皐月十三日の歌
残りしは骨と写真と人々の記憶の中の笑顔なりけり
母の葬儀が終わった。今、実家の中はごった返している。整理には少し手間がかかるだろう。我々は明日帰路に着いてしまうのが心苦しい。
母の女学校時代の友人も、大勢参列してくれた。その中の、とくに仲のよかった一人が、顔をくしゃくしゃにしながらも、素敵なはなむけの言葉を言ってくれた。
「決して自分を強く主張するわけではないけれど、いつもにこにこしてくれていて、私たちとしては、その場にいてくれないと困る人、いてくれないと、なんだか足りない気がする人、そんな人でした」
そうか、母は確かにそんな存在だったのだ。どこでもそんな風な。認知症になってからまで、そうだったし。ただ、これからはいつも 「足りない」 気持ちでもいられない。
火葬場で骨を拾いながら、もう母はこの世にいないのだ、残ったのは骨と写真しかないのだと思った。しかし、人々の心の中に残るあの笑顔は、まだ生き続けているという気がした。
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