五月十日の歌
降るはずの雨降らぬ間に垂乳根の母は静かに死に給ふなり
昼前、出先に妻から電話が入った。母が緊急入院したという。実家の近所の人から知らせが入ったらしい。
とはいえ、父からの電話はない。妹が急遽実家に飛んだが、様子がわからず、どうにも動きが取れない。
夕方、ようやく父から電話が入った。今日の昼頃に亡くなったという。寝たきりだったとはいえ、あまりにも突然の死だったので、検死に手間がかかり、警察の調べまであって、連絡が取れなかったそうだ。
それにしても、こういう場合って、一応とはいえ、警察が入るのだな。
左手の肘から先しか動かせず、自分では寝返りも打てない体で、しかも認知症で言葉も発することができない状態で、しかし、七年間、ベッドの上でただニコニコと笑っていた。全然動けないのに、とても始末のいい病人だった。寝たきりになっても、ずっと友人や近所の人気者だった。
今朝も、市の介護サービスのヘルパーさんから朝食を食べさせてもらい、満足してうとうとし始めて、その数分後に呼吸が止まっていたという。大往生だ。五月十日とは、命日も憶えやすいし、幸せな人だったと思う。
昼頃には降り始めるはずだった雨がなかなか降らない間に、夕方になり、暗くなり始めるころから、遠くで稲妻が光り始めた。
もう緊急を要するわけではないので、自分と家族の仕事の予定を都合して、明日か、明後日の朝には家族全員で帰郷することになる。
土曜に通夜、日曜に告別式。よって、来週の月曜からの奈良出張は中止。
唯々感謝、合掌。
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