カテゴリー「書籍・雑誌」の19件の記事

2022年4月21日

NY 図書館による「禁書」の復権

共同ニュースに "NY 図書館、禁書 4作品貸し出し  「ライ麦畑でつかまえて」も” という 4月 18日付の記事がある。ただ申し訳ないけど、私にはこの記事の意味がよくわからなかった。

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記事の冒頭は、こんな文章である。

【ニューヨーク共同】全米最大の地域図書館であるニューヨーク市のニューヨーク公共図書館が、米国内の学校や図書館で禁書とされた書籍 4作品を、ネットを通じて米国のどこからでも借りられるようにする活動を始めた。今月 13日から 5月末まで。

ここで太文字にした「ネットを通じて米国のどこからでも借りられるようにする活動を始めた」という部分だが、これ、さらりと読み進めることができる人っていないんじゃなかろうか。NY 公共図書館の本を「ネットを通じて米国のどこからでも借りられる」だって?

せっかくネットを通じるのに、紙の本を借りるのか? あまりにもナンセンスで、しかもはっきり言って、まともな運用が不可能な話じゃないか?

というわけで、米国での元記事を探そうと "New York public Library banned books" というキーワードで検索したところ、Open Culture というサイトの ”The New York Public Library Provides Free Online Access to Banned Books: Catcher in the Rye, Stamped & More” という記事が見つかった。

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共同ニュースの記事では、禁書になっていた 4作品のうち『ライ麦畑でつかまえて』しか紹介されていないが、こちらの記事では 4作品の表紙の画像まで紹介してある。しかるべし、しかるべし。

しかも基本的な問題として、共同ニュースでわからなかった疑問は、この記事の見出しを見るだけですぐに解決された。"Probides Free Access" というのだから、「米国のどこからでも借りられる」というのではなく、「ネットで自由にアクセスできるようにする」ってことじゃないか。

しかもこのニュースは、"SymplyE" というアプリを通じたアクセスができるとしており、それ以外の限定条件があるとは読み取れない。ということは、「米国のどこからでも」というより、世界中からアクセスできるんじゃあるまいか。もう少しきちんとした翻訳をしてもらいたいものである。

ところで、問題の 4作品というのは、以下の通り。

Speak | Laurie Halse Anderson (Square Fish / Macmillan Publishers) 

King and the Dragonflies | Kacen Callender (Scholastic)

Stamped: Racism, Antiracism, and You | Jason Reynolds and Ibram X. Kendi (Little, Brown Books for Young Readers / Hachette Book Group)

The Catcher in the Rye | J.D. Salinger (Little, Brown and Company / Hachette Book Group)

"The Catcher in the Rye" 以外の 3冊は全然知らないので、ちょっと調べてみたところ、"Speak" は金原瑞人訳で『スピーク』として出版済み(参照)だが、"King and the Dragonflies" "Stamped: Racism, Antiracism, and You" の 2作品は、日本語訳の情報は見つからなかった。

ちなみに "The Catcher in the Rye" はご存知の通り、野崎孝訳(『ライ麦畑でつかまえて』)と村上春樹訳(『キャッチャー・イン・ザ・ライ』)が出ている。

ただ、私は申し訳ないけど、野崎訳の最初の 1ページの立ち読みで違和感を覚えたので、ペーパーバックの原文の方で読んでしまった。後になって村上訳も立ち読みしたが、悪いけど印象は似たようなものだった。

この小説、原文は確かに下品なスラング満載ではあるけど、日本語の翻訳よりはずっと馴染めた。この件に関しては2007年 3月 22日付け「翻訳の難しいアメリカ小説」という記事で触れている。

いずれにしてもこれら 4作品は、「下品なスラングが多い」というような理由で禁書扱いにされてしまっているらしいが、これはかなりヤバい話だとは思う。その意味でニューヨーク公共図書館の試みには拍手を送りたい。

 

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2022年2月14日

「同定」・・・名前を知ることの大切さ

ペレ出版の本に『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか?』というのがあり、著者の須黒達巳氏が出版元のサイトでその解説を書かれている(参照)。これがなかなかおもしろい。

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生きものの種を確定させることを、専門用語で「同定」というのだそうだ。ところがこの「同定」というのはなかなか難しい。図鑑とにらめっこしても、似たようなのが多くてなかなか特定に、いや、同定に至らない。

著者の須黒氏は、「勤務先の敷地内で昆虫とクモ800種以上を同定してきた、同定大好き」な人だそうで、そうした自分をこんな風に表現している。

これはもう、ある種病的なほどに「とにかくこいつの名前を知りたい」という衝動が湧いてきます。まさに「君の名は。」です。

そしてこの本は、「なぜうまく同定できないのか」「どういうプロセスで同定ができるようになるのか」を真剣に考えて書かれたものということである。

この「同定」ということに関しては、私ももう一つのブログ「和歌ログ」で、裏の川にやってくる水鳥たちを歌に詠み込みたくて、鳥類図鑑で名前を調べたりするのだが、なかなか難しく感じている。例えば「カモ」と一口に言っても、カルガモ、マガモ、コガモ、ヨシガモなど、細かく言えばキリがない。

しっかりと同定できれば、自分の読んだ歌に責任も持てるし、愛着も湧く。しかし、「多分、マガモなんだろうなあ」程度だと、「間違ってても、責めないでね」みたいに、ちょっとおずおずと詠んでしまうことになり、確信的になれないのだ。

これ、生き物の名前だけとも限らない。須黒氏が「名を知らぬものは、視界に入っても『景色の一部』として処理されます」と書かれているように、自分の周囲と意識的な繋がりがもてないのである。

旅をしている時でも、間近に見える山の名前がわかればその土地との結びつきが強まるが、「単なる山」と思っている限りは、通り過ぎれば終わりである。今どきは故郷の山々の名前さえおぼつかない人が少なくないようだが、それってかなり残念なことだと思う。

自分の生まれた土地との結びつきが希薄というのは、人生そのものも薄くなってしまうような気がするしてしまう。そんなわけで、生物だけでなく、いろいろなものの「名前を知る」ということは、対象に自覚的にアプローチする重要な一歩なのだね。

例えば自動車マニアは内外の車種にやたら詳しいし、グルメ同士の会話には私の知らない食い物の名前(ほとんどがカタカナ)がぞろぞろ出てくる。私はこの 2つの分野はからきしダメなので、「すげえなあ」と思うほかないのだが。

 

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2021年3月 6日

商品の分類がメチャクチャな書店

もう呆れてしまっているので、しっかりと店名を出してしまうが、茨城県の「イオンタウン守谷」というショッピング・センターの 2階にある "LIBRO" という書店である。この店の雑誌売り場の商品分類がメチャクチャなのだ。

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「パソコン・スマートフォン」という表示の下に、野球、ゴルフなどのスポーツ関係の雑誌が堂々と並び、その隣の「パソコン」という表示の下には、キャンプ、釣り、サイクリングといったアウトドア・スポーツの雑誌が並んでいる。

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さらにその隣の旅行ガイド関連のコーナーでは、「海外ガイドブック」という表示の下に「日本の名城」だの「絶景城めぐり」だの「皇居をあるく」だのがしっかりと並ぶ。そしてこの写真のほかにも、「こりゃ、一体何じゃ?」という表示が数カ所ある。

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実はこのメチャクチャさ加減については、去年の初め(あるいはもっと前だったかな?)頃から気付いていたが、当然「そのうち修正されるだろう」と思っていた。ところが 1年以上にもわたってそのままなのである。よくまあ、これで店員が自分で気持ち悪くならずに済んでいるものだと思ってしまう。

こうした書籍の分類に関しては、多くの書店で「ビミョーなズレ」みたいなことはよく見られるし、私としてもその程度のことでイチャモンをつけようという気にはならない。しかしここまでの素っ頓狂が、1年以上にわたって放置プレイとなると、いくら何でも呆れてしまう。

というわけで、ここまで来ると「善処を求める」なんていうのも馬鹿馬鹿しくなって、「もう、ブログのネタに困ることがあったら晒させてもらうもんね」と、スマホで撮影しておいたのだった。

以上。

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2021年1月22日

「おじいさんの本買います」という広告

Twitter で白江幸司さんという方が「おじいさん予備軍に衝撃が走る広告」として、吉祥寺の古書店のチラシを紹介しておいでだ。「おじいさんの本 買います」というもので、想定されるジャンルがズラリと書き連ねてある。

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なるほど、まさに「おじいさん予備軍」には衝撃のジャンルだ。こんな具合である。

人文書:哲学、現代思想、構造主義、分析哲学、印哲、東洋思想、日本思想、神道、修験道、陰陽道、キリスト教、神秘学、占い、漢方ヒーリング、超心理学、反体制、右翼、左翼、差別、公害、フェミニズム、犯罪、日本史、世界史、地理、民俗、郷土、江戸東京。

科学書:数学、物理、生物、建築、自然科学史、社会学、人類学、認知科学、生と性と死、病と身体、精神医学、カウンセリング、精神分析、ユング。

芸術書:画集、写真集、美術展図録、ファッション、茶道、書道。

サブカルチャー:戦前の児童雑誌、古今東西の絵本、料理や雑貨のムック、古いまんが、60 70年代文化、対抗文化、映画、演劇、音楽、クラシック・落語・朗読などの CD、学術・文芸の文庫、超自然など不思議なもの、映画のパンフレットなどのコレクションアイテム

う〜む、こりゃ身に覚えがありすぎだ。

ふゆひー 9 さんが "ジャンルが羅列されるなかで、目を惹く「ユング」(笑)" とコメントをつけておられる。個人名で挙げられているのは、確かにユング 1人だ。

これには思わず反応してしまい、 "ウチは「ライヒ」まであります" なんてサブコメントしてしまった(参照)。上の画像左側真ん中の 『性と文化の革命』(中尾ハジメ・訳)がそれで、今はさすがに絶版のようだが。

その右上の『構造と力』(浅田彰・著)は哲学書としては異例のベストセラーだから、本棚に眠らせている人が日本中にいる。左下は米国のカウンター・カルチャーを代表するジェリー・ルービンの "Do It!" だが、これはさすがに同世代の人間の本棚でもあまり見受けない。

「そういえば、ジェリー・ルービンって、死んじゃったはずだなあ」と思って改めてググってみると、「1994年、ロサンゼルスにて交通事故のため死去」とある(参照)。

そうそう、このニュースを聞いた時はかなり驚いたんだった。そのくせ、その18年後に、思い出したように こんな記事 を書いた時には、彼の死を忘れていたようなのだが。

いやはや、まことにもってこの世は諸行無常である。

Namu

 

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2020年9月13日

『安倍晋三 沈黙の仮面』を買うのは止めた

下の画像は、Amazon にある『安倍晋三 沈黙の仮面』という本の紹介ページの一部である。「その血脈と生い立ちの秘密」というサブタイトル付きだ。

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この本は著者の野上忠興氏が安倍首相の生い立ちを徹底取材して書き上げたもので、とくに乳母兼教育係を務めた久保ウメさんという女性の証言が特筆とされる。

安倍首相批判を展開している私としては、彼に関してしっかり知るために、一応はこの本を読んでおくべきなのではないかという気がして、先日ちょっと調べてみた。発売元の小学館のサイト(参照)には、この本の内容を紹介したページがあるので、ちょっと引用してみよう。

甘えん坊で頑固、自分の思い通りにならないと癇癪を起こした晋三少年は、ウメを手こずらせた。いたずらなら、まだいい。問題は学校の宿題をやらないことだったという。

「『宿題みんな済んだね?』と聞くと、晋ちゃんは『うん、済んだ』と言う。寝たあとに確かめると、ノートは真っ白。(中略)

私がかわりに左手で書いて、疲れるとママに代わった」(ウメ)

とまあ、こんなような少年だったらしい。宿題なんて私もあまり真面目にはやらなかったが、乳母に代わってやってもらうなんて、かえって不愉快なんじゃないかなあ。まあ、私には乳母なんていなかったけどね。

成蹊大学に進学すると、「アルファロメオで通学し、友人と雀荘に通い詰め、学習院大のアーチェリー部との合コンに青春を燃やした」というのだから、よく言えば「いいご身分」、率直に言わせてもらえば「どら息子」である。

その頃、ワセダに通いつつアルバイト三昧していた私の耳にも、「慶応、成城、成蹊の学生なんてクルマで通学してるやつが多くて、『妖怪・岸信介』の孫なんて、派手な外車でブイブイ言わしてるらしい」なんて噂が届いていたよ。これって、本当だったんだね。

成蹊大学卒業後は南カリフォルニア大学(USC)に留学するが、結果は次のようなものだ。

1年足らずで挫折し、政治学科の単位はゼロ。ホームシックから連日、日本の自宅にコレクトコールをかけ、1か月の電話代が10万円を超えることが続いたため、父・晋太郎氏が「それなら帰国させろ」と激怒したこともあった。

せっかく米国西海岸まで行って、一体何をしてたんだろう? 私が若い頃にカリフォルニアに留学なんてさせてもらったら、やることがありすぎて、自宅に長々とコレクトコールするヒマなんて到底なかったと思うがなあ。

祖父の岸信介に猫かわいがりされ、できすぎの乳母に世話されたために、お世話係か、ツルんでくれる「お友達」が近くにいないと、どうにもならない人間になってしまったんだろう。この紹介文を読んだだけで、これまで思っていた以上に「お粗末なオッサン」との印象が強まる。

成蹊大学時代の教授である加藤節氏が「安倍さんは 65歳という年齢の割には、とてもチャイルディシュ(子どもっぽい)だという印象です」(参照)と語るのもむべなるかなである。

そして私としては、1,540円(中古でも 921円)も払ってこんなに次元の低いオッサンの話を読むのは馬鹿馬鹿しくなってしまった。同じ金を払うなら、もっとまともな話の本を読みたいものではないか。

というわけで、Amazon に『安倍晋三、沈黙の仮面』を注文するのは止めとくことにした。著者の野上忠興さん、ごめんね。以上、おしまい。

 

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2020年8月 3日

"Come Gather 'Round People" (Wherever You Roam...)

昨日の朝の NHK ラジオで「マイあさ」という番組を聞いていると、ゲストに今年度の芥川賞を受賞した高山羽根子さんが登場していた。彼女の受賞作は『首里の馬』だが、昨年に芥川賞候補作となったのは、『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』という作品だという。

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私は恥ずかしながら昨年度の候補作については情報をもっていなかったのだが、『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』と聞けば、それはもう間髪を置かず、自然に "♫ wherever you roam..." と口をついて出てしまう。そう、ボブ・ディランの "The Times They Are A-Changin" (『時代は変わる』)だ。

というわけで、そこから先は完全にオートマティックな反応で、すぐに Amazon のサイトにアクセスして購入してしまった。芥川賞受賞作の『首里の馬』を読む前に、まずはともかく『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』を読まなければ、落とし前がつくまいと思ったのである。

で、今日は朝から所用であちこち出かけ、帰宅は午後 3時過ぎになった。途中、iPhone で Amazon の「注文履歴」を見ると「2020/08/03 に配達しました」と表示されている。最近は便利な世の中になったものだ。帰宅して郵便受けから Amazon の小さな包みを取り出し、早速読み始めた。

1時間足らずで一気に読み終わり、「これは当たりだったな」と思う。最初から最後まで、徹頭徹尾「フツーの現実感」というものがないのに、常にボブ・ディランの『時代は変わる』がバックグラウンドで聞こえるような「既視感」に、濃厚に彩られている。まるで自分の経験したことのように錯覚しそうだ。

これから読む人のために、敢えてこれ以上は書かないことにする。そして私としてはまた、ほぼ自動的に Amazon で『首里の馬』を購入してしまったよ。明日届くはずだ。

【2020年 8月 4日 追記】

ちなみに "Come gather 'round people" というのは、その昔に流行った『受験生ブルース』の出だし「おいで皆さん 聞いとくれ」になる。

 

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2017年1月25日

国民の 61%が 『坊ちゃん』 を読んでいるというのだが

私は 2013年 5月に 「漱石文学って、もっと読まれてもいいと思うのだが」 という記事の中で、「『坊ちゃん』 を読むぐらいは日本人の常識で、少なくとも 3人に 2人は読んでいるものと信じていた」 のだが、高校に入って 「クラスの半分もいないみたい」 と気付いたと書いている。

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ところが、ちょっと古い記事で恐縮だが、昨年 10月の毎日新聞の 「読書世論調査」 という記事の見出しに、『坊ちゃん』 は国民の 61%に読まれているとある。もしそれが本当なら、「少なくとも 3人に 2人は読んでいる」という私の中学校時代の思い込みはほぼ正しかったことになるが、にわかには信じられない数字だ。

毎日新聞の記事をきちんと読んでみてわかったのだが、『坊ちゃん』を読んだことがあるという回答が多かったのは、国語の教科書に載っているからということらしい。記事中から引用しよう。


「読んだことがある」 人の多い作品は、小中学校の教科書で取り上げられてきた。1906年に発表された「坊っちゃん」は小中学生向け国語、「アンネの日記」は 52年に日本語版が刊行され、中学生向けの国語や英語の教材に採用。「坊っちゃん」は現在も中学国語の教科書に載っており、国民的文学といえる。

なんだ、そうだったのか。私の使っていた中学校時代の国語教科書には 『坊ちゃん』 は載っていなかった(『アンネの日記』 は載っていたと思うが)ので、そんなこととは少しも知らなかった。しかし教科書に採用されているのは、『坊ちゃん』のほんの一部だろう。

どの部分が採用されているのかと思い、ググってみると、WKIBOOKS というサイトに 「中学校国語/現代文/坊っちゃん」 というページがあり、それによると、「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」という有名な書き出しから、坊ちゃんが松山に旅立つために汽車に乗ったところまでである。

こんな冒頭の部分だけ教科書で読んで「読んだことがある」なんて言う人は、こう言っちゃナンだが、ちょっと図々しい。『坊ちゃん』が実際におもしろくなるのはここから先のことなのだから、ぜひ最後まで読んでみることをお薦めしたい。

 

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2013年12月 5日

ビギナー向け最強の野鳥図鑑

一昨年の 11月に「花の図鑑」という記事を書いて、『花の名前の手帖』(ブティック社刊、写真と文: 夏梅睦夫)をおすすめした。春編・夏編・秋冬編の 3分冊で、収められている花の種類が多く、しかも季節別、色別で調べられるので、とても便利である。アマチュア向けとしては、これが最強の図鑑だと私は思っている。

ただ、この 3分冊は既に絶版のようで、かなり大きな書店でも 3冊揃っているところは稀だ。私は春編だけは書店で購入したが、夏編と秋冬編は Amazon で古本を購入した。今となっては、3冊とも Amazon で古本を買うのが一番手っ取り早いと思う。

なんで花の図鑑なんかが必要なのかというと、私がこのブログの他に「和歌ログ」なんていう酔狂な文芸サイトを運営していて、毎日和歌なんてものを詠んでいるからだ。和歌をやろうとすると、花の名前を知らないでは済まないのである。この図鑑のおかげで、花の名前に疎かった私も、今では人並みまではこぎつけることができた。

同様に、鳥の名前も知らないでは済まないのだが、これまでは手頃でしかも調べやすい鳥の図鑑が見つからなかった。しかし、ようやく見つけたのである。『山野の鳥』『水辺の鳥』という姉妹編で、いずれも日本野鳥の会の編集・発行によるものだ。

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しかも、どちらも本体価格 600円という手頃さで、コンパクトな作りなので、どこにでも持って行ける。そして見分け方がとてもわかりやすく解説してある。立ち読みした他のどんな図鑑よりもわかりやすい、かなりありがたいものなのである。ビギナー向けとしては、やはり最強だと思う。

この図鑑を入手して初めてわかったのだが、私は知らず知らずのうちに、野鳥の名前は結構知っている人になっていたようなのである。これはひとえに、30年以上前につくばの地の田園地帯に転居して、ごく自然に鳥たちに接してきたおかげである。

花でも鳥でも、親しむための第一歩はその名前を知ることだと思う。名前を知って、一歩「お近づき」になれる。名前を知ってお近づきになれなければ、歌に詠むこともできない。その意味でも、図鑑は手放せないものになっている。

 

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2013年3月 6日

iBooks 日本版スタートと、Kindle との違い

Apple が日本版 iBookstore の開設を正式に発表した。(参照

2~3日前から「ひっそりとオープン」というニュースが、これまたひっそりと伝えられていて、iBook アプリの "store" ボタンをクリックしてもいつもと変わらないが、次に「ランキング」をクリックすると、日本版電子書籍がずらりと出てきていた。それで「ああ、始まりつつあるんだな」と思ってはいたのである。

そして今日の正式発表以後は、"store" ボタンをクリックしただけで、日本版のストアが表示される。さらに「カテゴリ」ボタンをクリックすると、「ビジネス/マナー」「フィクション/文学」「マンガ」「ミステリー/スリラー」「ライトノベル」の 5カテゴリーが表示される。

ちなみに「ミステリー/スリラー」と「ライトノベル」は文学扱いされていないのが興味深い。確かにこの 2つを「フィクション/文学」の中に入れてしまうと、オーソドックスな文学ファンにとっては探しにくくてうっとうしいだろうから、しかるべしである。ただ Kindle の充実したカテゴリーに比べると、これっぽっちではまだまだ見劣りがする。

とはいえ Kindle の場合は、あくまでも Amazon のサイトの中の「Kindle 本」に行って選んだり購入したりするというシステムで、Kindle アプリは「閲覧」のためと、はっきり切り分けられている。一方 Apple の場合は、PC 版 iTunes からは iBooks に入れるが、iPhone アプリの iTunes からは、今のところ入れない。

この辺りが、Amazon と Apple のコンセプトの基本的な違いのようだ。Amazon の場合は、とにかく Amazon のサイトで買ったものを、Kindle アプリで読む。Apple の場合は、電子ブックを買って読むなら、わざわざ iTunes まで行かなくても iBooks だけでこと足りる。

元々書籍からスタートした Amazon と、音楽からスタートした iTunes の違いなのかもしれない。いずれにしても、Windows 版の iTunes は重いので、iBooks だけで済むのはありがたい。

 

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2012年10月26日

Kindle ストアで、さっそく 2冊購入した

Kindle ストアが日本でもオープンしたので、私もさっそく iPhone アプリの "Kindle" をインストールしてみた。こういうことに関しては、私はちょっとだけ新しもの好きなのだ。「ちょっとだけ」というのは、やってはみるけど、すぐにはまりまくったりはしないということだ。

例えば私は、2007年 12月という、比較的早い時期に Twitter のアカウントを取得しているが、ぼちぼち実効的に始めたのは 2010年 1月からである。この間の約 2年間は、自分がTwiiter のアカウントを取得したことすら忘れていたので、改めて始めようとした時に、「Twitter の中に自分の偽物がいる!」と思ってしまったことを、記事にしている (参照)。

というわけで、私は iPhone と iPad に "Kindle" をインストールしてはみたが、実際に 電子ブックを 10冊も 20冊も(電子ブックの場合、「冊」といっていいのかなあ?)買いまくったかといえば、そんなことはない。なぜかといえば、買いたい本があまりないからである。

現状の日本版 Kindle ストアは、郊外のステーションビルによくある書店みたいなもので、ベストセラーとハウツー本とコミックしか置いてないみたいな印象なのだ。よく言われることだが、本好きという種族は、ベストセラーをあまり買わないのである。だから、ステーションビルの書店では買う本が見つからないと同様、Kindle ストアでも見つからない。

書籍のカテゴリー分けにしても、例えば「人文・思想 - 文化人類学・民俗学」というカテゴリーを覗くと、トップに表示されるのは "あなたの 「ふつう」 はだいじょうぶ? 女のマナー常識 555 (PHP文庫)"、"お墓は、要らない (学研新書) "、"お嬢様ルール入門 正統派マナーから気になるライフスタイルまで (PHP文庫) " というようなことで、ちょっと脱力だ。

もっとも、ステーションビルの書店と違うのは、「0円」という値段の品揃えが結構あって、これは「青空文庫」的なコレクションである。こっちの方がずっとおもしろい。私はさっそく、和辻哲郎の「古寺巡礼」をダウンロードして読み始めた。これが、私の Kindle での最初の購入である。(購入といっても、無料だが)

新・リストラなう日記 たぬきちの首 のたぬきちさんは、「電子書籍で読まれるべきは、紙ではもう手に入らない本なのだ」と喝破しておられて、本日付の記事で、深沢七郎・著『風流夢譚』の Kindle 版が出ることを期待しておられる (参照)。

そして、さすが Amazon である。その日のうちに出ている (参照)。著作権はまだ切れていなくて、315円の値段がついているが、たぬきちさんのおっしゃるように、これが Kindle のベストセラーになったら素敵だろう。

そう思って、私は既に紙媒体の海賊版『風流無譚』を持っている(蛇の道は何とやらである)のだが、ついぽっちりしてダウンロードしてしまった。まあ、315円なら、スタバのコーヒー 1杯分くらいだからいいだろう。これが、私の Kindle での 2冊目の購入となったのである。

 

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