ひこばえ
坂道に添ふ急斜面ひこばえて萌ゆる若葉に我が手届かず
Today's Crack の二月十一日付 『唯一郎句集』 レビュー #6 に、「ひこばえ」 をテーマにした句が三句ある。
ひこばえとは、Goo 辞書によれば 「樹木の切り株や根元から群がり生える若芽」 で (参照)、春の季語ということになっている。唯一郎は自由律の俳人だが、季節感がしっかり伝わる句が多い。
「ひこばえ」 の 「ひこ」 とは 「ひ孫」 のことを指す。酒田では今でも、ひ孫のことを 「ひこ」 とか 「ひこまご」 とか言う。
唯一郎の 「ひこばえ」 の出てくる三句を以下に引用してみよう。
親しく来し者よひこばえの若葉摘む
松前稼ぎの若者の便り ひこばえて
春日の曇りひこばえの葉裏見たり
「ひこばえ」 というのは名詞であって、「ひこばえる」 という動詞は普通はあまり聞かないが、二句目の 「ひこばえて」 という動詞としての用法は、俳句の世界では珍しいことではないようだ。
取手駅近くに借りた駐車場から駅に行くには、いくつかのルートがあるが、今朝はちょっと時間に余裕があったので、一番遠回りの道を歩いてみた。坂道沿いに斜面があって、そこにあった林がいつのまにか伐採されてしまっている。その切り株の一つから、まさにひこばえていたので、写真に収めてみた。
ところで、英語では 「ひこばえ」 のことを何というのだろう。あるいは別に特別の言い方なんてないのかもしれない。敢えていうなら、"new sprouts from the bottom of tree" だろうか。
Young sprout at the bottom of a stump
In Japanese, growing grandson of the tree
The surface is so steep that I can't jump
To reach the young leaves shining free
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