カテゴリー「趣味」の5件の記事

2023年3月 4日

このテーブルに 100万円出す人もいるんだろうけど

Japaaan のサイトに、"日本伝統の建築技術を取り込んだテーブル「六枝掛(ろくしがけ)」" というのが紹介されている(参照)。見出しには「見よ! この存在感!」とあるのだが、私には「妙な存在感あり過ぎ」で、結局のところ「違和感全開」に見えてしまう。

230304

紹介記事には次のようにある。

本商品は、日本伝統の寺社建築技術を活用したオフィス・家庭用の応接テーブルです(ソファーと併用するタイプ)。商品名称にもなっている「六枝掛」とは、日本の寺社の重い瓦屋根を支えるための技術です。

私としては「重い瓦屋根を支える」技術なら、天井裏に目立たず奥ゆかしく存在してこその価値だと思う。それをことさらに「ソファと併用するタイプの応接テーブル」なんかに適用し、さらにいやでも構造が目に入るように天板にガラスを適用したデザインには、製作側の意図の「空回り」を感じてしまうがなあ。

値段は 100万円もするといい、元々自分で買いたくなるような金額じゃないからそれはそれで構わない。しかし訪問先で通された応接間に置いてあったりしたら、一気に「ヒイて」しまいそうだ。

そもそもの話として、これ、一体どんなソファと合わせたらいいんだろう。ソファマットの代わりに家紋入りの分厚い紫の座布団なんかを配して、思い切りキッチュなコーディネーションにしてしまえばいいかもしれないが、100万円出した上にそこまでする酔狂を求めるのは、ハードルが高そうだ。

さらに言ってしまえば、「日本伝統の寺社建築技術で使られた応接テーブル」という記事見出しには腰砕けしそうになった。せっかくの紹介記事の見出しがこんなでは、完全にケチが付いたよね。

仮に「つかられた」なんて打ち間違えたのだとしても、フツーはこんな変換結果はあり得ないから、どんな余計なことを考えたものか、わざわざ 2度に分けて入力変換したとしか思われない。いずれにしても「日本伝統」を賛美したいなら、まともな日本語で勝負してもらいたかったところである。

【同日追記】

ふと思いついて、「使られた」でググってみたところ、"「アイスの棒」2万6000本で使られたインドのアート作品が話題に" という先月配信の記事が検索された。アート系の記事でもあり、同一筆者だったりしたら、「使う」と「作る」を組み合わせたオリジナルのラ行五段活用造語だったりして。

 

| | コメント (4)

2022年5月 5日

前世紀初頭の多機能鋏を巡る冒険 その 2

昨日の続き。「多機能鋏」の使い方の残り半分(10番目から 18番目)である。我ながら物好きなことを 2日連続で書いているわけだが、まあ、連休でもあるし、気楽にお付き合い願いたい。

220505

  • 10番目は「葉巻箱開け」(Cigar-box-opener)
    一昨日の記事では、たいみちさんのラジオでの言葉通り「缶切り」と紹介させていただいたが、実際は葉巻箱の蓋をこじ開けるもののようだ。

    220505j
    開け方は、下の動画 で見ることができる。お急ぎの場合は前半を飛ばして 1分 10秒あたりから先を見るといい。

  • 「カートリッジ・エクストラクター」(Cartridge-extractor)
    この説明書の最大の問題が、この「カートリッジ・エクストラクター」という用途。直訳すれば「カートリッジ引き出し機」だが、わけがわからないので、3日前の記事では「どんなものか、謎」と書くほかなかった。

    220505k
    ところがその後、らむねさんのコメントで「銃の薬莢を取り出すもの」(参照) ではないかというヒントが与えられた。調べてみると確かに英語の "cartridge" という単語は、元々の意味が「薬莢」ということのようだし(参照)、それで正解だろう。主目的は狩猟用の銃用かも知れない。
    らむねさんに感謝である。

  • 「金槌」(Hammer)
    当初はこんな小さくて軽い物が金槌になるものかと、18通りの使い方の中で一番の無理筋に思えたが、上述の「葉巻箱開け」の動画で、蓋を開いた後に閉じる際、小さな釘を打ち込む場合があるとわかった。その程度のことなら箱の材質も柔らかそうだし、この軽さでもできるだろう。なるほど、なるほど。

    220505l
    いずれにしても、このツールの登場した頃は「葉巻」というのが重要アイテムだったようだ。昔の映画を見ると、酒場のシーンなんかタバコの煙がもうもうと立ち昇ってるし、今では隔世の感がある。

  • 「鉛筆削り」(Penknife)
    絵を見る限り、西洋人は鉛筆を削るときに刃を手前に引くようなのだね。鋸は向こうに押し出すように切るのに(参照)、まあ、いろいろなやり方があるものだ。

    220505m

  • 「ガラス・カッター」(Glass-cutter)
    我々日本人がフツーに知っている「ガラス切り」とは、どうもイメージが違う気がするが、それはこの絵では鋏の把手の部分が強調されているためかもしれない。

    220505n
    「ガラス切り」として機能するのは、その端っこに付いた小さな石みたいな部分のようだ。

  • 「ガラス・ブレーカー」(Glass-breaker)
    "ガラス・ブレーカー" というのは、フツーにはクルマなどに閉じ込められた際にガラスを割って脱出するための道具を指す(参照)。

    220505o
    画像だけではわかりにくいが、要するに分厚いガラスでも簡単に割れる道具ということなのだろう。

  • マーキング・ホイール(Marking wheel)
    把手の端に付いた歯車のようなものを転がしていくと、何かの目印としての点線が刻まれるということのようだ。

    220505p

  • 「レイジング・ナイフ」(Raising-knife)
    一昨日の記事では単に「ナイフ」と書いたもの。"Rasing-knife" の英語ではよくわからないので、試しにフランス語の ”grattoir" でググったところ、「字消しナイフ、かき削り道具」と出てきた(参照)。

    220505q
    ということは、3日前の記事でいえば、迷亭君の言う「書き損じの字を削る」道具なのだろう。これでやっと謎が解けた。

  • さて、ようやく最後の「ステレオスコープ」(Stereoscope)
    レンズが 1個だけなので、決して「ステレオ効果」があるわけじゃなく、3日前の記事では「スタンホープ・レンズ」として紹介していた。小さな穴から覗くと写真が見えるというもので、迷亭君の持ち込んだものでは水着姿の女性が見えていたらしい。ただ時代が時代なので、決してビキニとかハイレグとかだったわけじゃない(参照)。

    220505r
    これ、たいみちさんが 2020年 11月 7日の記事で紹介されている丸善の目録(参照)には、「日露戦争の寫眞を装填したれば叉以て戦勝の紀念とするに足る」なんて書いてある。時代だなあ。

というわけで、これで 18通りの使い方の謎を曲がりなりにも解くことができた。めでたし、めでたし。(ここだけの話、結構な手間がかかったよ)

ちなみに私の 5月 2日の記事では、『吾輩は猫である』で迷亭君がこの「多機能鋏」について「十四通りに使えます」と説明していることについて、ささやかな疑問を呈しているが、これも上述の丸善の目録を見て解決した。

この目録によれば、この多機能鋏シリーズには 3種類あって、実際に 14通りのバージョンもあったのだね。それどころか「25通り」なんていうバージョンもあったみたいなのだ。

そんなにチマチマした用途がたくさんあっても実際の使いやすさとしては疑問で、要するに「話のタネ」になることの方が大切だったのだろう。とはいえ、「このほかの 7通りもの使い途って、いったいどんなものなんだ?」と、新たな疑問まで湧いてしまう。

とはいえ、今日のところはこれで一杯一杯なので、とりあえず一段落とする。興味深いネタを提供してくださった たいみちさんには、心から感謝したい。

 

| | コメント (8)

2022年5月 4日

前世紀初頭の多機能鋏を巡る冒険 その 1

一昨日の "『吾輩は猫である』で迷亭君が自慢した「多目的鋏」 " という記事で触れた、1世紀以上前の多機能鋏の画像が、嬉しいことに らむねさんのコメントをきっかけに、他ならぬ たいみちさんのブログの中で見つかった(参照)。下の画像は、そのブログにあった写真を切り取らせていただいたものである。

2205040

見れば、結構シブいデザインの鋏である。この たいみちさんの記事には、18通りの使い方を示した説明書の写真も付いており、まず、前半の 9通り目までは、下の画像(説明書の上半分)に示してある。今回はこれを元に、あれこれ詮索してみたい。

 2205041

  • まず最初の使い途は、当然ながら「鋏」そのもの(Scisors)
    (用途は 4カ国語で表示されており、上から ドイツ語、フランス語、英語、スペイン語のようだが、私は英語以外ちんぷんかんぷん。まあ、すべて「鋏」という意味なんだろう)
    鋏は鋏、一目瞭然で、とくにどうこう言ってもしょうがないので、次に進む。

    220504a

  • 次は「ボタンホール鋏」(Buttonhole Scisors)
    なるほど、鋏の根元が少しえぐられているので、そのまま切っても生地の端までは切れず、ボタン穴が開くようになっている。

    220504b
    便利そうではあるが、穴をきちんと平行にし、サイズも揃えて切るには、端布で練習してからの方がよさそうだ。

  • 「パイプ・トング」(Pipe Tongs)
    一昨日の記事では、ラジオでのたいみちさんの言葉に沿って「ガスパイプ・トング」としていて、もしかしたらガスライター関連の道具なのかとも思ったが、液化ガスを使ったライターが世に出たのは昭和の御代になってから(参照)のようなので、そうじゃない。

    220504c
    ドイツ語の "rohrzange" でググると、「配管用のプライヤー」と出てくる(参照)ので、「パイプ・レンチ」と同様の、細いパイプを取り付けるのに使う配管用具と思うほかないようだ。

  • 次に「葉巻カッター」(Cigar-cutter)
    葉巻の端をカットして吸い口を作るもの。私なんかは「元々鋏なんだから、それでフツーに切ればいいじゃん」と思ってしまうが、それだと吸い口が潰れて興醒めなのかもしれないね。

    220504d
    西部劇なんかでは、歯で噛み切ってペッと吐いたりする場面もあるが、それは「お下品」ということなのだろう。

  • 「ペンチ」(Wire-cutter)
    『吾輩は猫である』で漱石は、迷亭君に「針金をぽつぽつやる」 なんて、”wire-cutter” の単純直訳的な言い方をさせている。当時はまだ「ペンチ」というフランス語由来らしい外来語(参照)が定着していなかったのかもしれない。

    220504e
    ちなみに力が要るだけに、鋏の根元を使うようだ。

  • 「定規」(Ruler)
    鋏の横の直線部分だが、こんなんじゃ短すぎてあまり実用にならないと思うがなあ。

    220504f
    もしかしたら、タイプライターで打った文書のアンダーラインを引くなどの作業を想定していたのかもしれない。手書きの文書ならフリーハンドで線を引いて済ませるところだけど。

  • 「物差し」(Measure)
    定規の裏の部分に目盛りが付いているだけみたいだ。これもやはり、長いものは計れないよね。小物専用だ。

    220504g

  • 「爪ヤスリ」(Nail-file)
    爪ヤスリを英語で Nail-file なんて言うとは、初めて知った。書類などの "file" とは同音異義語で、「推敲」という意味も併せ持つらしい (参照)。一つ利口になった。

    220504h

  • 「ドライバー」(Screw-driver)
    ネジの溝が十文字の「プラス(+)ドライバー」なのか、あるいは「マイナス(−)ドライバー」なのか気になったが、調べてみたところ、プラス・ネジがこの世に登場したのは 1935年頃(昭和初期)のようなので(参照)、『吾輩は猫である』の時代にはあったはずがない。

    220504i
    マイナス・ネジしかない時代のことなので、「マイナスねじ用」みたいな断リ書きをする必要もなかったわけだ。なるほどね。モノゴトは調べてみるものである。

ふう、これでやっと半分。18通りの使い方を全部やったら長くなりすぎるので、残りは明日付とさせていただく。

 

| | コメント (0)

2016年8月25日

真夏の古都

この夏、京都に 2度行った。京都が一番暑い時期である。どちらも仕事上の出張だが、日程的に少し自由な時間が取れたので、ついでに京都観光をしようと思っていた。とはいえ、京都に着くまでどこに行くかは決めていなかった。

Img_6365

とはいえ、真夏の京都のど真ん中を歩く気にはなれない。そんなことをしたら暑くて疲れ果ててしまう。少なくとも北山よりももっと北に行こうと思っていた。それなら、自動的に比叡山、鞍馬/貴船、大原の 3カ所が候補に上る。で、今回は比叡山と大原ということにした。

京都という所は千年の都ではあるが、ちょっと外れると田舎の風情がある。とくに洛北は「鯖街道」と呼ばれる、日本海で獲れた鯖が京都に運ばれるひなびた道がある。京都府は日本海に面しているのである。

真夏の鯖街道は、時が止まったような不思議な感覚に襲われる。「ちょっと外れたら、もう田舎」という風情が、実は京都の魅力の一つなのだと思う。本数の少ないバスを待つ感覚は、同じ田舎でも東北とはまったく違う。都からちょっと外れた田舎というのは、独特の雰囲気だ。

2度目の訪問で大原を訪ねた翌日は、奈良の斑鳩を回った。ここもまた、十分に田舎の雰囲気である。ただ、さすがに平城京であり、京都よりさらに古い歴史を感じさせる。奈良と京都は、ローマとパリぐらいの違いがある。

夏というのは、古都の白い光の中で凍てついた歴史感覚を辿るのに最高の季節だ。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年6月 9日

オセロ・ゲームのアプリ

基本的に、将棋だのチェスだの囲碁だのいう類のゲームにはとんと弱い。将棋とチェスは、駒の動かし方ぐらいは辛うじて知っているが、ただそれだけのことで、初心者の域にも達していない。

そもそも、最初に駒が並べられた状態がとても美しく感じられて、「この素敵なバランスを、どうしてわざわざ崩さなければならないんだ?」なんて思ってしまうほどの「平和主義者」なので、てんでお話にならない。

囲碁となると、いくら説明してもらっても、基本的なルールというか、石をどうおくとどういう意味になるのかさえ理解できない。囲碁好き同士が対戦しているのを眺めても、どっちが優勢なのかすら皆目判断できず、ただ「ファンタスティックだなあ」と思うだけである。

とまあ、これほどまでに盤面に駒や石を置くゲームには才覚がないが、なぜかオセロだけは嫌いではない。愛用の iPhone にも「オセロ」という無料アプリをインストールしていて、電車で移動の時など、ちょっとした時間つぶしに重宝している。

このアプリは難易度が "EASY" "MEDIUM" "HARD" の 3段階に設定できるようになっていて、"EASY" ではあまりに難易度が低くて楽勝しすぎるので、長らく "MEDIUM" というレベルで楽しんでいた。ところが、これでも滅多に負けずにすむようになり、だんだん物足りなく感じ始めていたのである。

ただ、"HARD" に設定してしまうと、iPhone 側が急にやたらと強くなって、全然歯が立たない。"HARD" と "MEDIUM" の差は、ほとんど天と地ほどの開きに感じられるのである。それで、「このゲーム・アプリには、自分に最適のレベルが設定されていない」 と感じて、しばらく手を付けないでいた。

ところが、先日の名古屋出張で、新幹線の中で久しぶりにこのアプリを立ち上げ、"HARD" の設定で対戦してみたら、なんと、いきなり僅差ではあるが勝ってしまったのである。ただ、これはたまたま運がよかっただけのようで、それから先はボロ負けが続いた。

しかしたまたまの幸運のためとはいえ、"HARD" の設定で 1度は勝ってしまったことが忘れられず、帰りの新幹線の中でもトライしてみたら、10回ぐらいやって 2回勝ってしまった。それまでの、「全然歯が立たない状態」からは脱出できたようなのである。

そんなわけで、この 2~3日は、10回対戦したら 2回ぐらいは僅差で勝って、3~4回は僅差で負けるというレベルにまで向上した。ただ、残る 5~6回はやはり大差でボロ負けするので、それほど自慢できるほどのものではない。

私はこうしたゲームをするにも、あまり勝負に執着して入れあげるという性格ではないようで、電車内で 30分ぐらいの間に 10回ぐらい勝負すると 「もうたくさん」 という気分になってしまい、それ以上集中することができない。だから、これから先もそれほどの上達は見込めないだろうと思う。

とはいえ来年か再来年ぐらいに、もしかして "HARD" の設定でも勝率が 5割以上になったりしたら、人間との対戦でも結構勝ちを収めることができるぐらいの腕前になっているかもしれない。そうなれたら、誰かをカモにして威張ってやろうかと思う。本当にそのレベルに達することができるかどうか、あまり自信はないが。

 

| | コメント (2) | トラックバック (0)