カテゴリー「経済・政治・国際」の828件の記事

2024年10月 1日

世界はきな臭いが、米国と日本が踏ん張らなければ

首相に指名された石破氏は、早々に国会を解散して総選挙をするんだそうだ(参照)。「自民党、かなりヤバくなってる」という気はするが、ここで議席を大幅に落としたりなんかしたら石破首相の責任問題となり、高市早苗が台頭してしまいかねない。一応頑張ってもらわないと、世の中がきな臭くなりすぎる。

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今さらみたいに言うが、石破氏が総裁選挙に勝ったのは、高市、小泉を加えた 3人の中では一番「まとも」なのだから順当な結果としか思われない。ところがいきなり株価が暴落してしまったというのは、日本の経済に大きな影響を与える層には、彼は決して歓迎されてはいないということなのだろう。

YouTube では高市待望論者としか思われない連中が石破氏の総裁就任演説に罵詈雑言コメントを浴びせているし、高市本人も人事で「党内融和」に背を向けるどころか「党分断」みたいな姿勢を見せている。状況はかなりきな臭い。

世界を見れば、欧州では極右や右派が拡大している(参照)。米国でもトランプがあちこちでボロを出しながらもそれなりの人気を得ているのだから、世界はポピュリストを支持する方向に向かっているのだろう。

ここで石橋政権が短命に終わって高市政権なんかに変わったりしたら、きな臭さが「焦げ臭さ」ぐらいに強くなってしまう。日本と米国で何とか踏ん張らなければ、世の中おかしくなってしまいそうだ。

 

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2024年9月28日

初めて「何を言ってるのかわかる」自民党総裁就任会見

昨日の午後、石破氏の自民党総裁就任記者会見の模様をラジオで聞きながら、妻と「生まれて初めて『何を言ってるのかよくわかる』自民党総裁会見を聞いてる気がするね」と話していた。「脈絡のある内容をきちんと筋立てて『他者』に伝える」という意識を感じたのである。

これまでの自民党総裁就任スピーチからは、「脈絡のある内容」なんてあまり感じられなかった。総裁として選んでくれた党員たちを持ち上げ、おだて上げ、続いて党内の「融和」みたいなことを唱え、「世界の情勢は厳しいけれど、一所懸命やります」で結ぶ「定型」がほとんどだった。

要するに彼らは、「自民党総裁になり、日本国の首相になる」ことが目的だったので、それが果たされただけで舞い上がり、それから先のことを筋道を立てて述べることなんてどうでもよかったみたいなのである。

ところが石破さんは、「首相になる」ことが至上命令じみたものではなかったようで、「お世話になった〇〇先生、△△先生・・・」を延々と述べ挙げて義理を果たすみたいなことではなく、「たまたまなってしまったからには、そこから先のことを述べなければ」みたいな意思を感じさせるものとなった。

まあ、こんな姿勢だからこれまでは総裁選に立候補しても当選できなかったのだろうが、今回は党内の情勢も変わってしまったので「フツーだったら総裁になんか選ばれない人」が選ばれてしまったとも言える。世の中、何が幸いするか知れたものではない。

というわけで、ちょっと異例のスピーチだったと思う。話の内容に関しては全面的に賛同するというわけではないが、これまでの「首相としての方法論」とはちょっと違った手法をとる人なのではないかと、注目したい気持ちになったのである。

あるいは、このスピーチを聞いたのがラジオだったのがよかったのかもしれない。これがテレビだと、当人も「目つきが悪いから・・・」と自認しているように見た目の印象が落ちてしまうので、ここまでまともに聞けなかった可能性がある。

というわけでテレビでこのスピーチに接した人の多くは、ここまでプラスのイメージを持たなかったかもしれないが、少なくとも私は「ちょっと期待していいかも」と思った。これが「買いかぶり」にならないように期待する。

ちなみに動画を見て初めて気付いたのだが、石破さん、ほとんど原稿なしでスピーチしてるのは流石だよね。テレビで見てもこの点に気付かない人が多かったというのは、本当に不思議だなあ。

 

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2024年9月27日

そりゃ、東洋の果ての万博なんて誰も知らないさ

産経新聞に "「ミャクミャク」東欧で酷評 「ゾンビ」「モンスター」 万博開催も認知されず" という記事がある。ポーランドの首都ワルシャワの街を行き交う人々に「2025年大阪・関西万博が開催される事実を知っているか」と尋ねまくったところ、誰も知らなかったんだそうだ。そりゃそうだろう。

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東洋の果てで開かれる万博なんて、ヨーロッパ人はフツー誰も知らない。逆に考えて、ヨーロッパのどこかで万博が開かれることになっても、日本人のほとんどは興味を持たないし知ろうともしないだろう。同じことである。記念にエッフェル塔が建てられたパリ万博(1889年)の時代じゃあるまいし。

大阪万博なんて日本国内でさえ注目が低いことは、当ブログでも今年 2月に「大阪万博って、すっかり "アウト・オブ・トレンド"」という記事で触れ、「何とかいう名の公式キャラとかも、かなり違和感たっぷりだしね」と書いている。何もワルシャワの街で反応を探るまでもない。

記事にはこの公式キャラについて "「ゾンビ」「モンスター」などと、あまり好意的とはいえない反応ばかりが返ってきた" とあるが、当然である。何しろ日本国内でも決して評判がいいわけじゃないし、私はこの記事を読むまで「ミャクミャク」という名前すら知らなかった。

日本国際博覧会協会は各国のイベントでプロモーションしているようだが、ただでさえ会場建設で馬鹿馬鹿しいほどの大金を使っているのだから、これ以上無駄遣いしない方がいい。この公式キャラを見て「日本に行って見よう」なんて思う人がいたら、お目にかかりたいほどだよ。

 

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2024年9月25日

トランプを支える "asshole" (ケツの穴)人気

昨日の記事 "トランプ選挙集会ルポに見る米国の「アブナい一面」" で、トランプの演説集会に集まった聴衆の「トランプ は『俺らの嫌なヤツ』なんだ」という発言の「嫌なヤツ」というのは、英語の定番悪態の一つ、"asshole"(ケツの穴)を苦し紛れ(?)に訳したものということに触れた。

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私としては当初、この発言が「たまたまひょいと」口をついただけなのだろうと思ったのだが、実はそうじゃなかった。「トランプ = asshole」というのは、米国では彼の支持者たちの間でさえ広く賛同される「定説」みたいなものだったのである。それで、上のような Tシャツまで売れているというわけだ。

こんなような感覚的な話は、マスメディアのニュースからは伝わってこない。TV ニュースのアナウンサーが「トランプは嫌なヤツ」とか「ケツの穴」とか言えるわけがないので、素通りされてしまうのだ。しかし世の中で重要なのは、こうした「素通りされがちな底流的情報」なのである。

こうした妙にねじ曲がった人気というのは、南部を中心とした保守層が「これまで大っぴらには口にできなかった自分たちの率直な気持ちを話せる空間を、トランプが作ってくれた」と感じていることに発する。「自分たちの気持ち」というのは、要するに人種差別的で性差別的な思いだ。

米国ではニューヨークなどの都会を中心としたリベラル派が、人種差別や性差別を「過去の忌まわしい慣習」として葬り去ろうとしている。ところが南部などでは世の中のそうした動きに反発し、苦々しく思っている保守派が少なくないというわけだ。

トランプは、そうした「綺麗事ばかり言ってんじゃねぇよ!」という保守派の思いを堂々と代弁している。あんなメチャクチャなオッサンがどうしてこんなに人気があるのかという理由は、まさにこれのようなのだ。

トランプの "asshole" さ加減については、反対派は当然ながら文字通りの意味で語っている。下の画像の旗は、それをトランプ支持派が大好きな "MAGA" というキャッチでパロっているものだ。

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"MAKE AMERICA GREAT AGAIN"(アメリカを再び偉大に)ではなく、"MAKE THE ASSHOLE GO AWAY" (あのケツの穴を追っ払え)というわけだ。

ただ、「トランプは asshole だ!」と攻撃しても「おぉ、その通りだよ!」と応じられてしまうのだから、ちょっとやりにくい。困った話である。

昨日の記事でも触れたように、2018年にはメキシコ元大統領に「トランプの口は世界一汚いケツの穴だ」とまで言われてるのだが、これはトランプ自身の「アフリカやハイチなどの "shithole plase"(クソの穴のようなところ)からの移民」という悪態への反撃として発せられたものと見られる。

いやはや、トランプ自身の口から発せられると、 "asshole" より汚い "shithole" なんていう言葉になってしまうようなのである。

 

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2024年9月24日

トランプ選挙集会ルポに見る米国の「アブナい一面」

HUFFGPOST に "トランプ選挙集会の本当の姿を見た。大手メディアが報じない「動き」は演説が始まる前に起きていた【米大統領選2024】" というとても興味深い記事がある。コンピューター科学者 Jen Golbeck さんの寄稿によるものだ(元記事は こちら)。

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Golbeck さんは、フロリダ、ペンシルベニア、ウィスコンシン、イリノイ 4州で開催されたトランプの選挙集会を訪れた。 "MAGA"(Make America Great Again: アメリカを再び偉大に)信者たちが物事をどのように見ているか知るために、対面で直接話してみたのだという。

それらの選挙集会は入場無料で、上の画像からもわかるように異様な雰囲気が漂うものだったようだ。ロック音楽が鳴り響き、金ぴかのベンツが並び、"Trump" や "MAGA" と書かれた旗があちこちにはためき、ストリートパフォーマーたちがトランプをテーマにした見せ物を披露している。

参加者の多くはクーラーボックスで持参したビールで、昼からできあがっている。露店がたくさんあって、MAGA 帽子や Tシャツ、トランプのぬいぐるみ、ボタン、宝石、靴、小物などが売られている。これでは選挙集会というより「お祭り騒ぎ」と言う方が適切だろう。

こんな調子なので、トランプの演説は夕方からだが「本当の動き」はそれが始まる前の方がよく見えたという。Golbeck さんは「お祭り騒ぎ、コミュニティー、反抗、暗黒が一緒くたに混ざり合っています」と表現している。

しかし参加者へのインタビューを試みると、「一部の例外を除いて、みんな礼儀正しく、友好的で、熱心に話しかけてきてくれます」とある。中でも面白いのは次のやりとりだ。

「トランプって嫌なヤツかって?その通りだよ。でも、トランプは『俺らの嫌なヤツ』なんだ」(この記事の末尾参照)とそこにいた男性の1人に言われました。すると、周りに人たちも一斉に頷き、この男性に賛同しました。

自分たちの気持ちを話せる空間をトランプ氏が作ってくれたと称賛します。自分たちの気持ちというのは、トランプ氏が現れる前までは公共の場で口にすることが憚られた人種差別的で性差別的なヘイトスピーチのことを指しています。

この感覚はかなり重要だ。これこそトランプ人気の本質で、要するに彼は「嫌なヤツらのヒーロー」なのである。

というわけで、トランプが再選されたりなんかしたら、米国の「アブナい一面」がどっと表面化してしまいそうなのである。

【追記】

参加者のインタビューにある「トランプって嫌なヤツかって?」というくだりは、原文では "Is he an asshole? Sure. But he’s our asshole”  である。 "Asshole" は「ケツの穴」なのだが、苦し紛れに「嫌なヤツ」と訳してしまったのだろう。

というわけで、この記事は奇しくも昨日の記事と「asshole つながり」になっている。(狙ったわけではまったくないので、よろしく)

【さらなる追記】

この関連で検索してみて初めて知ったのだが、米国では "Assholes: A Theory of Donald Trump"(Assholes:ドナルド・トランプ理論)という本まで出ていて、Amazon の紹介文には「トランプが asshole(ケツの穴=クソ野郎)というのは彼の支持者の間でさえ広く賛同されている説」とある。なるほどね。

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2018年にはメキシコ元大統領に「トランプの口は世界一汚いケツの穴だ」とまで言われてるし。

 

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2024年9月17日

インドで「独裁」なんて、成立するわけないじゃん

東洋経済 ONLINE の「大国インドが中国のような独裁にならなかった訳」という記事を興味深く読んだ。「本稿は山中俊之著『教養としての世界の政党』から一部抜粋・再構成したものです」という但し書きがあり、「絶対的な強権支配が成立しにくかった土壌」というサブタイトルが付いている。

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私はインドには直接行ったことはないが、何人かのインド人とは結構親しく付き合った経験がある。その率直な印象からすると、「そもそもインドで『独裁』なんて、成立するわけないじゃん!」ということになる。

率直ついでに言わせてもらえば、中国は独裁国家ということになっているが、中国人のメンタリティとしてはそれを表向きには受け入れつつも、裏ではしっかりと「抜け道」を用意している。「表」がある限り、必然的に「裏」もあるのだ。その考え方には、日本人もかなり影響されていると思う。

ところがインド人と付き合うと、「表も裏も、へったくれもない」という印象だ。フツーの目には「混沌」としか見えないような状態でも、彼らにとっては「フツーに正常」のようなのである。

日本人はつい「それって、一体どうなってるの?」と聞きたくなるが、その質問自体がナンセンスというほかない。何しろ「いろいろあって当たり前」だから、一口には言いようがない。「二面的」じゃなくて「多面的」だから、「表と裏」なんていう東アジア的コンセプトは馴染まない。

というわけで、東アジア人なら「裏でこっそり」やるようなことでも、インド人は悪びれずにむしろ「堂々と」やる。これって、少なからぬ日本人には馴染めないことのようなのだね。

こうした土壌で、さらに国土も広大なのだから、「独裁」なんてしようったってしようがない。どうしても「独裁者」になりたかったら、他の国に行く方がいい。このことを理解しつつ冒頭に紹介した山中氏の記事を読むと、かなりよくわかる。

 

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2024年9月12日

米国大統領選のテレビ討論は、ハリスの戦略勝ち

BBC NEWS JAPAN が 9月 11日付で、10日に行われた米国大統領選のテレビ討論会を総括してくれている(参照)。記事を読む限りでは、カマラ・ハリスの方が「ちゃんと筋の通ったこと」を言って優勢なパフォーマンスとなっている。トランプは彼女と目を合わせることさえできなかったらしい。

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これに関しては米国の CNN も、「民主党候補のハリス副大統領のほうが共和党候補のトランプ前大統領よりも良い討論を行ったと考える人の割合は 63%に上った」と伝えており(参照)、日本の各社もこれを受けた報道をしている。

要するに、ほぼ 3分の 2 近くが「ハリスの方がまとも」と感じ、残りの「ゴリゴリ保守派」が「理窟はどうあれ、何が何でもトランプ」と言い張っているというわけだ。今回の大統領選は、こんなイメージに集約されつつあるようだ。

振り返れば前々回となる 2016年、ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンの対決となった選挙では、ヒラリーがことさら「自分はデキる女」というイメージ戦略を展開した。ところが結果的には逆に「嫌な女」というイメージにつながってしまい、「わかりやすい」トランプに負けてしまった。

今回のテレビ討論会の報道を読むと、ハリスは検事上がりだけに「確実な事実の積み上げ」というスタイルを選んだようだ。イメージを軽視したわけではないが、それ以上に「事実」を重視したわけである。

そうなると、「不確実な噂レベル」の話に基づく政策を主張するトランプの「お馬鹿さ加減」が自然に浮き彫りになる。討論の勝負は明らかだ。

大統領選は 11月 5日だから、このテレビ討論会の印象が薄れてしまわないうちのこととなる。これはとても重要なポイントだと思う。

 

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2024年9月 4日

イーロン・マスクの Twitter なんて、潰れていいよ

Gigazine が 9月 3日付で「イーロン・マスクによる買収後に下がった評価額が戻らない X に投資家から非難の声」というニュースを伝えている。元記事は MEDIA ITE の "Twitter Investor Accuses Elon Musk Of Tanking Value of App" (Twitter への投資家はアプリの暴落に関してイーロン・マスクを非難)。

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面白いのは、米国のメディアが今でも "Twitter" という呼称を見出しに使っていることだ。この件について触れた Washington Post も "Musk’s Twitter investors have lost billions in value"(マスクの Twitter への投資家たちは何十億ドルもの損失を蒙った)としている。

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それにしてもヒドいのは、イーロン・マスクがトランプべったりで、大統領に再選されたら閣僚にするなんて言われて喜んでしまってることだ(参照)。さらにこいつは、自身の保有する Twitter 上でカマラ・ハリスが共産主義の制服を着たフェイク画像まで流している。ガキの仕業としか言いようがない。

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これを報じる米国のテレビニュースでも、上の画像の字幕にあるようにキャスターが「Twitter オーナーのイーロン・マスクが非難の的に」と言っている(参照)。米国のメディアはおしなべて、「"X" という新名称なんて、おかしくって使ってられるか!」という姿勢のようなのだ。

私としてもこのブログでは "Twitter" と言い続けてるし、さらに使い続けるのが嫌になって、Threads に軸足を移すことを検討している(参照)。

話を元に戻すが、イーロン・マスクの買収以後、Twitter の評価額は暴落を続けている。こんな具合だ。

Twitter(現・X)はイーロン・マスク氏によって 440億ドル(約6兆4510億円)で買収されました。その後、評価額は半年で買収額の 3分の 1である 150億ドル(約2兆2000億円)まで下がりました。評価額が回復しないことについて「いい投資だった」と問題視しない投資家がいる一方、「マスク氏は莫大な富の破壊を行っている」と非難する声も出ています。

私にとっては Twitter の株価がどうのこうのなんてことはどうでもよくて、本音では「いっそ、潰れていいよ」とさえ思っている。

最後に、ほぼ恒例化してしまったみたい(参照)な「Gigazine のお下手な翻訳」についてだが、「イーロン・マスクによる買収後に下がった評価額が戻らない X に投資家から非難の声」という見出しは、やっぱりおかしい。

投資家の非難の対象は "X" というプログラムじゃなく、そのオーナーであるイーロン・マスクなのである。ここは意味からしても、「イーロン・マスクに投資家から非難の声」とすべきだろう。冒頭で紹介したように、元記事のタイトルだって「〜イーロン・マスクを非難」なんだし。

ニュースの見出し風にするなら「買収後に下がった X の評価額戻らず 投資家はイーロン・マスクを非難」あたりが妥当だろう。

 

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2024年8月20日

焼肉店の倒産が増加しているんだそうで・・・

いろいろなメディアで「焼肉店の倒産増加」が報道されている。何でも今年上半期(1〜6月)の倒産は 20件で、過去最多の倒産ペースなんだそうだ。私は肉を食わないのでそんなような状況とはちっとも知らなかった。

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ただ、「今年上半期(1〜6月)の倒産 20件」というのは、「はぁ?」と言いたくなってしまうではないか。倒産した焼肉屋には気の毒だが、たかだか「20件」程度の倒産で、「過去最多」云々というのは、大げさ過ぎやしないか?

そう思って調べてみたところ、坂口孝則氏による"焼肉店で倒産が相次いでいるワケ" という記事に、次のようにあった。

この20件という数字は負債1000万円以上の法的整理の数です。法的整理を伴わない「廃業」は含みません。これは焼肉店に限らない数ですが、2023年には約8600件が倒産したのに対し、廃業は約5万件でした。したがって、焼肉店でも、倒産件数の 6倍ほど廃業していてもおかしくありません。

なるほど、やっぱりそういうことなんだろうね。これについては、昨年の 10月の門崎熟成肉 格之進代表、千葉祐士氏による "日本人大好き「焼肉店」倒産続いている最大の理由" という記事にも次のようにある。

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倒産、廃業しているのは、実は町場の個人経営の焼肉店がほとんどで、多店舗展開をしている焼肉店の倒産の話はあまり聞きません。

なるほど、他店舗展開の焼肉店はなんとか経営を維持しているが、個人営業の店はどんどん苦しくなっているということのようなのである。こうしてみると、「倒産件数の 6倍ほど廃業」(つまり 120件ほど?)というのは生やさしいかもしれない。多分もっとずっと多いのだろう。

この理由を 2本の記事から読み取ると、最大公約数的には「円安に伴う輸入牛肉価格の高騰」「必要経費の高騰」という 2つの原価高騰要因に、値上げが追いつかないということのようだ。デフレ慣れした消費者は、値上げを受け入れないというのである。

焼肉屋は商売の形態上、店内の換気をよくしているので「コロナ禍には強い」と言われていたらしいが、インフレには弱いようなのである。何しろ調理の主要部分は客自身に任せてしまうので、原価高騰を吸収するプロセスが貧弱なのだ。

というわけで、私にはちっとも馴染みのなかった焼肉という分野で、今の円安の影響が端的に現れてしまっているというのである。世の中、どこで何が起きているのか、まったく油断がならないものだ。

ちなみに肉食を止めてからずいぶん経つ私には、ここで引用した 2つの記事の写真を見ても、ちっとも食いたいという気にならないのだよね。肉を食い物と思えないカラダになってしまったようなのだ。

 

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2024年8月16日

「成長」より「成熟」を求めるしかない日本だが

急に思い出したように「日本の去年1年間の名目GDP ドイツに抜かれ世界4位に後退」なんていう半年前のニュースを引き合いに出すのは、他でもない昨日付の「岸田さん、首相の座にほとほと嫌気がさしたんだろう」という記事に付けられたらむねさんのコメントがきっかけだ。

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らむねさんは、昨今の首相の役回りに関して次のように書かれている。

徐々に徐々に悪くなっていく国をいかに穏やかに収めるか、かつ国民にはそういう狙いに気付かせずにいかに威勢よく見せるか、悲観的すぎるかもしれませんがそう思ってしまいます。

これ、リプライにも書かせていただいたように「言い得て妙」の表現である。これが上手にできたら、21世紀の日本の「名首相」に位置付けられるだろう。

思えば前世紀後半に日本経済が大躍進を遂げたのは、ひとえに「人の力」だった。とはいえ個々人の能力が優れていたというわけでは決してなく、妙な「勤勉さ」だけが取り柄の日本人がサービス残業を重ねながら、メチャクチャ非効率に汗水垂らしてきた賜物だったのである。

だから時間当たりの「労働生産性」は決して自慢できるレベルではなかったし、最近ではさらなる低下傾向さえ示している。日本生産性本部のまとめた「労働生産性の国際比較 2023」というレポートには次のようにあり、円安を割り引いて考えてもかなり情けない。

OECD データに基づく 2022年の日本の時間当たり労働生産性(就業 1時間当たり付加価値)は、52.3 ドル(5,099 円)で、OECD 加盟 38カ国中 30位でした。

日本人はシステマティックかつ効率よく働いて生産性を高めるということがまったく下手くそで、それは 21世紀の世の中になってもそのままだ。この状態で労働人口は減少する一方なのだから、GDP が下がるのは当たり前のことと言うほかない。

これって労働システムの問題というより、「みんな一緒」でないと気が済まない国民的メンタリティの産物というほかない。特定個人が抜きん出ても遅れをとっても、どちらも「いじめ」の対象になってしまうのだから、なかなか脱皮できるものじゃない。

日本は妙なイメージの「老大国」への道を進んでいるのである。これからはそれをあまり悲観させずに、むしろ「成熟を遂げつつある」みたいに錯覚させながら、上手にやりくりしなければならない。そのためには、「いろいろあっていい」という多様化の価値観を育てなければならないのだが。

「経済成長こそすべて」みたいな考え方で突っ走ってきた今の自民党の政治家のアタマでは、それって無理かもしれないね。

 

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