シャリンバイ咲く
久方の奄美の島の漆黒に染まる紬の車輪梅咲く
今朝、出がけに気付いたのだが、我が家の隣の空き地に植えてあるシャリンバイが満開近くなっている。咲き始めたことさえ知らなかったのに。
シャリンバイは車輪梅と書く。毎年説明しているが、改めて書く。これは、我が家の長女が幼い頃、どこかで拾ってきた棒っ切れを地面に差していたら、いつの間にか根付いたものだ。なかなかの生命力である。
そして、かなり大きく育つまで一体何の木かわからなかったのだが、ある年、近くの家で作業していた植木屋さんに聞いて、シャリンバイとわかったのだ。
シャリンバイは、あの大島紬の染色に用いられる木である。この木の枝をチップ状に切り刻んで紬の糸をぐつぐつ煮ると、薄茶色に染まる。それを取り出して泥田に浸けると、奄美の島の田の泥に含まれる独特の成分が触媒となって黒に変化する。
ただ、それだけでは済まず、再びシャリンバイで染めた後にまた田の泥に埋める。そうすると、あの独特の深みのある黒になる。
私はシャリンバイの咲く季節になると、十年ほど前に奄美大島の大島紬を作る現場を取材した時の感動を思い出す。伝統に立脚した手作りというのは、かくもすごいものかと思ったのである。
「久方の」 は 「奄美」 の 「あま」 に無理矢理かけた枕詞。「染まる紬の」 までが序詞と思って頂きたい。
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