平成十五年師走 六日に詠める歌
雪おろしと呼ばるる雷 古里に今宵鳴るらし空の低さよ
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どんよりと曇っているせいで、明け方はそれほど気温が下がらず、案外苦労なくベッドから抜け出せた。
天気予報を聞いていたら、北陸・東北の日本海側は夕方から雷が鳴るらしい。
これは、私の田舎では「雪下ろしの雷」と呼ばれていて、冬の初めに、低く陰にこもって 「ゴロゴロ……」 と鳴る。
この雷が鳴ると本格的な冬で、雪も降り出すということになっている。
予報では、案の定、明日から 「強い冬型」 で、関東は晴天が戻るという。てことは、田舎は雪だ。しかも、「冬型」 に 「強い」 という形容詞が付くと、「吹雪」 になることもある。
雪下ろしといえば、ウチの田舎にこんな昔話がある。本来ならば庄内弁で語られるのだが、ここでは日本語で紹介しよう。
「えーだろじんじゃ」 (「栄太郎じいさん」?)
えーだろじんじゃが、畑で大根を抜いていたら、
なかなか抜けなかったとさ。
やっとの思いで抜いてみたら、とっても大きな大根だった。
その大根を荷車に乗せて、
じじ山下(「持地院」というお寺の小高くなった所の下)まで来たら、
遠くで雪下ろしの雷がなったんだと。
そしたら、荷車で大根が 「オ~イ、オ~イ」 と泣き始めたと。
えーだろじんじゃが、「一体、何を泣いてるんじゃ」 と聞くと、
大根は 「あの遠くでゴロゴロ鳴るのはなんだろう?
あの音が恐くて泣いてるんだ」と言う。
「あぁ、心配ないよ。あれはのぅ、雪下ろしの雷だ」
すると、大根は泣きやんで、
「あぁ、よかった。てっきり大根おろしの雷かと思った」
なんだか、落語の枕みたいな小咄である。起源はあんまり古くないな。少なくとも江戸時代以降だ。明治以後かもしれない。
ちなみに、「えーだろじんじゃ」 というのは、実在したかどうかは怪しいが、田舎では昔話によく登場するキャラ。
多分「栄太郎じいさん」だと思うのだが、何でも 「ええだろ(いいだろう)」 で済ませるというお気楽じいさんのイメージもある。
それから、「持地院」 というお寺は、今では幼稚園を経営していて、私もその幼稚園に通った。わんぱくで、エライ迷惑をかけてしまったが、なぜか、当時副園長をされていたお坊様に(後の園長先生)には、ずいぶん目をかけてもらったことを憶えているのだなぁ。
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