2012年6月 9日

桃の実の昭和の味のマッチ箱に娑婆の思惑詰まるとぞ知る


Wl120609桃の実の登録商標が、昭和の味わいを醸し出すマッチである。

ところが製造元の兼松日産農林株式会社というのは、今や住宅用建材の製造販売や地盤改良工事を行う大企業なのだそうで、このレトロなイメージとはほど遠い。しかも、仕手株の世界では有名な銘柄なんだそうだ。

いやはや、見た目にだまされてはいけない。

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2012年4月 8日

ビニールの覆ひのままの花束は結婚式でもらひたりとふ


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夜が更けてから帰宅すると、玄関にビニールの覆いがついたままの花束が飾ってあった。友人の結婚式に出席した次女がもらってきたらしい。

ふと思えば私自身は、近頃結婚式には出席したことがない。葬式ばかりである。

たまにはおめでたいセレモニーに出てみたいものである。

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2011年4月 2日

被災地に訪ぬれば君の笑顔あり心つながる友にしあれば

Even in such a disaster / You made a smile / Yes, you can call me a friend


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一年に一度か二度、潮来に行く用事が発生する。潮来は我が家から車で一時間半ぐらいである。いつもは楽しみにしているのだが、今回は気が重かった。

潮来は今回の震災で、茨城県の中でも最も被害の大きなところだ。とくに日の出地区は地盤が液状化し、見るも無惨な姿になっていた。県北地区よりもずっと被害が大きい。

写真の家の塀に沿った斜めの石垣のように見えるのは、元は水平だった舗道の敷石である。道路部分が激しく陥没したため、舗道の道路側が落ち、家側が跳ね上がった。道路の陥没によって、電柱も斜めになってしまっている。倒れていないのが不思議なくらいだ。

家々の多くも、見ればすぐわかる傾き方である。廊下に鉛筆を置いたらすぐに転がるそうだ。水道はまだ復旧しておらず、四月一杯は無理だろうと言われている。

潮来より鹿島灘に近い神栖市では、港に置かれた百四十ものコンテナが津波で流され、あれから三週間経った今でも、市街のあちこちに無惨に取り残されていた。鹿島神宮の大鳥居は倒れ、道路は至る所、地割れ、陥没で通行止めになったままだ。

土木建築業を営む知人はあれから大忙しで寝ておらず、疲労で倒れそうだという。商売繁盛なのかと思うとそこが微妙なところで、大急ぎで瓦礫の撤去や家屋の補修をしても、請求した金額が実際にいつ入ってくるのか見当が付かない。入金がままならなければ、運転資金がおかしくなる。

地震の爪痕をいやというほど見せつけられた。それでも我々は、心のつながりをフル稼働させて乗り越えなければならない。

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2011年3月31日

なゐの後にわが訪ぬるを喜びて話の止まぬ人のありけり

Friends of mine couldn't stop talking / To me visited unexpectedly / After the earthquake


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今日は所用で水戸に行ったついでに、少し足を伸ばして県北の日立市、高萩市などに住む知人を訪ねた。地震見舞いである。

茨城県北部の地震被害はかなりのものだったが、私の知人に関する限りは大きな被害はなく、棚の食器や本が落ちて散乱した以外は、せいぜい屋根瓦が落ちた程度で済んだようで、安心した。

とはいえ、断水の時期は長いところでは二週間にも及んだようで、水の確保にかなりの体力を使ったようだ。さらに、余震はまだ収まっておらず、原発の驚異もあるので、私が顔を出したことを大変喜んでくれた。根本的解決にはならなくても、心を開いて話のできる人間と会うのは、ストレス解消には役立つ。

写真は日立市の河原子海岸にある漁港でみた光景。津波のために漁船が岩場の上に打ち上げられて、乗っかったままになってしまっている。この辺りの津波は海岸の防波堤を越え、道路を隔てた住宅にまで押し寄せたようだ。今でもかなりのダメージが残っていた。

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2010年7月13日

雨よりも熱き雫を両目より流し頷きくれし吾妹子


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Twitter で私がフォローしている中では一番年が若いんじゃあるまいかと思うのだが、釘 (@kugi_niji) さんという女性がいる。

彼女が今日の夕方、「梅雨に枝垂れる 眼が濡れる 頭の先から藤の雨」 という短詩を tweet していたのにインスパイアされて、「ぬしと見上げる藤棚越しの雨ぢや涙のはずがない」 という都々逸を返したら、結構喜んでくれた。

相聞歌の極端に少ない私だが、時にはこのぐらいの艶っぽい都々逸を作るのである。

で、今日はいっそのことこれで行こうかと、一瞬思ってしまったが、やっぱり三十一文字のサイトに都々逸では具合が悪いので、少しアレンジしてみた。

ま、なんというか、妻に 「一緒に暮らそう」 と言った時のことを思い出して詠んでみたわけである。

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2010年7月 5日

打ち合ひて己が芯なる魂をリングに立てて残さむとぞする


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夜、K-1 の試合を見た。ライト級トーナメントはなかなかいい試合だった。とくに決勝戦、大和哲也対久保優太の試合は、感動的でさえあった。

私はどちらかといえば総合格闘技の方が好きなのだが、立ち技の K-1 もなかなか迫力がある。

いい試合を見せてもらった。

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2009年9月25日

朝の雑踏の中で

足許に吸い殻捨つる者と掃除する者とは互ひに目を合はさざりき


Wakalog_090925 このサイトの写真は風景とか花とかが多いのだが、今日はめずらしく人物。もうちょっと引いて、風景として撮った方がよかったかもしれないと、ちょっと反省している。

朝の JR 常磐線取手駅前の光景。かなり年配の男性が、ベンチに座ってうつむいている。そこに清掃係のおばさんが近寄って、男性の周囲に散乱した空き缶や吸い殻を拾い集めている。

男性は周囲に対する関心をまったく失った者のように、まったく動かない。おばさんもさりげなさく、ひょいひょいとゴミを集める。お互いがお互いをちょっとだけ邪魔に感じつつも、存在を認め合っていない。いない者同士のごとくに振る舞っている。

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2009年2月 8日

唯一郎の句

祖父の句の夜々にきしめる砂利舟の音をいかにせば今に聞かるる


Wakalog_090208 今日は一日中仕事で外出していて、写真を撮っている暇もなかった。帰宅したときにはとっぷり日が暮れていたので、外の景色は撮影不能。

それで、先日から気にかかっていた写真を載せることにした。『唯一郎句集』 に載っている直筆原稿の写しである。

唯一郎は、私の母の実父。つまり、私の祖父である。最近、"Today's Crack" で、この句集のレビューを開始している (参照)。

この直筆の句は、次の四句。いずれも秋の頃の歌だが。

馬のいばりする明るう枯れた林

しら菊葩の陽色を巻いてゆらぎもせず

秋口のくらしよ砂利舟きしみ過ぎる

むら肝冷ゆるに目の前鶏頭立ちて赤し

三句目は、「きしみ過ぎる夜々」 となっているが、最後の 「夜々」 がスミで消されている。なるほど、「きしみ過ぎる」 で終わる方が歯切れがいい。

直筆は女の字かと思うような、やさしい筆跡である。

How can I image the creaking sound
Of gravel boat passed away in Autumn night
Grand father used to hear all around
And sang it in his haiku so close and tight

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2009年1月24日

この国は君の国にして我が国

この国は君の国にして我が国となぜ歌はぬかこの国の人ら


Wakalog_090124

今日は朝から仕事で出かけ、写真なんて撮っている暇もなく日が暮れてから帰宅したら、Wow Wow (だったと思うんだけど、私はテレビに疎いので、よくわからない) で、バラック・オバマの大統領就任記念コンサートの模様が流れていた。

ちょうど私が帰宅した時、ブルース・スプリングスティーンが、なんと、あのピート・シーガーを呼んでいる。まさかと思ったのだが、ひげを生やしてすごいじいさんになったピート・シーガーが、しかし、かくしゃくとした足取りで登場した。

そして、あの "This Land is Your Land" のシング・アウトになったのである。私は背筋がゾクゾクするほど感動して、思い切り一緒に歌ってしまったのだった。涙が流れそうだった。そして、またギターを弾きたくなってしまったのだった。

写真は私のギターである。近頃は、私が弾くより次女が弾いている時間の方がずっと長いのだが。

ちなみに、このコンサートで歌われた  "This Land is Your Land" は、よく知られたバージョンの歌詞とは少し違っていた。ウッディ・ガスリーのオリジナル・バージョンだったのだ。それに関しては、明日付の "Today's Crack" で書こうと思う。

I saw people in America sing to assert
This Land is Your Land, This Land is My Land
In the President Inauguration Concert
Why don't we sing so hand in hand?

[追記]

約束通り、ウッディのオリジナル・バージョンにからめた話を書いたので、こちら をどうぞ。

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2009年1月23日

ある遺作展

亡き人の絵はことごとく今もなほ生きてゐるなり熱き息して


Wakalog_090123jpg 夜明け前にかなり強い雨が降って、朝になっても分厚い雲が立ちこめていたが、ラジオの天気予報は 「春の陽気になる」 と伝えていた。

本当かなあと思っていたが、十時をすぎると急に雲が切れて眩しい太陽が照り始めた。さすがに、最近の天気予報はその日のうちのことならよく当たる。

そして、「ただし暖かいのは日中だけで、日が暮れると気温は急降下」 という予報も、なんだか当たってしまいそうな雲行きだ。

日が暮れてから、妻と知り合いの画家の遺作展に行ってきた。写真に映っているのは、本邦初公開、私の妻の後ろ姿である。ボケボケなのは決して意識したわけではなく、デジカメのバッテリーが切れて、仕方なくケータイで写したためである。

美術家の遺作展というのは、いつもある時代を強烈に思い出させる。メランコリックだが、実はまだ生きて呼吸しているようなところがある。

We are in at an artist's death
Watching her works still alive
All of them draw deep breath
To let our memories shine and revive

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