域での「民主主義の後退」という逆効果を生む可能性が高いということになる。
何しろ彼自身が、あまり「民主主義的」ではないしね。
最後に一言。「経済制裁で進む民主主義の後退」というタイトルは、「進む」と「後退」という 2つの言葉がケンカしちゃってわかりにくいので、もうちょっとスマートな言い方にしてもらいたかったなあ。「経済制裁はむしろ民主主義の後退につながる」とかね。
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コメント
とはいえ太陽政策が有効かというと、どこかの北半分の国はそこでできた余裕を経済も国民の困窮も全部無視して丸ごと核開発に注ぎ込んだという話ですからね。難しいものです。
投稿: 柘榴 | 2026年4月17日 03:12
柘榴 さん:
本当にその通りで、難しい話ですよね。
投稿: tak | 2026年4月17日 11:48
柘榴さんに異を唱えるわけでは無いのですが、ベネズエラとイランの顛末、すなわち全く気付かないうちに首都中枢を超大国に急襲され、片や大統領の拉致・片や最高指導者の爆死という国家権力の滅亡に等しい侵略を受けたのは、報復できる核兵器が無かったからではないか、とも思うのです。北朝鮮が人・金・モノを核開発につぎ込んだおかげで、いま金正恩や政権中枢は健在、国家戦略としては正解だったという見方をしています。
投稿: らむね | 2026年4月18日 18:13
らむね さん:
国家としての存続と、そこに暮らす国民の幸せのどちらを優先するかという問題でもありますね。
「国家戦略」としては正解でも、「国民が、いい面の皮」という気がします。
いずれにしても、どちらか一方が正解ってことはないんでしょうね。兼ね合いの問題です。
投稿: tak | 2026年4月18日 20:30