イグ・ノーベル賞をもらうのも、なかなか大変なのだね
時事通信に "海外では不名誉? 38歳教授が見た「イグ・ノーベル賞」◆赤子救う「お尻呼吸」、MIT で喝采" という記事がある。2024年度のイグ・ノーベル賞を受賞した東京科学大の武部貴則教授へのインタビューだが、この賞についてこれまで知らなかった情報満載でとてもおもしろい。
武部教授の率いる究チームが行った「「哺乳類はお尻から酸素を取り込める」という研究はリンク先の記事を見てもらえばわかるように、「呼吸不全になったブタやマウスの腸に酸素を送り込むと酸欠状態が改善する」ことから、呼吸不全の人間の赤ん坊を救うことにも通じるものだ。
これについて昨年 3月に主催者側から「イグ・ノーベル賞に選ばれる可能性が高い。受けますか」とのメールが届いたのだそうだ。教授はこのメールを冷静に受け止めつつも、当初はちょっとした迷いもあったという。
というのは、この賞は日本では肯定的に受け止められているが、海外では「おふざけ過ぎて不名誉」とする研究者もいるからだ。しかし教授は最終的に「人々を笑わせることができたら、考えるきっかけができる」というこの賞の創設意図を尊重して受賞を快諾した。
今回この記事で初めて知ったのは、賞金がハイパーインフレで廃止に追い込まれた「10兆ジンバブエ・ドル札」(上の画像の左上、左中)で、賞状はペラペラのコピー用紙ということだ。さらに授賞式出席のための旅費、宿泊費は、全て自己負担というのだから、まさに「冗談ポイよ」のレベルである。
それでも、武部教授は「サイエンスの面白さや魅力、そしてこの研究を一般の人たちにも知ってもらうきっかけになり、受賞できて良かった」と話しているというのだから、志が高い上にジョークもわかるということだ。
おもしろいのは受賞記念のスピーチは必ず聴衆の笑いを取るものでなければならないとされていることで、さらに制限時間の 1分を過ぎたところで、観客席から登場したタイムキーパー役の少女が「もうやめて!飽きたわ!」と遮るという演出まである(上の画像の左下)というのだ。なかなか念が入っている。
つまりジョークの効いた話で制限時間を少々オーバーし、その後のアクションまで考えておく必要があるってことで、武部教授はこうしたハードルを見事にクリアしたようだ。それは冒頭で紹介した記事を読んでもらえばよくわかる。
こうした記事に接すると、日本人、なかなか捨てたものじゃないと、嬉しくなってしまうよね。
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