図書館でボドゲやる人という方が、今の学生は「忠臣蔵」も、お岩さんとお菊さんも知らないということに驚いて tweet されている(参照)。

ただ、「忠臣蔵」を知らないのは決して今の学生だけではないと思う。大学で歌舞伎論なんて専攻した私はさすがに「忠臣蔵」にはやたら詳しいが、私の同年代(70歳前後)でも「忠臣蔵」関連の知識は驚くほど薄い。せいぜい江戸時代の敵討ちの話という程度にしか知らないんじゃなかろうか。
お岩さんとお菊さんとなると、「恨めしや伊右衛門殿〜」(四谷怪談)がお岩さんで、皿を「一枚〜、二枚〜」(皿屋敷)と数えるのがお菊さんと迷わず言える人は多分半数以下だ。そして「皿屋敷」には播州版と番町版といったバージョンがあると知っている人はもっと少ない。
さらに言ってしまうと、鶴屋南北の『東海道四谷怪談』という外題は、お岩さんのお話が「忠臣蔵」と関係があるのだよということを暗示している(参照)。というわけで、忠臣蔵とお岩さんが関連付いたところで本題に入ろう。
5日前の 12月 14日が「忠臣蔵の討ち入りの日」だったいうのは、今や常識とも言えなくなった。しかし私より上の世代にとっては当たり前の知識のようで、「山鹿流陣太鼓」というキーワードとともに知っていなければ、三波春夫の「俵星玄蕃」などはチンプンカンプンだろう。
私はこのブログの 5日前の「マルチタスクよりシングルタスクの方が、仕事がはかどる」という記事に、読む人の半分以上が「はぁ?」になってしまうかもしれないとは重々承知しつつも、こんなことを書いている。
ところで今日 12月 14日は「忠臣蔵討ち入り」の日だが、歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』を見ると、途中で勘平が切腹したり、お軽のいる祇園一力茶屋で大星由良助が酔い潰れてみたりと、討ち入りとは直接関係のない筋が盛りだくさんで結構な「マルチタスク」である。
「忠臣蔵」のサイドストーリーである「お軽勘平」のくだりなんてことになると、私の同年代の連中に聞いてもほとんど知らないと思う。知っているのは歌舞伎ファンぐらいのものだ。

そもそも「大星由良助」にしても、「何それ? 大石内蔵助の間違いでしょ!」と言われてしまいそうだ。ただこれ、歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』では「大星由良助」ということになっていて、 詳しくは 14年前の "物語としての「忠臣蔵」と、史実としての「赤穂事件」" という記事で触れてある。
これは歌舞伎や文楽が大きな庶民娯楽であった江戸時代に、コンテンポラリーな事件をそのまま芝居にすることは御法度だったことによる。だから、元禄の御代にあった赤穂浪士の討ち入り事件を、「いえいえ、これは太平記の時代のお話です」という建て前で演じたのだ。
というわけで、「浅野内匠頭」と「吉良上野介」も、歌舞伎ではそれぞれ「塩冶判官」(えんやはんがん)と「高師直」(こうのもろなお)という『太平記』に登場する人物の名前で登場することになっている。
というわけで、歌舞伎を楽しむためには、このあたりの基礎知識(昔は「常識」だったのだが)が必要になってくる。今の学生ばかりでなく、オジサン、オバサンにしても歌舞伎座に行く前に「予習」が必要になってしまうのだ。
冒頭で紹介した tweet の続きには「年末の風物詩『忠臣蔵』は、この先、歴史や文学を学ぶ人しかしらない専門知識となっていくのだろうか」とあるが、それに「歌舞伎ファン」を加えれば残念ながら「その通り」だと思う。
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