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2003年12月 8日

平成十五年師走 八日に詠める歌

かはたれの遠き県道ひた走るディーゼルの音けふが始まる

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「たそがれ」と「かわたれ」ということばがある。

「たそがれ」は「黄昏」とも書くが、元々の日本語の語源は 「誰そ彼れ」 …… 「彼は誰だろう」 ということで、夕刻を過ぎて、ぼんやりと暗くなって来たので、向こうにいるのが誰だがわからない時分のことだ。

それに対して「かわたれ」は夜明け前の薄暗い時分のことで、「彼は誰」 ということ。言葉がひっくり返っただけだ。

この 「彼誰時」 に、ベッドの中で寝るともなく起きるともなくぐずぐずしていると、小川と田んぼを隔てた県道から、車の音が聞こえ出す。

日本経済の物流が、こんな田舎道にまでどんどんと押し寄せる。スーパーもコンビニも、朝イチで届いた商品を棚にならべる。

「あぁ、今日も一日が始まっちまうなぁ」

「……もうちょっと、始まりが遅らせないものかなぁ……」

冬のかわたれ時は長い。夏ならば 4時頃から明るいが、冬は6時でも暗い。冬は自分の中に入ってしまいやすい季節だ。

江戸時代みたいに、昼と夜の時間の進み方を変えられたらいいのに。江戸時代の「時」は、夜明けと日没を規準に、日中と夜の時間を、それぞれ6等分していたから、冬はゆっくり起きて、さっさと寝るという暮らしだった。

「それって、いいなぁ」

とはいえ、一日が始まってしまえば、今日は忙しいぞ。夜までかかって取材だ。

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