Japaaan に ”圧倒的な黒!プラチナ万年筆が究極の黒さを目指したという万年筆用インク「超黒」誕生” という記事がある。とにかく「究極の黒さ」の万年筆用インクなのだそうだ。

悪いけど、このタイトルを読んだ私としては、「へえ、それがどうしたの?」と思うばかりだった。というのも、私は「万年筆」なんてものはこの 50年近く(つまり、半世紀近く)使ったことがないのだよね。自分の過去ログを検索してみたら、6年半前の記事に次のようにある(参照)。
実際、20歳の頃に金持ちの親戚にもらった高級万年筆は、一度も使ったことがない。持ち歩いたりしたら、絶対に 3ヶ月以内にどこかに置き忘れる。それで引き出しの奥にしまったままで、それはつまり「ない」のと同じことである。
この時は「引き出しの奥にしまったまま」なんて書いたが、実は、今となっては探してもどこにも見当たらない。「どうせ絶対に使わない」ということで、あっさり処分してしまったような気もする。
ちなみに Japaaan の記事には、この「超黒」インクについて次のように書かれている。
視認性が良く、はっきりと引き締った黒で記録や、思い出を紙面に書き記すことができます。又、紙面への滲みが少なく、筆記後の耐水性も高いので、長期間保存したい手紙や日記などへの筆跡も褪色を抑え保管に最適。
引用の最後の部分、言いたいことはわからないでもないが、言葉のつながり具合が少々混乱している。万年筆にこのインクを入れ、「はっきりと引き締まった黒」でこんな文章を書くより、きちんと整理された文をボールペンで書いてくれる方が、読む方にはしっくりくると思うがなあ。
ちなみに「視認性が良く」とは言うが、ごくフツーのボールペンで書いても、「視認性」に問題があるなんて聞いたことがないし、今どきは手書き文書をことさら長期間保存するなんてニーズもそれほど大きくないだろう。それに何より、 「60ml 5,500 円(税込)」という価格もべらぼうだ。
私の場合、かなり前から「メモ」を取る以外で「手書き」をすることはほとんどない(使うのは三色ボールペン)。日頃のビジネスに必要なドキュメントはほとんど PC で作成し、それをインターネットで送付するのがフツーの世の中になってしまったのだから、当たり前と言えば当たり前だ。
「必要事項を手書きで記入し、署名捺印して提出しろ」というお役所の世界もあるにはあるのだが、それにしたって「記入にあたっては、保存上の都合から万年筆を使用し、インクはプラチナ万年筆の『超黒』を推奨する」なんてことには、なるはずがない。安物のボールペンで充分だ。
結局のところ、この「超黒」という商品は、究極の「趣味のもの」なんだろうと思うほかない。
ということは「視認性」とか「長期間保存」なんていうような実用面のメリットをいくら言い立てたところで、あまり意味がない。マーケティングの視点からすれば、「趣味性」や「こだわり」というポイントを強く訴求する方が得策なんじゃないかなあ。
要するに、「他のインクじゃ得られない、胸の空くような『真ぁっ黒さ』ですっ!」ということなんだから、そこにこだわりたい人はしっかりとこだわるのだろう。
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