野球にはそれほど強い興味がないのだが、敢えて言えば昔から「アンチ巨人」の立場を貫いてきた。というか、私の場合は「アンチ巨人」というよりは「アンチ巨人ファン」という方がいいかもしれない。

巨人ファンというのは、まあ決して全員がそうというわけじゃないが、単純に「勝馬に乗っていれば幸せ」的な人が多いという印象である。ただそれは何も巨人ファンに限った話ではなく、時々ヤクルトが優勝したりすると、急 「自分は前々からヤクルト・ファン」などと言い始める人がいるのと本質的には変わらない。
と公言する機会が多くなっているだけで、要するにしょっちゅう勝馬に乗っているわけだ。それが昂じると巨人が勝っているうちはいいが、負ければ堂々と機嫌が悪くなったりする。これははっきり言って大人げないわがままで、私としては「負けて当たり前、勝てば嬉しい」という阪神ファンの方にずっと親近感を覚える。
というわけで私はジャイアンツに特段の恨みはないが、巨人ファン的体質が嫌いなので、当然ながら、巨人が調子よく連戦連勝を続けるよりは、コロコロ負けてくれる方が世の中のためになると思いながら生きてきた。
ところが最近はプロ野球自体が一時の勢いがなくなってきて、私としてもその勝ち負けを意識することもあまりなくなってきたのである。そしてふと気付けば、ジャイアンツは 3年続けてリーグ優勝を逃していて、さらに 4年前はリーグ優勝したのに「クライマックス・シリーズ」とやらで負けて、日本シリーズに進めなかった。
というわけで「アンチ巨人」であり続けるのが馬鹿馬鹿しくなるほど、最近の巨人は強くないみたいなのである。福岡のソフトバンクとか北海道の日本ハムとか、東北の楽天とかが力を付けていて、従来の中日、阪神、広島といったセリーグの球団だけに限らず、全体的にフランチャイズ制の意味が実感できる状態に近付いてきた。これはなかなかいい傾向だと思う。あとはいっそ、企業名ではなく地名をチーム名にすればいい。
ちょっと過去に遡って調べてみたところ、2003年から 2006年にかけて、巨人が 4年連続リーグ優勝を逃した時期があって、この時は 3位、3位、5位、4位と、今回より始末が悪かった。2004〜05年に監督を務めた堀内恒夫は、こう言っちゃナンだが「監督としては無能」の烙印を押されて、3年契約完了を待たず辞任している。
2003年に優勝を逃したのは、第一次原監督時代の最終シーズンで、松井秀喜がメジャー・リーグのヤンキーズに FA 移籍していなくなった年だった。結局この穴を埋めることができず、翌年の堀内監督時代にはチーム内のモチベーションまで下がっていたようだ。
こうしてみると松井秀喜の国外移籍は、かなり象徴的な出来事だったわけだ。それまでの読売巨人軍は日本プロ野球界の頂点に君臨していたのだが、これ以後、優秀な選手は狭い日本の頂点の巨人なんかよりも、メジャー・リーグに行きたいと思うようになったのだ。
ちょっと前まで日本の野球界ではドラフト制度があるとはいえ、結局は FA 制度とやらのおかげで、良い成績を残した選手は何年かすれば大抵巨人に移籍できた。そのせいで、それまでは他チームで四番打者だった選手が巨人では代打要員になったりして、野球界全体の人的資源活用という見地からすると、いかがなものかという状態にまでなっていた。
ところが最近は、優秀な選手は FA でどんどん国外に出て行くようになった。ということは、巨人はいい選手を独占できなくなったのである。
ドラフト制度で実現できなかった日本プロ野球界の戦力平準化は、こうしてメジャー・リーグへの移籍拡大という現象で、ようやく実現されつつあるわけだ。やはり日本という国は、「黒船」がなければ根本的な変化は遂げにくいようなのである。
【付け足し】
私としては「メジャー・リーグ」なんて表記するのはちょっと痛恨で、「物差しリーグ」じゃあるまいし、"Major League" の本来の発音に近い 「メイジャー・リーグ」と書きたいところなのだが、最近は不本意ながら大勢に従っている。「メイジャー・リーグ」と書くと、気取ってると思われたり、果ては「メジャー・リーグの間違いでしょ」なんて言われちゃったりすることまであるし。
日本では、音楽の "C major"(日本語では 「ハ長調」 のことね はあくまでも「シー・メイジャー」であって、「シー・メジャー」なんて言わないのに、その他の分野ではなぜか 「メジャー」 と言うのがマジョリティになってしまったようなのだ。
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