カテゴリー「言葉」の819件の記事

2026年2月17日

「さいな」という言葉、大阪弁と茨城弁でまったく違う

茨城県に住み始めて 40年以上経って、近頃初めて知った茨城弁がある。「さいな」という言葉だ。「さいなら(さようなら)」の省略形であるらしい。

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もっとも、実際の会話で使われているのは一度も聞いたことがない。水戸在住の知り合いが「そういえば、昔は『さいな』なんて言ってたね」と言うのを聞いて初めて知ったほどだ。ちなみに茨城県南部の筑波辺りでは、「まだな」(「またね」の意)が辛うじて現役で使われているようだ。

そういえば大阪弁にも「さいな」という言葉があるが、こちらは「さいなら」ではなく「そうだね」という意味合いである。こちらもやはり現実の会話では滅多に聞けず、たまに歌舞伎や浄瑠璃で聞けるぐらいのものだ。

忠臣蔵の「六段目」では、お軽の母が勘平の帰りの遅いことを気に掛けると、お軽が「さいな、こりゃまぁ、どうして遅い事じゃ。わし、ひと走り見て来やんしょ」なんて言う(参照)。実はこの時点で悲劇は始まっているのだが、長くなるからここでは触れないでおこう。

この「さいな」は現代では「船場言葉」とされてしまっている。上品な商人言葉だが、摂津弁と河内言葉が幅をきかせている今の大阪では、やはり廃れつつあるようだ。"さいな" でググっても、見当外れのリンクばかり表示されるし。

大阪に本社のある会社に勤めていた 40年ほど前、会社の飲み会でどんなきっかけだったか忘れたが、常務が「さいな」と口走り、社長に「今どき『さいな』かいな!」とウケていたのを聞いたきりだ。

ちなみにこの時、関西人でもない私を除いて周囲の若手にはさっぱりウケていなかった。歌舞伎の力は大きいとしみじみ思ったものだ。

この「さいな」は語頭の「さ」にビミョーなアクセントがあり、なかなかの風情なので復活させてもらいたいなあ。「さいなら」の省略形の方は、別にどうでもいいけど。

 

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2026年1月30日

京都のコンビニは、トイレを「貸し出さない」?

Livedoor News に【「結果マイナスにしかならへん」多くが "トイレ貸出拒否"…  外国人観光客が殺到する京都でコンビニ店員が語った苦悩】という記事がある。少なからぬ外国人のトイレを使う際のマナーが悪すぎるという理由で、京都では "トイレ貸出" ってことを拒否するコンビニが増えているというのだ。

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のっけからの回りくどい言い回しでピンときた方もおられるだろうが、紹介記事の見出しにある "トイレ貸出拒否" という言い方はちょっとおかしい。以下、Wikipedia「貸出」の項からの引用(参照)だが、太字部部分に注目。

貸出(かしだし)は、特定の場所にあるものを有料または無料で一定期間持ち出すことを許可すること。比較的短期の貸出をレンタル、長期の貸出をリースと呼ぶことがある。

「貸出」は「外部に持ち出す」ことが付きものだが、トイレはあくまでも「その場で使う」もので、外部に「持ち出す」ものじゃない。つまり、トイレの「貸出拒否」は別に京都のコンビニでなくても当たり前なのだ。

それから、記事に添えられた画像を拡大してみると、真ん中に英語らしき文言があり、ちょっと不鮮明だが "No customer toilet" と読める。「顧客のトイレじゃないよ」って感じで、ちゃんと通じるかどうかギリギリの線だ。本来は外国人にこそ明確に言いたいことなんだろうに。

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コンビニに表示されている英語がまともじゃないのはよくあることで、今さら取り立てて言ってもしょうがないが、国内ニュースの日本語までまともじゃないというのは、ちょっと哀しいことである。前にも関連で書いたが(参照 1参照 2)、この程度のことは今や珍しくなくないのだね。

ちなみに、外国人の多くはコンビニでトイレを借りても何も買わずに出て行ってしまうというのだが、それって日本の常識としてはやっぱり店に対して申し訳ない気がする。私なんかこの夏、コンビニでトイレを借りる度に清涼飲料水を買って飲んでいたために、高血糖になって入院しちゃったほどだから(参照)。

いずれにしても、近頃の京都に行く時はトイレ問題でアセったりしないように心しておかなければならないようだ。

 

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2025年12月27日

「ラーフル = 黒板消し」を巡る冒険

「黒板消し」に「ラーフル」という異名があると知ったのは、X(Twitter)の佐伯ヨ さんという方の tweet (参照)を読んだのがきっかけだった。「今まで黒板消しって呼んでた物の正式名称が知れて凄く感動している」とあるが、実際は「ラーフル」は鹿児島や宮崎、愛媛辺りでの呼び名らしい。

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この tweet では「ダストレスラーフル」という名称が紹介されているが、「粉ゴミの出ないラーフル」ということになるのだろう。じゃあ、「ラーフル」って、元々は何語でどういう意味なんだ?

ググってみると、ITmedia のサイトの "なぜ「黒板消し」をラーフルと呼ぶ地域があるの?" という記事が見つかった。次のように紹介されている。

黒板消しを「ラーフル」と呼ぶ人は、鹿児島県、宮崎県、愛媛県いずれかの出身である可能性が高いです。「ラーフル」の語源は、オランダ語の「ほつれ糸」や「擦る」を意味する「rafel」から。

日本で黒板が普及し始めた明治初頭、チョークを消すときにほつれ糸を束ねたモップのような物や、糸のほつれたボロ布を用いることが多かったため、その材質から「ラーフル」という呼び方になったのではないかといわれています。

「へぇ!」ってなもんである。「江戸時代、オランダと貿易や交流が盛んだった文化の名残」とあるのだが、そんな昔からの話だったのか。

そしてこの「ラーフル」という呼称が主として鹿児島県、宮崎県、愛媛県に残っていることについて、日本経済新聞 2011年 11月 15日付 "「黒板消し」を「ラーフル」と呼んだら〇〇県出身!" という記事には次のようにある。

例えば薩摩藩(現鹿児島県)の島津斉彬、宇和島藩(現愛媛県)の伊達宗城らは藩主自らが蘭学に熱心で、藩士にも大いに学ばせた開明的な人物。オランダ語由来の外来語を受け入れ、定着させる下地が整っていた名残ではないかと・・・(中略)

江戸時代にオランダとの交流の窓口が長崎のみだったため、言葉が伝わる過程で長崎により近い西日本に色濃く分布したという考え方。つまり「大阪までは伝わった。東京まで伝わることもあったかもしれない。しかし東北までは行かなかった」――。ラーフルだけでなく南蛮語の一般傾向といえるそうです。

なるほど、納得のいく説明である。東北出身の私は、この年になるまで「ラーフル」なんて言葉は聞いたことがなかった。

 

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2025年12月23日

「卒親」って言葉を初めて知った

Threads の投稿を読んでいて「卒親」という言葉を初めて知った(参照)。新聞の投書欄に載った西東京市の「疲れた母、55歳」という人からの投稿にその言葉が出ていて、「一体何のこっちゃ?」と思ってしまったよ。

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子どもが小さい頃から、いろいろないいと言われる躾けをしてきたのに、まったくその甲斐のない息子に育ってしまったという愚痴の後に、「少子化バンザイ」と続く。そして「こんな理不尽な母親になれなんて、未来ある人に絶対言えない。徒労感いっぱいで、私は卒親する気満々だ」ということになる。

そして最後のシメがこの文章だ。

卒親にあたって息子らにひと言。「努力が全く実を結ばない世界があるってこと、教えてくれてありがとう」

はっきり言って、妙に大袈裟で混乱しまくった文章である。「ありがとう」と結んであるのに、ただひたすら愚痴っぽさしか残らない。おそらく気持ちの整理がまったく付いていないのだろう。

「どう見ても正しいのは努力した私で、悪いのは親の努力に応えようとしない息子なんだけど、世の中ってそんなものなのね」と言わんばかりなのは、甚だ勝手な自己正当化である。この人、「努力の意図が見当外れだった」とは決して認めないのだろう。

この投書を紹介したあやめんさん(ayame_life2025)という方は、「お母さんの愛情って実を結ぶかどうかじゃないね」というコメントを添えてくれているが、これ、とても言えてるよね。「疲れた母、55歳」さんにも読んでもらいたいぐらいのものだ。

それにしても「卒親する気満々」という割にこんな愚痴っぽいことを連ねてしまってるって、実は「卒親」なんてできそうにないんじゃないかと思わせるに充分だ。それは息子との距離が無闇に近すぎたせいだろうし、そんなような距離感にしてしまったのは、他でもない自分自身なのだが。

卒親」という言葉でググると、「卒母」という言葉がほぼ同義語みたいにどっさり表示されるが、一方で「卒父」という言葉の登場は極端に少ない。これって、この国の「親」のあり方が問われる問題のように思われてしまうなあ。

ちなみに「卒親」「卒母」の読みは「そつおや」「そつはは」でいいんだろうね。まさか、「そっしん」「そつぼ」とかじゃないよね。

 

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2025年12月10日

今年の名前ランキング・・・ よ、読めん!

産経新聞の昨日付に "今年の名前ランキング 男の子「湊」、女の子「翠」1位 外国語表記で馴染む名前も人気" という記事がある。明治安田生命が発表した 2025年に生まれた赤ちゃんの名前の人気ランキングを報じたものだ。男の子と女の子の「名前ベスト 10」は以下の通り。

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一見して、「よ、読めん!」とアセってしまった。男の子の名前の 湊 = ミナト、伊織 = イオリ、朔 = サク、陽向 = ヒナタ、女の子の名前の 紬 = ツムギ、凜 = リン ぐらいは、想像するに「多分そうなんだろう」と思えるが、あとは全て自信がない。

女の子の名前の「結菜」は辛うじて「ユナ」 かなあ? しかし大学で江戸時代の芸能を研究した私なんか、「ゆな」と聞いたら「湯女」という言葉を思い浮かべてしまうので、自分の娘の名前にはしたくないと思うがなあ。「ユイナ」ならまだいいけど。

読み方では、"男の子は「ハルト」、女の子は「エマ」が人気を集めた" とあるが、上の「ベスト 10」にはそんな風に読めそうな名前が見当たらない。果たしてどんな漢字なんだろう?

最近の若い親って、自分の子どもが生まれたら、いろいろな漢字をこねくり回して名前を考えたがるんだろうか。いや、「若い親」だけじゃなくてその親の祖父母も、あの「団塊ジュニア」と呼ばれる世代が含まれるだろうから、結構ぶっ飛んだ名前にも抵抗がないのだろう。

というわけで、一世を風靡した「キラキラネーム」の後は「難読ネーム」が問題になってしまいそうだ。総じて画数の多い漢字が好まれているようでもあるし。

ちなみにこの記事の末尾は次のようにあるが、私には意味が通じなかった。

"グローバルネーム" の人気も定着しているようだ。「セナ」「ハル」「エマ」「サナ」など、外国語表現に変換しやすく、日本語でも違和感のない名前が人気になっているという。

 Senna とか Emma とかいう名の外国人は確かにいるが、「それがどうした?」としか思えない。「外国語表現に転換」しやすいって、具体的には一体どういうことなんだろう? いくら何でも、「太郎兵衛」とか「次郎左衛門」とかいう「純日本的な名前じゃない」というようなことでもないだろうし。

最近は戸籍の登録に振り仮名が必要になった(参照)というのだが、こうした記事に接してしまうと「なるほど、それは必須だよね」と思ってしまう。John とか Paul とか Mary とか Silvia とかいう名前の多い英語圏は、名前を読むのが楽だろうなあ。

【12月 11日 追記】

basara10 さんから "「朔は「はじめ」かも知れない " とのコメントをいただいた。なるほど、「サク」よりもっともらしい。

 

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2025年12月 4日

「ポイ活」って「ポイ捨てゴミを拾う活動」かと思った

今朝、「ポイ活」という言葉を初めて知った。きっかけは「はてなブックマーク」に載った「若者は "ポイ活" をしない【鈴木淳也の Pay Attention】」という項目なのだが、下の画像のように表示されていたので、私は「ポイ捨てされたゴミを拾う活動」なのかと思ってしまったよ。

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ところが「若者は "ポイ活" をしない」というのに、画像でゴミ拾いしているのは若者にしか見えず、違和感満々なのでついリンク先の記事を読んでみたのである。それで「ポイ活」とは、実はこんなようなこととわかった。

「ポイ活」とは、各種ポイントで提供されている還元プログラムを活用して日々の買い物の中で "ポイント" を貯めていく活動のこと

思わず「へぇ!」と口走ってしまった。どうやら各種カード(スマホに取り込んであることが多い)を使ってキャッシュレスで買い物をする際に、ポイントを貯めることを指すようなのである。

ただこの記事は、若者は「ポイ活」をしないなんて言っているが、若者だけじゃなく、私だってそんなことはしない。何しろ「お金が嫌い」なんだから、さらにチマチマと面倒なポイントなんて好きになれるわけがない。

ただ、「ポイ活」をメシの種としたい筆者にとっては、今後いかに若者を取り込んでいくかが重要テーマとなるようで、記事中でいろいろな方策を語っている。ただ正直言って退屈なので、ほとんど読み飛ばしてしまった。どうやら私みたいなジジイは対象外のようだし

で、最初の問題に戻るが、こんなような記事にどうして「ゴミ拾い」の写真が登場したのかといえば、「『社会貢献』をテーマに将来的な顧客候補を獲得する試みがある」からなんだそうだ。次のように書いてある(参照 文章の続き具合がおかしいのは、取りあえず無視ね)。

Olly は高校生を主体とした有志団体だが、本活動では OB を含む 20名近いメンバーが参加し、近年毎年話題になっている渋谷でのハロウィン後の清掃活動を実施し、集めたゴミの重量に応じた「楽天キャッシュ」が提供された。

要するに「社会貢献活動」に名を借りた「お金目当ての活動」で、若者を取り込みたいのかもしれない。

 

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2025年11月25日

「幽玄」という難読漢字と、その他諸々

現代ビジネスというサイトに、【難読漢字】というシリーズがある。読み方のちょっと難しい漢字や熟語を読んでみようというものだ。最新の問題は「幽玄」という文字(参照)で、その前の 4問は「比丘尼」「吹聴」「礎」「刮目」だった。

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まず「幽玄」。「こんなの、フツーに読めるよね」と思っていたのだが、実は案外難易度が高いらしい。私が「フツー」と思っていたのは、どうやら大学で古典演劇研究なんてやっていたかららしいのだ。本当の専門は歌舞伎だったのだが、能も少しはかじったので「幽玄」というのは案外身近なのである。

せっかくだから私の故郷、庄内に伝わる国指定重要無形民俗文化財、黒川能(参照)の画像を貼っておこう。「幽玄」というのは、一般的にはまさにこの画像の醸し出す雰囲気と言っていいだろう。

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「一般的には」と言ったのは、「幽玄」とは「物事の趣が奥深くはかりしれないことまた、そのさま」(参照)と考えられているわけなのだが、深掘りするともうちょっと奥があるからだ。実は「幽玄」って、元々「妖艶」にとても近かったらしい。これ、知っておいていい知識だ。

和楽 web に "一生聞いていたい、歌人・馬場あき子さんの講義!「幽玄」の本当の意味って? 阿部顕嵐が語る「あらん限りの歴史愛」" という記事があるのでお読みいただきたい。「へぇ!」と思ってしまうこと請け合いだ。

ついでだから、上の画像の「幽玄」の下にある 4つの「難読漢字」にも、さっと触れておこう。

比丘尼 (びくに)  吹聴 (ふいちょう)
礎 (いしずえ)   刮目 (かつもく)

これぐらいならまあ、フツーに読める人が多いだろうが、この現代ビジネスの【難読漢字】シリーズには、時としてチョー難読なものも登場するので油断がならない。例えばこんなのだ。左側は何とかなっても、右側は「????」の人が多いだろう。

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クリックすると、それぞれの正解が表示される。

「已己巳己」というのは読み方の正解を知っても「????」が解消しない人が多いと思うので、こちらの解説も合わせて読んでいただくしかない。よく見ると 2文字目と 4文字目以外は別の文字というのがミソだ。

最後に民俗芸能の話に戻るが、庄内には「黒川能」だけでなく「黒森歌舞伎」というのもあり、私は 17年前に「黒森歌舞伎による観客論」という記事を書いているので、お時間があればどうぞ。

 

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2025年11月24日

トラックの「社名逆読み」(進行方向書き)という問題

꒴との丸 VAB乗り꒴ さんという方が X(Twitter)に「トラック社名逆読み選手権優勝候補」という興味深い投稿をされているので紹介しておく。これには私としても、さすがに朝から笑ってしまったよ。

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こういう書き方を世の中では「進行方向書き」と称するらしく、私もこのブログの 2011年 11月 1日付「車体右側面の 「進行方向書き」 が減ってきたようだ」という記事で触れたことがある。この時は「減ってきたようだ」と書いたのだが、実は 14年以上経った今でも健在ということのようなのだね。

この投稿にはコメントとしてさらに笑ってしまう例がいくつも紹介されている。例えばこんなのだ。

わかいあの肉 (実は 肉のあいかわ)
ツマトネタイヨ  (実は ヨイタネトマツ)
チンポツールフ(実は フルーツポンチ)
所務エロ井  (実は 井口工務所)
クッテジローK(実は Kーロジテック)

さらに企業名ではないが、「別分とんちき」(実は きちんと分別)、「トンタルサンコ合総」(実は 総合コンサルタント)なんてのまである。ここまでくると、ちょっと狙ったんじゃないかとまで思ってしまうよね。

連休最終日の混雑の中、阿波の徳島から在来特急、快速、新幹線を乗り継いで帰路の途中なので、まずはこれにて失礼。

 

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2025年11月22日

記事の見出しは(サブタイトルも)まともな日本語でね

HUFFPOST 日本版が宇宙飛行士、油井亀美也さんの宇宙からの X(Twitter)投稿画像を紹介している(参照)。「関東や中部地方が確認でき、その中央には存在感たっぷりに佇む富士山の姿が写っています。山頂の雪がはっきりとわかるほど鮮明で、遠い宇宙からでもその形が際立っています」というのだ。

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上の画像は元の写真の富士山部分を中心にやや拡大したもので、なるほど「フジツボみたい」という印象も頷ける。しかしその下の「雪化粧を始めた富士山のくっきりしたシルエットが大きな反響を呼んでいます」というサブタイトルには、ちょっと首を傾げてしまうよね。

映っているのは決して「シルエット」じゃないからだ。あくまでも宇宙から見た「実物の富士山」である。そもそも「雪化粧を始めた」姿なんて、「シルエット」で確認できるわけがない。

もしかしたら最近は「シルエット」という言葉の意味が広がってしまったのかと思い、念のため Wikipedia で確認してみたが、やはり次のような説明である(参照)。

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シルエット(フランス語: silhouette)は、輪郭の中が塗りつぶされた単色の画像のこと。影絵と同義に見なされる場合もある。

元々は18世紀ヨーロッパに起った、黒い紙を切り取って人物の横顔を表現した切絵に対して用いられた言葉で、そこから明るい背景に対して事物が黒く塗りつぶされて見えるような光景や、物の形そのものを言い表す語として用いられるようになった。

「明るい背景に対して事物が黒く塗りつぶされて見えるような光景」を言うこともあるという。しかし上の写真の場合は、青っぽく見える大地に対して冠雪した富士山の頂上付近が白く立体的に見えるのだからまったく反対だ。

なんでまた、これを「シルエット」なんて言えたかなあ。あるいは「ちょっとオシャレな言い方にしてみました」なんてつもりなのかなあ。

最近のネットニュースは、本文がまともでも見出しやサブタイトルに「はぁ?」と言いたくなる表現が目立つ(参照 1参照 2参照 3)。きちんと日本語を学んだ人材が編集者になってくれないと、今後ますます「はぁ?」が増えてしまいそうだ。

 

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2025年11月 4日

「ウィッグホールダー」という商品名を巡る冒険

Daily Portal の「ウィッグを安定させるにはウィッグホールダー」という記事に目が止まってしまった。いや、私自身がかつらをかぶるためにというわけじゃなく、「ホールダー」というカタカナ表記が見慣れないからである。

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紹介されているのは、ウィッグを被ったときに頭に安定させておくための製品で、上の写真では白いはちまきみたいに見えるものだ。これって多分、英語では "wig holder" (フツーにカタカナ化すれば 「ウィッグホルダー」)なのではないかと思い、早速 Amazon で検索してみたのである。

案の定その名の商品はどっさり見つかった。ところが上で紹介されているはちまき状の商品とは全然別物で、こんなようなものである。

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要するに英語で "wig holder" と言ってしまうと、"wig stand" とか "wig head stand" とかいう別名も表示されていることでもわかるように、かつらをかけておくための道具を指してしまうようなのである。じゃあ、最初に紹介したはちまきみたいなものは、まともな英語では何というのだ?

調べてみると、英語の世界ではどうやら "wig grip band" という言葉が一般的であるようなのだ。こんな具合である。

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そして本家の英語で言うところの "wig holder" は、日本では「ウィッグハンガー」とか「ウィッグスタンド」とかいう名称で定着してしまったようなのだ(参照)。「ウィッグホルダー」と言ってしまうと、何となく違和感なんだろうね。

で、最初に紹介した「ウィッグホールダー」はあくまでも「ウィッグホールダー」で、完全に和製英語とはいえ「ウィッグホルダー」とは別物なのだという建て前のようなのである。なるほどね、それでわざわざ見慣れない「ホールダー」なんてカタカナにしているわけか。

というわけで、「ウィッグホールダー」という商品名を巡る冒険、これでおしまい。

 

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