カテゴリー「文化・芸術」の148件の記事

2024年2月 7日

MOA美術館のガラスって、見えないんだって

静岡新聞デジタルが「透明ガラス ”ゴツン” 注意 MOA美術館(熱海)の展示ケース SNS で話題」という記事を載せている。この美術館、展示を保護するガラスの透明度がやたら高く、さらに照明などが映り込むことがないので、ガラスがあると気付かず、つい頭をゴツンとぶつける人が後を絶たないらしい。

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MOA美術館がこうした特殊なガラス(「低反射高透ガラス」というらしい)を使い始めたのは 2017年からだという(参照)。この美術館は写真撮影が自由ということなので、カメラで撮影する時に照明の反射が写り込まないというのはありがたい。

上の写真の右側は、頭ゴツンを避けるためにガラスの下の方に小さな黒い点を入れているのを示している。ただ、それでもぶつけちゃう人が絶えないというのだから、ぐっと近寄って細部まで鑑賞したがるのは人情というものだ。これって MOA美術館の誇る日本画のような場合は、とくに「あるある」だと思う。

ちなみに私は MOA美術館には行ったことがないが、その前身の「熱海美術館」時代には何度か立ち寄ったことがある。それは前世紀の 1970年代後半のことだから「低反射高透ガラス」なんてものとは無縁の時代だった。

早稻田大学って、熱海に坪内逍遙が晩年を過ごした「双柿舎」という施設をもっていて、大学院時代はここで忘年会などを一泊してやっていた。そしてその帰りには「熱海美術館」に立ち寄ったりしていたのである。当時から素晴らしいコレクションだったから、寄らずに帰るのはもったいなかったのだよね。

ところで、今日の記事の最後に触れておきたいのは「MOA美術館」という名称についてである。

私はずっと「日本語にしたら『美術館美術館』って、変な名前にしちゃったもんだよなあ」と思っていた。”MOA” は ”Museum of Art” の省略以外の何ものでもない(だって、フツーそうでしょ)と思い込んでいたためである。

これが創設者である岡田茂吉にちなむ ”Mokichi Okada Association”  の頭文字(参照)と知ったのは、恥ずかしながら極々最近の話だ。なるほど、そういうことだったのか! ものごとはよくよく調べてみるものである。

と、こんなことを書いていたら、実際に MOA 美術館に行ってみたくなった。仕事で熱海近辺に行く機会があったら、時間を作って是非寄ってみよう。

 

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2023年11月12日

ウィーンのユニークなデザインの噴水

AFP BB News に "2.9億円が「醜い」噴水に批判殺到 ウィーン" という記事がある。オーストリアの首都ウィーンでお披露目された、近代的水道設立から 150年を記念する噴水が、「醜い」上に制作費が高額だとして激しい批判を呼んでいるというのだ。

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記事には次のようにある。

水盤の周りに人のような形をした彫像 33体が輪になって座っているデザインを手掛けたのは、挑発的な作風で知られるウィーンを拠点に活動するアーティスト集団「ジェラティン(Gelitin)」。審査によって選ばれた。彫像は大切な資源である「水に対する地域社会の責任」を象徴している。

ちなみに左派社民党所属のミヒャエル・ルートビヒ(Michael Ludwig)氏が市長を務めるウィーン市の発注したこの噴水を、最も激しく批判しているのは右派自由党だという。その意味では、政治対立的なファクターもありそうだ。

「ジェラティン」というのは挑発的なパフォーマンスや作風によって知られている(参照)のだから、決して「まともな」ものにはなりようがないというのは発注時点からわかっていたはずだ。ましてや「審査によって選ばれた」というわけで、無闇にぶち壊すわけにもいかないだろう。

像の一部がミシュランマンのようだとけなす声もある」というので、添えられた写真を辿ってみたら、それらしいのが見つかった。多分この写真の 右から 2番目のことを言ってるのだろう。4番目もそれらしいし、見ようによってはなかなか愛嬌がある。

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ちなみに私個人の感覚で言ったら、この噴水はそれほど口を極めて非難するようなものとも思われない。どうでもいいフツーのデザインに比べたらなかなかユニークな作品で、3億円近い金をかけた意味はあると思う。そのうち「ウィーン名物」としてしっかり認知されるだろう。

これがどうしても気に入らないという人たちは、目を背けて見ないようにして歩けばいいだけのことだ。

 

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2023年11月 1日

「スナック文化」って、実は私もよくわかっていない

AERA の記事に ”過熱する訪日外国人の「スナック人気」にママたちが困惑 「お通しが理解できない」「混んでも席をつめない」" というのがある。「スナック」という日本独特の飲み屋に訪日外国人が興味津々なのだが、そこにある種の「文化摩擦」みらいなものが発生しているらしいのである。

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記事中には東京・江東区の門前仲町駅の近くにある「辰巳新道」という横丁で店を構えるスナックのママのコメントが紹介されている。こんなのだ。

「近くにホテルがあるから、宿泊している外国人が多くやって来るけど、基本的には旅行で来た外国人はお断りしています。ウチはお通しが 1500円で 2品くらい出して、それが席料になるんだけど、そういうことを説明しようにも、理解してくれないので、対応できないのよ」

う〜ん、そんなことを言われると、実は日本人の私だってよく理解できない。「お通しが 1500円で 2品くらい」と言っても、何だか客側には選択の自由がないみたいだし、何が何でも受け入れるしかないのだろうか。

はっきり言って「スナック」という形態の店で酒を飲んだことなんて、大昔に 1度か 2度あった気がするぐらいのものだ。それにしたって友人に連れて行かれた先が「スナック」みたいだったというだけで、常連らしいおっさんが下手なカラオケ歌うのを聞かされてシラけまくっていた。

とくに最近は酒をほとんど飲まなくなったので、スナックに限らず飲み屋全般に馴染みがない。そして中でも「スナック」という形態に関してはよく理解できなくて、縁遠いもののような気がしているのである。

冒頭で紹介した記事中には、別の店のママのこんなコメントもある。

「外国人はベジタリアンだ、宗教上の理由でこの肉は食べられない、魚、豆腐を出せとか、いろいろと注文が多い。神経を使うし、そういうのは苦手なの」

ちなみに私も宗教上の理由ってわけじゃないが、最近は肉食を絶っているので、勝手に出される「お通し」って、食べられないものが多そうなのだよね。上で紹介したコメントによれば「それが席料になる」というのだから、そのあたりはどう解釈すればいいんだろう。

出された「お通し」が食えない場合はすぐに引き取ってもらい、純然たる「席料」として金だけ払うってことで許してもらえるんだろうか。そんなことしたら、もしかしたら「雰囲気ぶち壊し」ってことで追い出されるのだろうか。

というわけで、私なんかがスナックに入ったらママが神経を使う以上に、こちらの方で神経使いまくって気疲れしそうなのである。できるだけ遠離っている方がよさそうなのだよね。

 

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2023年10月30日

「あっち系」の和菓子、なかなかおもしろい

タウンネットというサイトに "信長・秀吉・家康のお尻にあんこがタップリと... 「トイレの最中」の和菓子店、今度は「さんえぇけつ羽二重餅」を生み出していた" という記事がある。見出しだけでは「何のこっちゃ?」となりそうだが、本文に添えられた写真を見ると「そういうことか!」と理解できる。

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拡大してみると、確かに「けつ」の形をした羽二重餅である。「さんえぇけつ」はもちろん「三英傑」で、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の 3人を指す。そしてパッケージにはご丁寧なことに「鳴かぬなら ケツでも食べよ ほととぎす」という句が添えられているというのが泣かせる、いや、鳴かせる。

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ちなみに、見出しの ”「トイレの最中」の和菓子店” というのがそもそもわからず、ググってみたところこんなようなものと判明した(参照)。INAX ライブミュージアムの中の記事というのが鳴かせる。いや、ここは「泣かせる」でいいか。

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商品説明に「ご自身で、トイレ形状のもなか皮に餡子を詰めてお楽しみください。 ※入れるときは決してトグロを巻かないようにご注意ください」とあるのが、さらに泣かせてくれる。「最中」は「さいちゅう」ではなく、あくまでも「もなか」なのだね。(この件に関して、文末の【追記】を参照されたい)

これらの和菓子を開発したのは、愛知県常滑市の「大蔵餅」という和菓子店。ここは敢えて「なかなかいい趣味!」と言わせてもらいたい。近くに行くことがあったら、ぜひ「お土産」として買って持って帰りたいものだ。

最後に告白しておくが、冒頭で紹介した記事をネットで見つけて読んだ時は、見出しの「"信長・秀吉・家康のお尻にあんこがタップリと...」を、つい「うんこがタップリと...」と読み違えてしまったのだった。これって、多分私だけじゃないよね。

【11月 4日 追記】

「トイレの最中」の読み方に関して、現場に近い乙痴庵さんから貴重なコメントが寄せられた。”読みは「さいちゅう」も「もなか」も両方で構わないとのことですが、大蔵餅さん曰く「さいちゅう」推奨とのことでした” とあるので、その辺り、なにぶん

Yoroshiku4

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2023年10月 4日

笠置シヅ子の偉大さ その 2: 『ブギウギ』を通じて

このブログを PC で見た時の右側ブロックにある「人気記事ランキング」に、6年以上も前に書いた「笠置シヅ子の偉大さ」というのが表示され続けている。下の画像は、昨日午後の状況だが、なんと 2位にランクアップしていた。ちなみにスマホ版だと、ずっと下の方にスクロールすると見られる。

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3位の「童謡『桃太郎』の歌詞が、最近変わったらしい」というのは、当人としてはそれほど思い入れがないのに、どういうわけかかなりの長期間にわたって「ヒット記事」になっている。しかし笠置シヅ子に関する記事は、これまでほとんど注目されることがなかったのでちょっと驚いてしまった。

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一体どうしてにわかにアクセスが増えてしまったのか、まったくチンプンカンプンだったのだが、試しにググってみて初めて理由がわかった。今月から NHK の朝ドラで『ブギウギ』というのがスタートしていて、そのヒロイン「花田鈴子」のモデルが、何を隠そう、笠置シヅ子だというのである(参照)。

私はテレビはほとんど見ないので、そんなのちっとも知らなかった。さらにググったところ、日刊スポーツの記事で ”朝ドラ「ブギウギ」つかみは OK!「ワクワクする」圧巻オープニング 趣里らの主題歌も絶賛の声” というのが見つかった。「へえ!」である。

その初回の「つかみ」部分だが、探してみたら YouTube にあった。『東京ブギウギ』のライブである。さすが NHK らしく他のサイトでの再生が禁じられているということなので、下の画像をクリックし、オリジナルに飛んで見てもらいたい。

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なかなか頑張っているじゃないか。そりゃまあ笠置シヅ子本人のオリジナルの方がずっといいのは当然で、こっちの方はちょっとあざとい感じがしてしまうのはしょうがないところと思えばいいだろう。

いずれにしてもオープニングの主題歌がいい。これも YouTube で見つかったのだが、例によって、画像をクリックしてオリジナル・バージョンでご覧いただきたい。

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ちょっとグッとくるところのある曲と動画で、私なんか往年の『ひょっこりひょうたん島』のオープニングを想起してしまったよ。NHK って、時々思い出したように「なかなかやるな!」と思わせてくれる。

ただ、それもこれもみな笠置シヅ子本人の偉大さによるものと、今日改めて思った次第なので、どうぞ

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【同日午後 追記】

「笠置シズ子の偉大さ」という記事が、ついに「人気記事ランキング」のトップになってしまったよ。びっくりである。テレビの影響力って大きい。

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2023年5月 8日

「わかりにくいピクトグラム」のおもしろさ

広島現代美術館のトイレにあるピクトグラムについての tweet が一部で話題だ(参照)。下の写真で言えば右側の上が女性用下が男性用なんだそうだが、日常的な感覚でフツーに受け取る限りでは、「見るだけで直感的に理解できる」という意味でのピクトグラムの常識からほど遠い。

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商業施設などでよく見かける例では、まずカラリングとしては男性用が黒(あるいは紺)、女性用が赤という例が圧倒的に多い。さらに形状として、男性用がズボン、女性用がスカートを着用しているように見えるというのが一般的だ。

ところがこのピクトグラムは、そうした「常識」を無視している。一見すれば、ピクトグラムのもつ効果を果たさないように作られていると言って過言ではない。上に紹介した tweet も、ピクトグラムの制作意図について「何言ってるのかわからない」として、単純素朴なまでに批判的だ。

ただ、この問題を取り上げるにあたっては、これを tweet した「公(広島市を護る会)」という方の意図をきちんと見据えなければならないだろう。アカウントを見ると、この方はヘイトスピーチ条例制定に反対という立場らしく、当然のように「性自認」に関してもかなり保守的なスタンスのようだ。

というわけで、このトイレのピクトグラムに関する tweet が単純に批判的に見えるのは、そうした立場からすれば当然のようなのである。ということは、この tweet は単に「わかりにくさの批判」という以上に、実は「政治的なメッセージ」なのだと気付かなければならない。

私としては、「政治的」をさらに超えた視点で見てしまえば、こうしたピクトグラムも「一つの趣き」なのではないかと思う。さらに「現代美術館」という場所柄を思うと、「コンセプチャル・アートみたいなもの」と捉えてもいいんじゃなかろうか。

よく見れば「男」「女」という表示もあるし、このピクトグラムのせいで入るべきトイレを間違えてしまったなんてことにはなりにくいだろう。ということは、決定的な不都合はない。さらに 添えられた「断り書き」のようなのものの末尾にある「オチ」もおもしろい。

なお、ピクトの区別はついているけれど、どちらに行くべきか迷っている。そのような場合は、エントランス受付横、「誰でも多目的トイレ」をご利用ください。

ということなのだが、ただ、いくら私でもこうした「わかりにくいピクトグラム」をのべつまくなしに設置しろと言ってるわけじゃないので、その辺りのことは

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2023年2月14日

足立美術館の日本庭園と北大路魯山人

昨日の記事に書いた通り、今日は安来市の足立美術館に行った。行ってみるまでは、山陰の田舎の美術館だし平日だし、ガラガラなんじゃないかと思っていたが、安来駅から 30分間隔で出る無料送迎バスに乗ると、何とほぼ満席である。それに加えて自家用車で来ている人もいるし、かなりの来館者数で驚いた。

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で、この美術館には 10時半前に到着し、午後 1時発の送迎バスに乗るまで、ほぼ 2時間半いた。一つの美術館にこんなに長く滞在したなんて、多分生まれて初めての経験だ。ニューヨークのメトロポリタンでも近代美術館でも、2時間いなかったと思うからね。まあ、あの時は忙しかったということもあるが。

この美術館の最大の「ウリ」は、日本庭園横山大観コレクションということで、これはもう、私ごときがどうこう言うまでもなく圧倒的なものだった。とりあえずリンク先を見て、ちょっとだけ雰囲気に触れてもらいたい。

で、自分でも驚いたことに、私がさらに惚れてしまったのは北大路魯山人コレクションだった。魯山人については昔から「ちょっと気になる」程度には思っていたが、この旅で初めて彼の生の作品に触れ、「粋」の中の「粋」と思ってしまったよ。

彼は、あの漫画『美味しんぼ』の海原雄山というキャラのモデルと言われ、性格的にはかなり傲慢なおっさんだったと伝えられる。というわけであの陶器や書画の魅力については、作者の人格とは切り離して考えておこう。

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ただそれにしても、こうしたところを訪れる 4〜5人のおばさんグループって、どうしてあんなに声高のお喋りが止まらないんだろうね。ほんとに間断も遠慮もなくビャーピャー喋り続けるので、うるさくてしょうがない。

彼女らはじっくり作品を観るなんてことはまずなくて、しばらく我慢してやりすごせば案外さっさといなくなってくれるからいいけど、また後から新たなおばさんグループがやってきちゃうので、気が休まらない。やれやれ。

 

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2022年6月16日

福岡パルコの「攻めのジョーク」と「坊っちゃん団子」

朝日新聞の「性風俗店の無料案内所模した案内展示に苦情、急きょ撤去 福岡パルコ」という記事に笑ってしまったのは、この記事に添えられた写真の「まんま」みたいなケバい光景を、四国の松山市内で見かけていたからである。

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日の暮れかかった頃に道後温泉の辺りを散歩したのだが、例の改築中で 1階しか開いていなかった「道後温泉本館」(参照)の裏の通りが、まさにこんな感じの看板で溢れていた。それで、漱石の『坊ちゃん』を思い出したのだった。

『坊ちゃん』には、「おれのはいった団子屋は遊廓の入口にあって、大変うまいという評判だから、温泉に行った帰りがけにちょっと食ってみた」というくだりがある。そのせいで坊ちゃんは翌日、学校の教室で「団子二皿七銭」とか「遊廓の団子旨い旨い」とかいう、生徒たちの落書き攻勢に遭ってしまう。

私が 11年前に松山を訪れた時(参照)は、道後温泉本館の 2階で団子を食ったような気がするのだが、明治の昔の団子は、近くの色町の入り口で食うものだったのだね。ただ、明治時代にはいくら何でもこんな感じのケバい案内所はなかっただろうけど。

ちなみにこの記事には、朝日新聞・今井邦彦記者の「3年前に大阪から福岡に来て驚いたのが、風俗の無料案内所の多さです。大阪にもありましたが、福岡の中洲ではバス通りに面した場所にもいくつもあって、最初は戸惑いました」というコメントが付いている。

私が道後温泉の一画で見たような派手な看板、博多ではそこらじゅうにあるみたいで、ある意味「博多名物」と言ってもいいほどなのだろう。ちなみに東日本はどうなのかとググってみたところ、こちら をみる限りでは、西日本ほどには濃くないみたいである。

というわけで、福岡パルコとしてはこの「ケバい博多名物」を果敢に取り込んだ店内プロモーションで話題作りを目論んだのだろう。しかし今どきのファッション・アイテムを買いに来た若い層には、こうした「攻めのジョーク」が通じなかったというわけだ。

お気の毒に。

 

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2022年5月23日

高知城歴史博物館でもらった「土佐国絵図」の絵葉書

下の写真は、先日高知に出張した折に立ち寄った高知城歴史博物館でもらった絵葉書。「土佐国絵図」というタイトルで、江戸時代に作成された、いわば「絵地図」のようなものだ。博物館のサイトの中にもある(参照)が、私の訪れた日はこれの展示室が改装中だったようで、本物は見られなかった。

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何となくファンタスティックなもののように見えるが、画像のクリックで拡大してみると、かなり精密なものであることがわかる。ど真ん中に黄色に黒で縁取りされた「土佐国」という表示があり、その周囲の山々の間に、地名を表示した楕円形表示がたくさん散りばめられている。

この地名表示、絵葉書の画像が小さ過ぎて文字を読みにくいが、「土佐国」の右下の四角表示「高知」は、お城のある中心地だけにしっかりと読める。その他の地名も、土佐の人なら想像力を駆使すればかなり読めるだろうと思う。

さらによく見ると、東側の室戸岬と西側の足摺岬が、全体からの比率的にはかなり大きめに書かれていると気付く。室戸岬なんかは岬の先端に注ぐ川の河口が、入り江のようにさえ見える。この辺りは、こうして誇張されて描かれるほどの要所だったのだろう。

もっと面白いのは、この地図の上の方の文字は、上下が逆になって書かれていることだ。左右の端にある「西」「東」という文字も、それぞれ左側と右側から読むように、横向きで書かれている。

上の方の文字はどれも草書体で小さくしか見えないので判読しにくいのが残念だが、いずれにしても、この地図は元々はかなり大きなものなので、実際に広げて上の方の文字を読み取る時には、反対側に回り込んでいたのかもしれない。ものすごくフレクシブルなのだね。

高知城歴史博物館のサイトには「自宅でジョーハクを楽しもう~おうちミュージアム~」というページもあり、動画などのコンテンツもあって、いながらにしてかなり楽しめる。

 

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2022年5月 2日

『吾輩は猫である』で迷亭君が自慢した「多目的鋏」

昨日、TBS ラジオ『安住紳一郎の日曜天国』に、古文房具収集家のたいみちさんが登場され、いろいろとおもしろい話を披露してくれた(本日 16時までは こちら にて無料で聴取可能)。今回とくに聞き入ってしまったのは、夏目漱石の『吾輩は猫である』で迷亭君が自慢した「多目的鋏」の話である。

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たいみちさんはこのほど、この鋏の実物(なんと取扱説明書付き!)をネット・オークションで入手されたのだそうだ。すごい! 小説の該当部分は朝日新聞デジタルで読める(参照)ものの、実物を拝みたくて必至にググってみたのだが、残念ながらそのものズバリの画像は見つからなかった。

ただ、「多分、こんなような感じなんだろう」と思われるものが Amazon で見つかったので、上に画像をコピペしておく。「アイガーツール(EIGER TOOL)アクティ8 万能鋏 AT-100」というもので、使い方はこんな感じだ。

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ただ、おもしろいのはこの「アイガーツール」は 12通りの使い方ができるわけだが、たいみちさんの入手された問題の骨董品は小説にある通り「赤いケース入り」で、説明書によれば下記のように 18通りもの使い方ができるというのである。

  1. ボタンホール鋏(こんなようなものらしい)
  2. ガスパイプ・トング(こんなようなものらしい)
  3. 葉巻カッター(こんなようなものらしい)
  4. ペンチ
  5. 定規
  6. 物差し
  7. 爪ヤスリ
  8. ドライバー
  9. 缶切り
  10. カートリッジ・エクストラクター(どんなものか、謎)
  11. 金槌
  12. 鉛筆削り
  13. ガラス・カッター(こんなようなものらしい)
  14. ガラス・ブレーカー(こんなようなものらしい)
  15. マーキング・ホイール (こんなようなものらしい)
  16. ナイフ
  17. スタンホープ・レンズ

最後の「スタンホープ・レンズ」というのは小さなレンズで、この商品では覗くと水着女性の写真が見えるという。当時(1905年頃)は案外、この「ご愛敬機能」のおかげでヒット商品になったのかもしれない。ちなみに上の写真のアイガー商品には、さすがにこれは付いていない。

さらにおもしろいのは、漱石の『吾輩は猫である』では、迷亭君がその鋏について「十四通りに使えます」と説明していることである。ところが実際の小説の文章には、以下の 11通りしか書かれていない。

  1. 「葉巻を入れてぷつりと口を切る」: 上の 4番の「葉巻カッター」
  2. 「針金をぽつぽつやる」: 上の 5番の「ペンチ」と思われる
  3. 定規: 上の 6番
  4. 物差し: 上の 7番
  5. ヤスリ(爪磨り): 上の 8番
  6. 金槌: 上の12番
  7. 「うんと突き込んでこじ開ける」(蓋とり):上の 9番の「ドライバー」か?
  8. 錐(きり): 上のリストでは何に当たるのか、不明
  9. 「書き損ないの字を削る」: 強いて言えば、上の 13番か?
  10. ナイフ: 上の 17番
  11. レンズ(面白い写真): 上の 18番

そして、元々「鋏」なのだから、上のリストの 1番は言わずもがなとして、これを入れても 12通りにしかならず、迷亭君自ら主張する「十四通り」には 2つ足りない。さらに、公式に説明されている 18通りからは 6つ足りない。

たいみちさんは、この多目的鋏を漱石自らが丸善で購入し、どうしても自慢したくて、小説にまで登場させたのだろうと推定されている。ただいずれにしても、彼は全ての機能を使いこなしていたわけではないようだね。

そしてこのことは付け加えなければならないが、最近の缶詰はほとんどプルトップ式に変わったので、「缶切り」機能はもはや無用の長物になってしまったよね。

蛇足になるが『吾輩は猫である』ではこの万能鋏の件に続いて、かの有名な「蕎麦の話」(参照)になるので、是非お読み戴きたい。迷亭君はあまり大量の蕎麦を一口に啜りすぎて喉につっかえそうになり、涙まで流している。これって、江戸っ子の陥りやすい罠である。

【5月 5日 追記】

18通りの使い途のある多機能鋏についてなぜかハマってしまい、5月 4日付5日付 の記事でしつこく詮索した結果、その謎をかなり解明することができた。「カートリッジ・エクストラクター」がどういうものか解明できたことが最大の成果と言える。

さらに迷亭君の言う「うんと突き込んでこじ開ける」(蓋とり)が、上の 9番「ドライバー」ではなく、10番の「缶切り」と記したもの(実は「葉巻箱開け」)で、 「書き損ないの字を削る」というのが、上の「13番」ではなく「17番」だとわかったのも収穫である。


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